はじめに
新聞やテレビのニュースなどをとおして、「森友学園」問題の本質とその根の深さが徐々に明らかになってきている。
菅野完氏の『日本会議の研究』では「『生命の実相』を掲げて講演する稲田朋美・自民党政調会長(当時)」と園児たちに「愛国行進曲を唱和させる塚本幼稚園」との深い関係についてもふれられていた(221~232頁)。
さらに今日(3月4日)は、「復古」的な価値観を語る稲田朋美・防衛相が国会で、虚偽答弁の疑いのある発言をしていたことも判明したので、以下にそれに関する記事と考察を追記する。
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昨年に12月に安倍首相とともにハワイの真珠湾を訪問して戦没者慰霊式典に出席していた稲田朋美防衛相は、帰国すると靖国神社に参拝して「神武天皇の偉業に立ち戻り」、「未来志向に立って」参拝したと語った。
その時は弁護士でもある稲田氏が明治の薩長政権が掲げた「王政復古」の理念の流れに沿う「神武天皇の偉業」に立ち戻ることと「未来志向」との論理的な矛盾を無視していることに驚かされた。
今度は森友学園理事長に感謝状を授与していた稲田防衛相が、2月22日の国会質疑で民進党の大西健介議員の前から塚本幼稚園を知っていたかとの質問に、「聞いたことはありますけれど、その程度でございます」と答弁していたにもかかわらず、15年3月に「保守の会」会長の松山昭彦氏がFacebookに書いた記述によっていたが顧問弁護士を努めていたことが判明した。
この後、松山氏は「顧問弁護士だったのは稲田先生の旦那さんの方でした」と訂正したが、菅野完氏の3月12日のインタビューと平成17年の文書によって、夫の稲田龍示氏だけでなく稲田朋美防衛相も森友学園の訴訟代理人を務めていたことが明らかなった。
ヒトラーは『わが闘争』に「闘争は種の健全さと抵抗力を促進する手段なのであり、したがってその種の進化の原因でありつづける」と記していた。
一方、防衛関連株を大量保有する稲田朋美・元防衛相の教育観と戦争観は→ https://t.co/KlhzNpcdi8 https://t.co/p01cTK4GWz— 高橋誠一郎 執筆中『「悪霊」と現代日本文学』(仮題) (@stakaha5) February 6, 2023
さらに、「教育勅語」を暗唱させるだけでなく、「愛国行進曲」を唱和させていた塚本幼稚園には「思想教育」の懸念や「児童虐待」の疑惑もあった。その塚本幼稚園の3人もの教員が文部科学大臣優秀教員に認定されていたことも明らかになった。
安倍内閣ではほとんどの大臣が「日本会議国会議員懇談会」や「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属しているが、「アッキード事件」とも呼ばれる今度の事態からは、彼らが重視しているのは「国民の意見」ではなく、「日本会議」の意向と「お友達の利権」であることが感じられる。
文部科学大臣の松野博一・衆議院議員もこれら二つの「国会議員懇談会」だけでなく、安倍首相を会長とする〈創生「日本」〉に所属している(『日本会議の全貌』花伝社、資料21頁)。
安倍首相夫妻と「日本会議大阪運営委員」である「森友学園」の籠池泰典・園長との関わりだけでなく、虚偽答弁と思われる稲田防衛相の発言や、どのような基準で文部科学大臣優秀教員に選ばれたのかをも追究する必要があるだろう。
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稲田朋美・自民党政調会長(当時)の発言が忠実に記録されている菅野完氏のホームページhttps://hbol.jp/129132 @hboljpからは、安倍元総理(当時)との深い繫がりだけでなく、共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』(ワック株式会社、2013年)を出版していた『カエルの楽園』の作者・百田尚樹の憲法観との強い類似性も感じられる。
すなわち、「第六回東京靖国一日見真会」で稲田朋美・自民党政調会長(当時)」は、自分と主張がほとんど同じ聴衆に向かってこう語っていた。
「だいたい弁護士とか裁判所とか検察官とか特に、弁護士会ってとても左翼的な集団なんですね。なぜかというと憲法教、まぁ憲法が正しい、今の憲法が正しいと信じている憲法教という新興宗教(会場爆笑)がはびこっているんですねぇ。」(太字は菅野)
第90回帝国議会の審議を経て1946年11月3日に公布された「日本国憲法憲法」を守ろうとすることを「憲法教」と嘲笑するだけでなく、「新興宗教」とも名付けていることに驚かされるが、『カエルの楽園』の著者も2013年10月7日付のツイートでこう記していた。
「もし他国が日本に攻めてきたら、9条教の信者を前線に送り出す。そして他国の軍隊の前に立ち、『こっちには9条があるぞ!立ち去れ!』と叫んでもらう。もし、9条の威力が本物なら、そこで戦争は終わる。世界は奇跡を目の当たりにして、人類の歴史は変わる。」(太字は高橋)
『カエルの王国』は〈G・オーウェル以来の寓話的「警世の書」〉と謳われているが、「死の崇拝」あるいは、「個性の滅却」と訳すことができる哲学が主流となっているイースタニアは、戦前の日本型の国家をモデルとしていた(解説者ピンチョンの説明、『1984年』早川書房)。https://t.co/J0aBng0jzy
— 高橋誠一郎 執筆中『「悪霊」と現代日本文学』(仮題) (@stakaha5) December 26, 2019
広島と長崎に投下された原爆の悲劇が象徴的に物語っているように、科学技術の進歩に伴って兵器の威力も増大し、大規模な世界戦争が起きれば地球の破滅も予想されるようになっていた。そのような中で戦争を起こさないように努力することは、もはや単なる理想ではなく、現実的な要請だったと思える。
それゆえ、このような暴言を吐くことは現在ある戦争の危機から眼を背けるだけでなく、第90回帝国議会の審議にかかわったすべての政治家をも侮辱することにもなると思える。
安倍首相はA級戦犯被疑者だった祖父を尊敬して、戦前と同じような「スローガン」を繰り返している。主人公の健太郎が義理の祖父である大石の影響で変わる過程が描かれている『永遠の0(ゼロ)』の骨格は、岸信介と孫の安倍晋三の関係を模しているように見える(『ゴジラの哀しみ』、85頁)。 pic.twitter.com/8OeZo8ynfE
— 高橋誠一郎 執筆中『「悪霊」と現代日本文学』(仮題) (@stakaha5) August 7, 2019
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以下に、関連記事へのリンク先を記す。
→安倍首相の年頭所感「日本を、世界の真ん中で輝かせる」と「安倍晋三記念小学校」問題――「日本会議」の危険性
→菅野完著『日本会議の研究』と百田尚樹著『殉愛』と『永遠の0(ゼロ)』
→ オーウェルの『1984年』で『カエルの楽園』を読み解く――「特定秘密保護法」と監視社会の危険性
(2017年3月4日、3月8日・14日加筆、2023年10月25日、改訂)
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