7月7日に書いた〈「安全保障関連法案」の危険性と小説『永遠の0(ゼロ)』の構造〉という記事では、6月25日に開催された「文化芸術懇話会」に講師として招かれた作家の百田直樹氏が「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」などと発言したばかりでなく、現在の多くの住民は「周りは田んぼだらけだった」ところに、「飛行場の周りに行けば商売になるので住みだした」とも発言していたことが明らかになり、それまで謝罪を拒んでいた安倍首相が3日の「衆院特別委員会」で「心からおわび」との発言をしたことにふれて、こう記していました。
「心からおわび」という言葉が真心を込めて語られたのならば、このような「言論弾圧」的な発言も飛び出した「平和安全法制整備法案」の審議は、次の議会に延期するのが「情理」にかなった行動でしょう。
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しかし、安倍首相は10日の衆院平和安全法制特別委員会でも、「審議は深まった。決めるべき時には決めていただきたい」と答弁、15日の委員会での戦争法案強行採決をにおわせたのです。
このことを伝えた7月13日付けの『日刊ゲンダイ』は、2面で「採決を急ぐ理由は明らかで、審議をやればやるほど、議論が深まるどころか、ボロが出るのだ」と書き、そのような事例の一つとして民主党の辻元清美衆院議員との質疑応答を挙げています。
すなわち、これまで安倍首相は自衛隊が戦争に巻き込まれない根拠として「戦闘が起きれば、ただちに部隊の責任者の判断で一時中止、あるいは退避する」と繰り返していたのですが、辻元議員は『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』(ワック株式会社、2013年)では、対談者の百田尚樹氏から「(そんなことは)国際社会では通用しませんね」と問われると、「(そんなことは)通用しません。そんな国とは活動したくないと思われて当然です」と語っていたことを質問で明らかにしたのです。
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『日刊ゲンダイ』はこの記事を「戦争法案のインチキ、ペテンは今や、誰の目にも明らかだ」と結んでいますが、このような安倍首相の言動からは、暴言で問題となる作家の百田氏は、首相の広報的な働きをしていたにすぎないように見えてきます。
2013年12月6日には世論の反撥がさらに高まるのを懸念した政府与党が、参院で審議が始まってわずか8日で「特定秘密保護法案」を参院特別委員会で強行採決していました。
今度もまた「国民」の反対が多い「安全保障関連法案」の危険性が議論をする中で明白になることを怖れた安倍首相が独裁的な権力をふるって、衆議院で多数を占める与党の自民・公明両党に強行採決させようとしているという構図が浮かび上がってくるのです。
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