最近、松江市の教育委員会が漫画の『はだしのゲン』の閲覧制限を「小中学校に要請していた問題」が話題になっていましたが、ようやく「手続き不備」との理由で「要請撤回を決めた」との記事が、今日の『東京新聞』に載っていました。原爆による被爆を体験した日本から反核の必要性を伝えるためには、悲惨な事実をも見つめねばならないので、当然の措置だと思えますが、「閲覧の問題をめぐる今後の取り扱いは各学校に一任する」とのことなので、実質的には問題の先送りといえるでしょう。実はこのブログでも「原爆の危険性と原発の輸出」というタイトルで書いた8月6日のブログで、政府の対応の問題を指摘した後で、NHKで放送された番組の内容に言及していたので、再度、引用しておきます。
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「8月1日(木)には『はだしのゲン』など原爆の悲惨さを伝える作品が各国語で翻訳されていることを伝えるNHKの番組くらし☆解説 「原爆の悲惨さを世界に伝える」が(広瀬公巳解説委員)が放送されましたので付記しておきます。
ただ、よい番組だったと感じましたが、原爆の悲惨さを世界に伝えるためには、まず日本の政治家がこれらの本の内容をきちんと理解することは当然として、学校教育の教材としても取り入れることで「日本人」の子供たちに事実を知らせることが重要だろうと考えています。」
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この問題が起きたときには、やはりこの漫画で描かれている事実も隠すべきだという批判がでてきたかと感じました。なぜならば、福島原発事故の場合にも、原爆の問題と同じように「事実」を隠し続けることで、問題をあいまいにできると考える政治家が少なくないように見えるからです。
日本でようやく大きく取り上げられた「汚染水」の問題が、海外ではすでに大きく報じられていたことを最近知りました。このブログを読んでいる方の中にも知らない方がいると思われますので8月23日付けの「日刊ゲンダイ」(ネット版)の記事を紹介しておきます。
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「実は、汚染水問題は、むしろ国際的な関心の方が高いくらいだ。日本国内で大きく報道されるようになったのは、ここ数日のことだが、海外では早くから詳細に報道されていた。
例えば、英BBC放送は先月23日、ロイヤルベビー誕生ニュースの次に、汚染水が地下を抜けて海に流出している可能性を東電が初めて認めた問題を詳しく伝えた。ロイヤルベビーに浮かれていたのは日本のテレビの方だったのだ。(中略)
このところ、英インディペンデント紙やガーディアン紙、米ウォールストリート・ジャーナル紙、シカゴ・トリビューン紙なども『事故は収束できるのか?』と、相次いで懸念を表明している。(中略)3年後には耐用期限を迎えるタンクをどうするのか、方策は見つかっていない。つまり、日本の国土も海も汚染され続けるということだ。そんな場所でオリンピックなんて、国際世論が敬遠するのも当然だろう。(後略)」。
(「福島原発汚染水ダダ漏れで五輪招致絶望」『「日刊ゲンダイ』ネット版)。
ここまで引用してから新しい記事を見つけました。これは26日の『毎日新聞』の政治コラムからの引用とのことですが、重要な発言なので紹介しておきます。 「小泉元首相は、インタビューに〈原発ゼロしかない〉〈今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しい〉〈総理が決断すりゃできる〉と『脱原発』の持論を全面展開。〈『原発を失ったら経済成長できない』と経済界は言うけど、そんなことないね。昔も『満州は日本の生命線』と言ったけど、満州を失ったって日本は発展したじゃないか〉と、原発推進派をバッサリ切り捨てているのだ」。
(「小泉純一郎『脱原発宣言』に安倍首相真っ青」『「日刊ゲンダイ』ネット版、8月27日)。
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先日掲載した1989年に行われた国際ドストエフスキー・シンポジウムの報告では、チェルノブイリ原発事故にふれた発表もあったことも記しましたが、今後の世界のさまざまな学会などで研究発表する日本の研究者は、フクシマについても厳しく問われることになるでしょう。
宮崎駿氏と半藤一利氏は、「平和」や「護憲」の必要性を互いに確認したその対談を謙遜して「腰抜け愛国談義」と名付けていますが、「愛国」の気概を持つ政治家の方たちは、日本の国土と青少年の将来を守るために、一刻も早く日本が直面している危機を直視して行動すべきでしょう。
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