高橋誠一郎 公式ホームページ

自著『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』の紹介文を転載

自著『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』の紹介文を転載

「桜美林大学図書館」の2015年度・寄贈図書に自著の紹介文が表紙の図版とともに掲載されましたので転載します。

Masaoka_Shiki_Takahashi

 

木曽路の山道を旅して「白雲や青葉若葉の三十里」という句を詠み、東京帝国大学を中退して新聞『日本』の記者となった正岡子規は、病を押して日清戦争に従軍していました。

本書では子規の叔父・加藤拓川と幼友達の秋山好古や、新聞『日本』を創刊する陸羯南との関係にも注意を払うことにより、正岡子規の成長をとおして新聞報道や言論の自由の問題が『坂の上の雲』でどのように描かれているかを考察しました。「写生」や「比較」という子規の「方法」は、親友・夏目漱石に強い影響を及ぼしているだけでなく、秋山真之や広瀬武夫の戦争観を考える上でも重要だと思えるからです。

『坂の上の雲』において一九世紀末を「地球は列強の陰謀と戦争の舞台でしかない」と規定し、「憲法」のない帝政ロシアとの比較を行った司馬氏は、西南戦争に至る明治初期の時代を描いた『翔ぶが如く』では、子規を苦しめることになる「内務省」や新聞紙条例などの問題を詳しく分析していました。

今世紀の国際情勢はこれまで以上に複雑な様相を示していますが、「文明の岐路」に立っている日本の今後を考えるためにも、文明論的な視点からこれらの司馬作品を考察した本書を一読して頂ければ幸いです。

(リベラルアーツ学群  高橋 誠一郎)

リンク→ 『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館、目次詳細

 

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です