高畑勲監督作品の《かぐや姫の物語》が3月13日の「金曜ロードSHOW!」でテレビ初放送されることがわかりました。「ねとらぽ」によれば、通常から放送を1時間繰り上げ、午後7時56分より完全ノーカット版となるとのことです。
。「ねとらぽ」より
2013年に公開されたこの作品についてはこのブログでも取り上げていましたが、私が高畑勲監督作品が国際的に高い評価を受けていることを実感したのは、モスクワに行く留学生の引率の際にロシアの新聞で《ホーホケキョとなりの山田くん》についてのほぼ一面を費やした解説記事を読んだ時でした。
《かぐや姫の物語》は残念ながら受賞こそ逃したものの、米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門にも昨年の《風立ちぬ》に続いて2年連続でノミネートされ、ロサンゼルス映画批評家協会賞、ボストン映画批評家協会賞、トロント映画批評家協会賞を受賞しています。
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注目したいのは、「リテラ」(2015.02.21)の記事によれば、元旦に神奈川新聞に掲載されたインタビューで、1988年に日本で公開されて海外でも高い評価を受けた《火垂るの墓》について高畑監督が、「反戦映画が戦争を起こさないため、止めるためのものであるなら、あの作品はそうした役には立たないのではないか」と答え、「為政者」は「惨禍を繰り返したくないという切実な思いを利用し、感情に訴えかけてくる」からだと説明し、次のように語っていたとのことです。
「私たちは戦争中の人と比べて進歩したでしょうか。3・11で安全神話が崩れた後の原発をめぐる為政者の対応をみても、そうは思えません。成り行きでずるずるいくだけで、人々が仕方がないと諦めるところへいつの間にかもっていく。あの戦争の負け方と同じです」
筆者の酒井まど氏は、高畑監督の次のような言葉でこの記事を結んでいます。「(先の戦争について)いやいや戦争に協力させられたのだと思っている人も多いけれど、大多数が戦勝を祝うちょうちん行列に進んで参加した。非国民という言葉は、一般人が自分たちに同調しない一般人に向けて使った言葉です。(中略)古くからあるこの体質によって日本は泥沼の戦争に踏み込んでいったのです。私はこれを『ズルズル体質』と呼んでいますが、『空気を読む』なんて聞くと、これからもそうなる危うさを感じずにはいられません。」
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アニメ映画《かぐや姫の物語》が、米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門にノミネートされたばかりでなく、数々の国際的な章を受賞していることは、日本最古の物語が持つ普遍性を明らかにしてといえるでしょう。
一方、福島第一原子力発電所の大事故が実際には今も完全には収束しておらず、日本の大地や海が汚染されており、地震や噴火の危険性が続いているにもかかわらず、安倍首相をはじめとする現代の「大臣(おおおみ)」たちは、国民」の関心をその危険性から逸らすかのように、自衛隊を海外に派兵するための法律を次々に閣議決定しています。
日本の庶民が持っていた自然観や宇宙観が繊細なタッチで見事に描き出されるとともに、当時の「殿上人」の価値観を痛烈に批判していたこの作品が多くの人々に鑑賞されることを望んでいます。
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