高橋誠一郎 公式ホームページ

『ユーラシア研究』65号に「黒澤明監督のドストエフスキー観――『罪と罰』と『白痴』のテーマの深まり」を寄稿

『ユーラシア研究』65号に「黒澤明監督のドストエフスキー観――『罪と罰』と『白痴』のテーマの深まり」を寄稿

はじめに 『白痴』の発表150年にあたる2018年にブルガリアで行われた国際シンポジウムの最終日に行われた円卓会議では黒澤映画『白痴』(1951)が取り上げられ、学生向けにブルガリア語の字幕付きの映画『白痴』も大きな講堂で上映された。

 「円卓会議」で私は「映画『白痴』と黒澤映画における「医師」のテーマ」という題で報告した。長編小説『白痴』ではシュネイデル教授をはじめ、有名な外科医ピロゴフ、そしてクリミア戦争の際に医師として活躍した「爺さん将軍」などに言及されており、黒澤映画でも『白痴』だけでなく、『酔いどれ天使』(1948)、『静かなる決闘』(1949)から『赤ひげ』(1965)に至る作品で医師が非常に重要な役割を演じているからである。 

 しかも、医師のテーマに肉体だけでなく精神の治癒者としての医師に注目し、社会の病理の改革をも含めるとき、ドストエフスキー作品における裁判のテーマも浮かび上がってくる。黒澤明のもとで助監督を務めた堀川弘通は「『白痴』はソ連では、日本人のクロサワはロシア人よりもドストエフスキーを理解していると評判だった」ことを紹介している。本稿では黒澤映画における医師と裁判のテーマの分析をとおして、『罪と罰』や『白痴』を生涯にわたって考察していた黒澤映画の現代性を明らかにする。

〔論考の構成〕  はじめに/  一、黒澤監督の芥川龍之介観とドストエフスキー観――映画『わが青春に悔なし』/  二、映画『野良犬』から『羅生門』へ――黒澤映画における『罪と罰』のテーマ/  三、長編小説『白痴』と黒澤映画における「医師」と「裁判」のテーマ

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です