「国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される」ことを理由に、閣議決定で決められた「特定秘密保護法」が12月10日から施行されることになります。
「共同通信」が行ったアンケートの結果では、「特定秘密の件数は政府全体で四十六万件前後」と膨大な数字になるばかりでなく、「適性評価や内部通報の窓口はどの部署が担当するか」などの点も「不透明さが際立つ」ことが明らかになりました。
このアンケート結果を受けて「東京新聞」は、12月6日の紙面で「政府の意のままに秘密の範囲が広がり、国民に必要な情報が永久に秘密にされ、市民や記者に厳罰が科される可能性がある」という「三つの懸念」を指摘しています。
このことは日本ペンクラブなど日本のさまざまな団体だけでなく、「国連人権理事会」が「内部告発者やジャーナリストを脅かす」との懸念を表明し、元NSC高官のハンペリン氏もこの法案を「国際基準」を逸脱しており、「過剰指定 政府管理も困難」との指摘をしたにもかかわらず、十分な審議もなく閣議決定で公布されたこの法律の性質を物語っていると思えます。
以前のブログ記事で書いたように「テロ」の対策を目的とうたったこの法案は、諸外国の法律と比較すると国内の権力者や官僚が決定した情報の問題を「隠蔽」する性質が強く、「官僚の、官僚による、官僚と権力者のための法案」とでも名付けるべきものだろうと私は考えています。
(秘密裏に交渉されるTPPに対する自民党のポスター。図版はネット上に出回っている写真より)。
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一方、すでに11月末に「法律事務所員などを名乗る複数の男から『あなたは国家秘密を漏らした。法律違反で警察に拘束される。金を出せば何事もなかったようにする』などと電話で脅された女性が、2500万円をだまし取られたという事件が発生していました(「東京新聞」、11月23日)。
「特定秘密保護法」が施行される前に起きたこの事件は、法律が正式に施行された後では、戦前の日本のように厳しい言論統制で「国民」が萎縮し、言論の自由などを奪われて、次第に「臣民」に近い状態になる危険性が高いことを示唆しているでしょう。
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安倍首相が共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』(ワック)で絶賛した百田尚樹氏の小説『永遠の0(ゼロ)』では、徳富蘇峰の歴史観が正当化されており、この小説には若者たちに死をも恐れぬ「白蟻」のような勇敢さを求める戦前の「道徳」が秘められていると思われます。
(2016年11月18日、図版を追加)
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