日本比較文学会・東京支部第50回大会が日本大学文理学部で行われたのは、今から1年以上も前の2012年10月20日のことでしたが、そこで私は「黒澤明監督のドストエフスキー理解 ――黒澤映画《夢》における長編小説『罪と罰』のテーマ」と題する口頭発表を行いました。
発表を申し込んだ当初は、副題のように映画《夢》と『罪と罰』の構造の比較のみを行うつもりでした。しかし準備を進めるなかで、現在もドストエフスキー論の「大家」とみなされている文芸評論家の小林秀雄氏の『罪と罰』論との対比をした方が、黒澤明監督の映画《夢》の特徴が明らかになるだろうと考えるようになりました。
発表に際しては、司会者の沼野恭子氏からは適切なコメントを頂きました。また、大会の準備に当たられた関係者の方々にもたいへん遅くなりましたが、この場を借りて感謝の意を表します。
発表の際の目次は以下のとおりです。
* * *
はじめに――黒澤明と小林秀雄のドストエフスキー観
a、黒澤明監督の『白痴』観と映画《白痴》の結末
b、長編小説『白痴』の結末と小林秀雄の解釈
c、黒澤明のドストエフスキー観と映画《夢》
Ⅰ、『罪と罰』における夢の構造と映画《夢》
a、映画《夢》の構造と『罪と罰』
b、小林秀雄の『罪と罰』解釈と夢の重視
c、「やせ馬が殺される夢」とその後の二つの夢の関連性
d、映画《夢》の構造と土壌の描写
e、ペテルブルグの「壮麗な眺望」とシベリアの「鬱蒼たる森」の謎
Ⅱ、『罪と罰』の「死んだ老婆が笑う夢」と第四話「トンネル」
a、復員兵の悲鳴と「戦死した部下」たちの亡霊
b、「死んだ老婆が笑う夢」と幽霊の話
c、戦争の考察と「殺すこと」の問題
d、「トンネル」における「国策」としての戦争の批判
e、小林秀雄の戦争体験と『罪と罰』のエピローグ解釈
Ⅲ、『罪と罰』の「人類滅亡の悪夢」と第七話「鬼哭」
a、シベリアの流刑地における「人類滅亡の悪夢」とキューバ危機
b、小林秀雄と湯川秀樹の対談と原爆の批判
c、第六話「赤富士」の予言性と「人類滅亡の悪夢」
d、『罪と罰』の現代性と第七話「鬼哭」
おわりに ラスコーリニコフの「復活」と第八話「水車のある風景」
「黒澤映画《夢》における長編小説『罪と罰』のテーマ」より改題(11月6日)
コメントを残す