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「『文明の衝突』とドストエフスキー」を「主な研究」に掲載

「『文明の衝突』とドストエフスキー」を「主な研究」に掲載

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 拙著『ロシアの近代化と若きドストエフスキー ――「祖国戦争」からクリミア戦争へ』(成文社、2007年)では、「正教・専制・国民性」の理念が唱えられ、検閲が厳しかったニコライ一世の時期に デビューしたドストエフスキーの 『貧しき人々』から『『白夜』』に至るまでの作品を考察した。

 その終章「日本の近代化とドストエフスキーの受容」では、ニコライ一世の頃と昭和初期の類似性にも言及したが、グローバリゼーションの圧力が強まる中でナショナリズムが高揚して戦争が勃発する危険性があることを感じた。それゆえ
2008年1月26日に代々木区民会館で行われた第184回例会では、ダニレフスキーの歴史観が『作家の日記』に及ぼした影響などを考察した論考「『文明の衝突』とドストエフスキー ポベドノースツェフとの関りを中心に」を発表した。

 その後もプーチンが帝政ロシア的な政策に傾いていくことに強い危惧の念を抱いていたが、生誕200年にドストエフスキーを「天才」と賛美した翌年の2月についにウクライナへの全面的な侵攻に踏み切った。その行動に際しては『作家の日記』の記述を意図的に今回の戦争に利用していると感じたが、例会発表の際の論考が『ドストエーフスキイ広場』以外には未発表だった。それゆえ、この論文をホームページの「主な研究」に再掲する。論文の構成は次の各節からなる。

 一、ポベドノースツェフと「臣民の道徳」 二、後期作品への扉としての『白夜』 三、「正義の戦争」の批判から賛美へ――クリミア戦争の考察と露土戦争 四、残された謎――『カラマーゾフの兄弟』におけるイワンの悪魔の形象 五、ドストエフスキーのユダヤ人観とポベドノースツェフの宗教観 六、皇帝暗殺の「謎」とアジアへの進出政策

→「文明の衝突」とドストエフスキー ――ポベドノースツェフとの関わりを中心に

 なお、例会発表の後では出版記念会を開いて頂き、木下代表など参加頂いた会員の方からは温かいご祝辞や貴重なご示唆を頂いた。そのことに改めて謝意を表するとともに、拙著『ロシアの近代化と若きドストエフスキー』の終章「日本の近代化とドストエフスキーの受容」で堀田善衞の『若き日の詩人たちの肖像』二言及していたことが、『堀田善衞とドストエフスキー 大審問官の現代性』(群像社、2021年)につながったことも記しておきたい 。

       (2022年12月2日、構成などを加筆、拙著のスレッドを追加)

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