昨日の記事で紹介したように、国連のデービッド・ケイ特別報告者は「対日調査報告書」を公表して、「メディアの独立性に懸念を示し、日本政府に対し、特定秘密保護法の改正と、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条の廃止を勧告した」(「共同通信」5月30日21時30分)。
法的な強制力を伴わないことから、日本ではこの「対日調査報告書」と「勧告」が軽く見られている傾向もあるように思われる。しかし、「特定秘密保護法」が2013年に強行採決された際には、日本新聞協会(会長・白石興二郎読売新聞グループ本社社長)も、「運用次第では憲法が保障する取材、報道の自由が制約されかねず、民主主義の根幹である国民の『知る権利』が損なわれる恐れがある」と指摘する声明を発表していた。
実際、それから4年経った現在、「読売新聞」は安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」による獣医学部新設計画における安倍政権の教育行政の歪みが記されている文書がすべて「本物」であると証言した前川前文部次官のスキャンダルをリークした官邸からの情報を第一面に掲載した。このことは2013年に発表された日本新聞協会の声明がその後の「報道の自由」の変質を予見していたことを裏付けているだろう。
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この意味で注目したのは、2013年参議院選挙後の7月22日になって放射能汚染水の流出が発表されが、報道によれば「東電社長は3日前に把握」していたことが明らかになり、その後福島第一原発2号機のタービン建屋地下から延びるトレンチに事故発生当時とほぼ同じ高濃度の放射性セシウムが見つかったとの発表もされて、この事実の隠蔽に関わった社長を含む責任者の処分も発表されたことである。
海外における「放射能汚染水の流出事故」の報道については→『はだしのゲン』の問題と「国際的な視野」の必要性
(2013年参議院選挙結果、©Monaneko – Jiji.com, NHK, asahi.com)
このことについてはブログ記事で言及するとともに、「日本人が眼をつぶっていても、いずれ事実は明らかになる」とも記した。→汚染水の流出と司馬氏の「報道」観(2013年7月28日)
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しかし、ピレイ国連人権高等弁務官が12月2日にジュネーブで開かれた記者会見でこの法案の「成立を急ぐべきではない」と指摘していたにもかかわらず、安倍政権は「特定秘密保護法」を2013年12月6日に強行採決した。→国連人権高等弁務官、特定秘密保護法案に懸念 :日本経済新聞
さらに、「報道の自由」特別報告者デビット・ケイ氏は「電波停止」発言を行いながら度重なる会見の要求を拒否していた高市総務大臣など、「日本会議」系の議員を重用している安倍内閣の政権の問題を指摘していた。
報道によれば、ケイ氏が「来月12日に人権理事会で調査報告について説明する予定」であることも同時に伝えられたが、このブログとツイッターでも時系列に沿って当時の記事をアップして「特定秘密保護法」から「共謀罪」への流れを追うことでこれらの法律の問題点を浮かび上がらせるようにしたい。
(2017年6月1日、改題して図版とリンク先を追加)
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