「原発ゼロ」を公約に掲げて立候補していた前日本弁護士連合会長の宇都宮健児氏に続いて、14日に記者団に対して出馬を正式表明した細川護熙元首相が「原発ゼロ」の方針を打ち出し、小泉純一郎元首相も全面支援を約束しました。
これにより都知事選挙では「脱原発」が主な争点となることが明らかになってきましたが、これにたいして「絶対安全」を謳いながら「国策」として原発を推進してきた政権与党の自民党からは、「原発」の問題は国政レベルの問題であり、「都政」に持ち込むべきではないとの強い批判も出されるようになりました。
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しかし、福島第一原子力発電所の大事故の際には、東京電力の不手際と優柔不断さにより、東北や東京のみならず、関東一帯の住民が避難しなければならない事態とも直面していました。
作家の小松左京氏が『日本沈没』で描いたように地殻変動により形成された日本列島では、いまもさかんな火山活動が続き地震も多発しています。このような日本の「大地」の上に原子力発電所を建設することは庶民の「常識」では考えられないことでした。
そのような「庶民の健全な常識」が覆されたのは、すでに司馬氏が日露戦争の問題として指摘してような情報の隠蔽が、戦後の日本でも続いており原発の危険性についての多くの情報が「隠蔽」されてきたためだったのです。
今回、「脱原発」を打ち出した小泉氏がかつては原発の強力な推進者だったことを批判する人もいますが、しかし、ロシアには「遅くてもしないよりはまし」という諺があります。
映画《夢》を撮った黒澤明監督がすでに指摘していた使用済み核燃料の問題も解決できない中で、原発の再開をすることは、自ら首を絞めるに等しい行為だと思えます。
重要なのは今、「脱原発」に向けた行動や発言をすることでしょう。
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このブログを読まれている読者にはすでに周知のことと思われますが、今年に入ってからも信じられないような事態が次々と発覚しています。
たとえば、「東京新聞」は「東電、海外に210億円蓄財 公的支援1兆円 裏で税逃れ」と題した1月1日付けの記事で、次のような事実を指摘しています。
「東京電力が海外の発電事業に投資して得た利益を、免税制度のあるオランダに蓄積し、日本で納税していないままとなっていることが本紙の調べでわかった。投資利益の累積は少なくとも二億ドル(約二百十億円)。東電は、福島第一原発の事故後の経営危機で国から一兆円の支援を受け、実質国有化されながら、震災後も事実上の課税回避を続けていたことになる」。
また、「朝日新聞」も1月9日付けの記事で「東京電力が発注する工事の価格が、福島第一原発事故の後も高止まりしていることが、東電が専門家に委託した調達委員会の調べでわかった。今年度の原発工事などで、実際にかかる費用の2~5倍の価格で発注しようとするなどの事例が多数見つかった」ことを指摘し、「東電などが市場価格よりも高値で発注することで、受注するメーカーや設備・建設事業者は多額の利益を確保できる。調達費用の高止まり分は電気料金に上乗せされ、利用者が負担している」と続けています。
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高い放射線量のためなどからいまだに溶けた核燃料がどこにあるかも分からないなか、現在も地上タンク群のせきから大量の汚染水が流出する事態が続いています。
今年の3月には「第五福竜丸」事件から60年になりますが、広島・長崎での原爆投下により核の被害者となってきた日本国民は、東京電力・福島第一原子力発電所の大事故では加害者の側に立つことになってしまったのです。
「原発」の問題は東京都民の生命に関わるだけで亡く、東北や関東一帯の住民の生命や地球環境にも深く関わっています。
「被爆国」日本から「脱原発」の力強いメッセージを世界に発するためにも、今回の都知事選挙では「原発の危険性の問題」が徹底的に議論されることを望んでいます。
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