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ドストエーフスキイの会総会と245回例会(報告者:泊野竜一氏)のご案内

ドストエーフスキイの会総会と245回例会(報告者:泊野竜一氏)のご案内

ドストエーフスキイの会第49回総会と245回例会のご案内を「ニュースレター」(No.146)より転載します。

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 下記の要領で総会と例会を開催いたします。皆様のご参加をお待ちしています。                                          

日 時2018512日(土)午後1時30分~5時           

場 所千駄ヶ谷区民会館(JR原宿駅下車徒歩7分)   ℡03-3402-7854 

総会:午後130分から40分程度、終わり次第に例会

議題:活動・会計報告、運営体制、活動計画、予算案など

 例会報告者:泊野竜一 氏

題 目: 19世紀ヨーロッパ文学における沈黙する聞き手

   ホフマン、オドエフスキー、ドストエフスキーとの比較考察の試み                           

*会員無料・一般参加者=会場費500円

報告者紹介:泊野竜一(とまりの りょういち

早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程人文科学専攻ロシア語ロシア文化コース。研究テーマは、ドストエフスキー作品における対話表現としての長広舌と沈黙との問題、さらには19-20世紀ロシア文学における対話表現の問題の研究。2016年9月−2017年6月までモスクワ大学留学。具体的な研究内容として、ドストエフスキーの作品を中心として、その先駆となるもの、あるいは後継となるものとして、オドエフスキー、ゴーゴリ、アンドレーエフ、ガルシン、ブリューソフの作品を取り上げる。そして、それらの間での「分身」「狂気」「内的対話」の問題に取り組む予定。

 

245回例会報告要旨

19世紀ヨーロッパ文学における沈黙する聞き手ホフマン、オドエフスキー、ドストエフスキーとの比較考察の試み

2015年の225回例会では、ドストエフスキーが長編小説中、特に『カラマーゾフの兄弟』の《大審問官》で、一つの独特な対話表現を用いていると考えられること、それは、対話者の片方は長広舌を続け、もう片方は沈黙しそれを拝聴するという形式をもっていること、つまりこの対話は、見かけ上は、一方的なモノローグの様相を呈しているが、通常の相互通行の対話よりも、はるかに豊かな内的対話の表現となっていたのであったということについて発表した。

 しかしドストエフスキーに先行するE. T. A. ホフマンやV. F. オドエフスキーの作品にも《大審問官》の対話と少なくとも形式上は一致しているといえる対話が存在する。具体的にはまず、ホフマンの『砂男』に登場する学生のナターニエルとスパランツァーニ教授の令嬢オリンピアの対話が挙げられる。ナターニエルはふとしたことからスパランツァーニ教授の令嬢である美女オリンピアに恋をする。ところがオリンピアは教授の製作した自動人形であった。オリンピアは、彼女に恋したナターニエルの熱烈なアプローチに対してただ通り一遍の返答をすることしか出来ない。次に、オドエフスキーの〈ベートーベン晩年のカルテット〉に登場するベートーベンとその弟子のルイーザとの対話が挙げられる。〈ベートーベン晩年のカルテット〉は、若者たちが毎晩集まり、世を徹して語るという形式で書かれたオドエフスキーの額縁小説『ロシアン・ナイト』の第六夜で語られる物語である。この物語中でベートーベンはルイーザに対して芸術論を語るのであるが、ベートーベンの一弟子にすぎないルイーザは、ベートーベンの熱弁に対して一切返答することなく、ただひたすら彼の長広舌を拝聴しているのである。

 先行研究から、ドストエフスキーはホフマンやオドエフスキーからさまざまなかたちで影響を受けている作家であると考えられている。本発表では、長広舌を揮う話し手と、通常の対話では脇役としての役割を担うはずの、沈黙し長広舌を拝聴する聞き手という対話表現に注目する。これらの作品の対話の具体的な分析を行いつつ、《大審問官》との関連性について考察する。その上で、19世紀文学におけるこのような独特な対話表現の意義について検討していく。

 

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