「書評・図書紹介」の最初のページに、学会誌『比較文明』(第23号)に掲載された『文明のモラルとエティカ――生態としての文明とその装置』の書評を再掲します。
齋藤博・東海大学名誉教授の文明学に対するご貢献については、論文集『文明と共存』の序文「混沌から共存へ」に記されているので、ここではそれを引用しておきます。
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新しい世紀を迎えた現在も世界の各地で宗教問題や民族問題を契機とした紛争が頻発し、イラク戦争も大義が見つからないままに混沌の度合いを深め、一部ではすでに宗教戦争の様相を示しているとの見方も出始めている。
このような意味で二十一世紀への新しい視点を確立するためにも、スピノザの専門的な研究成果をふまえて、「文明への問いは人間の共存の根拠を問うこと」であるとして、東海大学文明学の理論的な方向性を示された齋藤博教授の先駆的な学的試みは高く評価されねばならないだろう。
本著はそのような齋藤名誉教授の学恩を受けた大学院生卒業生の論文を中心にして編んだものであり、いわば各人における齋藤文明学の受容と自分の専門の視点からの発展が示されている。
本著が混迷から共存への方向性を模索する文明学の発展にささやかでも寄与できれば幸いである。
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