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映画《母と暮せば》を見て

映画《母と暮せば》を見て

山田洋次監督の映画《母と暮せば》を見ました。

NHKBS1で放送されたドキュメンタリー番組「BS1スペシャル 戦争を継ぐ ~山田洋次・84歳の挑戦~」でその苦労が詳しく描かれていた冒頭の教室での被爆とインク瓶が溶ける場面は、やはり圧巻でした。

映像では、原爆の悲惨さを示すような生々しい映像はほとんど用いられていませんが、息子を喪った母親(吉永小百合)や快活だった医学生の息子(二宮和也)、その恋人(黒木華)などがきちんと描かれていました。

広島で被爆した娘のもとに父親が亡霊となって現れ、生き残ったことに罪悪感を持つ娘を励ますという井上ひさし氏の『父と暮せば』の構想を引き継いだこの映画でも、長崎で被爆して亡くなった若者の婚約者が、再び前を向いて生きようとするまでのエピソードを丹念に描いて、平和の大切さがじんわりと伝わる説得力のある映画になっていると感じました。

黒澤映画《夢》の「トンネル」のシーンと戯曲『父と暮せば』との関連については、拙著『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』(成文社)で少し触れましたが、この映画でも映画《夢》の「トンネル」のシーンを彷彿とさせる場面があり、黒澤監督の理念の継承も感じられました。

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安保関連法案を強行採決した安倍政権は軍需産業や原発産業の育成に力を入れていますが、今年は原爆が日本に落とされてから70年目に当たります。

原爆が日本に落とされたことに責任を感じたアインシュタインは、哲学者のラッセルとともにパグウォッシュ会議を組織して、戦争の危険性を強く科学者や市民に訴えましたが、今年はその会議が初めて長崎市で行われました。

戦後70年を迎えた今こそ、原水爆の危険性を深く思い起こすべき時期だと思われます。

リンク→映画『母と暮せば』予告 – YouTube

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