スペイン・グラナダで開催される国際ドストエフスキー学会では6月7日に拙著のプレゼンテーションを、6月9日に〈「生存闘争」という概念の危険性の考察――『罪と罰』と黒澤映画《夢》〉という題で口頭発表を発表することが決まりました。
拙著のプレゼンテーションでは、『黒澤明で「白痴」を読み解く』と『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』に簡単にふれたあとで、副会長を務めていた故リチャード・ピース教授の著書『ドストエフスキイ「地下室の手記」を読む』(池田和彦訳、高橋誠一郎編、のべる出版企画、2006年)と教授の思い出などについて語る予定です。
論文発表では映画《白痴》や《赤ひげ》における医師と患者の関係や映画《愛の世界・山猫とみの話》について簡単に言及したあとで、「生存闘争」という概念の危険性を深く考察していた『罪と罰』における夢に注目しながら、黒澤映画《夢》(1990年)の構造との比較を行う予定です。
死んだ兵士たちとの再会が描かれている第4話「トンネル」や福島第一原子力発電所の事故を予告していたような第六話「赤富士」と核戦争後の絶望的な状況を描いた第七話「鬼哭」、そして自然エネルギーの可能性を示していた第八話「水車のある村」などを考察することにより、映画《夢》の構造が『罪と罰』の構造ときわめて似ていることを明らかにできると考えています。
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