TPP秘密交渉を担当した甘利元経済再生相の「口利き」疑惑が一大疑獄事件へと発展しそうな気配になってきましたが、そんなか、今度は遠藤利明五輪相にも「口利き」の疑惑が発生しました。
リンク→「アベノミクス」の詐欺性(4)――TPP秘密交渉担当・甘利明経済再生相の辞任
リンク→「まとめ役は遠藤さん」…文科省職員証言(毎日新聞)
* * *
このような事態は国内を揺るがした明治初期の汚職事件や疑獄事件を思い起こさせます。
まず発覚したのは、横浜で生糸相場を張るようになっていた元奇兵隊の隊長・野村三千三〔みちぞう〕から頼まれた山県有朋が「兵部省の陸軍予算の半分ぐらいに」相当するような巨額の金を貸したにもかかわらず、野村が生糸相場に失敗して公金を返せないという事態に陥った「山城屋事件」でした(『歳月』上・「長閥退治」)。
しかもこの事件の直後に、南部藩の御用商人・村井茂兵衛が得ていた尾去沢銅山の採掘権を、大蔵省の長官として「今清盛」とも呼ばれるような権力を握っていた井上馨によって没収されるという事件が起きたのです。前代未聞の汚職とその隠蔽の問題と直面した司法卿の江藤が、「信じられぬほどの悪政がいま、成立したばかりの明治政府において進行している」と憤激したことが、西南戦争につながったと司馬氏は指摘していました。
さらに、「フランス革命」の時期に利権で私腹を肥やし、「王政の復活のために暗躍」したタレーランと比較しながら「山県も似ている」と長編小説『翔ぶが如く』で記した司馬氏は、「『国家を護らねばならない』/と山県は言いつづけたが、実際には薩長閥をまもるためであり、そのために天皇への絶対的忠誠心を国民に要求した」と厳しく批判していたのです(二・「好転」)。
このような明治初期の考察を踏まえて、司馬氏が『坂の上の雲』で描いたのが、俳人・正岡子規が入社した新聞『日本』の記者たちの気概だったのです。
リンク→高橋『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館、2015年)
ことに第二次安倍政権に強く見られるようになった「おごり」や「腐敗」を厳しく追及する記事を書く気概を、現代の放送局や新聞社にも持って欲しいと願っています。
コメントを残す