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日本における「報道の自由」と国際社会

日本における「報道の自由」と国際社会

国際NGO「国境なき記者団」が2016年4月20日に発表した16年の「報道の自由度ランキング」によれば、日本は15年より11位低い72位に急落し、台湾や韓国下回ることになったようです。

また、来日して政権による報道への圧力の問題を調査した国連報道者のデビット・ケイ氏は、「電波停止」発言をした総務大臣の高市早苗氏が会見を拒んだ点や多くのジャーナリストが「匿名」を希望して答えた点などについて指摘していました。ツイッターで考察したことを踏まえて、加筆・訂正したものをアップします。

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1,自国民に対しては居丈高に振る舞う一方で、国際報道官との面会は拒むような高市氏の姿勢は日本の「国益」をも損なうものです。自分の発言に自信があるならば、堂々と会って主張すべきでしょう。

2,ニュースを伝えるジャーナリストが「匿名」を希望するのは、国際社会から見れば、「異常な事態」と言わざるをえません。

3、大きな問題は「電波停止」発言をした高市氏自身の大臣としての資質です。多くのジャーナリストからそのように怖れられている高市氏は、よく知られているように、1994年に出版された『ヒトラー選挙戦略 現代選挙必勝のバイブル』と題された本に推薦文を寄せていました。

4,2014年9月12日の記事でもハフィントンポスト紙が、「高市早苗総務相と自民党の稲田朋美政調会長と右翼団体『国家社会主義日本労働者党』代表の2ショット写真」が、「日本政府の国際的な評判を一気に落としてしまった」と指摘していました。

5,2013年7月29日、東京都内で行われたシンポジウムに出席した麻生太郎副総理兼財務相が憲法改正問題に関連し、「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね」と発言していたことがわかり、内外に強い波紋を呼びおこしていました。

6,自分自身だけでなく、安倍内閣の重要な閣僚による「政治的公平性」が疑われるような発言が繰り返される中で、ヒトラー的な選挙戦略を推奨した高市氏が「電波停止」発言をしたことが国際社会にとって重大な問題なのです。日本ではいまだに同盟国であったナチス・ドイツの問題が深く認識されていないようです。

7、最後に権力の問題を指摘し、鋭い批判をしていた作家・司馬遼太郎氏の言葉を引用しておきます。

「われわれはヒトラーやムッソリーニを欧米人なみにののしっているが、そのヒトラーやムッソリーニすら持たずにおなじことをやった昭和前期の日本というもののおろかしさを考えたことがあるだろうか。政治家も高級軍人もマスコミも国民も神話化された日露戦争の神話性を信じきっていた」ていたのです(「『坂の上の雲』を書き終えて」『歴史の中の日本』中公文庫)。

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追記:安倍政権の手法の危険性は、「弱肉強食の理論」を正当化し「復讐の情念」を利用したナチス・ドイツの手法と似ている点にあると思われます。ただ、この点についてはより詳しく説明する必要があると思われますので、〈日本における「報道の自由」と安倍政権のナチス的手法〉を改題します。

ヒトラーの思想と安倍政権――稲田朋美氏の戦争観をめぐって

「安倍談話」と「立憲政治」の危機(2)――日露戦争の賛美とヒトラーの普仏戦争礼賛

(2017年5月24日、リンク先を追加)

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