伊波敏男『島惑ひ 琉球沖縄のこと』(人文書館)
植田早や風そよそよと山の里
(ホームページ「かぎやで風」、2012年6月12日)
「ふるさとの沖縄を離れ異郷での暮らしが52年、ハンセン病のため隔離生活が沖縄で3年、ヤマトで10年の合計13年、逆算すると家族と一緒にすごしたのは,たったの14年ということになる。
この頃、故郷の沖縄に関わる情報は、私の耳には悲鳴ように伝わってくる。そして、「沖縄」の地名が、時間が経つごとに「琉球」という文字に置き換えられていく。これはどうしたことだろうか? 私の心中で日本国沖縄県という枠組が、ギシギシ音を立てて歪みはじめている。」
[目次]
序の章 |
恩納岳(うんなだき) |
壱の章 |
かたかしら(欹髻) |
弐の章 |
士魂の残照 |
参の章 |
貧の闇 |
四の章 |
琉球の鼓動 |
伍の章 |
そして、仏桑花(ぶっそうげ)の呻き |
終の章 |
君たちの未来へ |
「国に惑い」、「島が惑う」──後書きにかえて |
* * *
大城貞俊『島影 慶良間や見いゆしが』(人文書館)
大城氏の著作でも冒頭に次の詩が掲げられている。
「島影」
島が揺れている
沈黙の過去を保持し
神々とともに
水平線を見つめ
樹木を揺らしている
島がみつめている
死者たちの記憶が
珊瑚の海を彩っても
生者の肉体には宿らない
漂泊する箱舟たち
それでもなお
島は沈まない
今日の空は、あの日の空ではない
今日の海は、あの日の海ではない
そんな日々を矜持として
人々を信じ未来を信じ
凜としてそこにある
島が見えるか
太陽に対峙して輝く島
月の光を受けて歴史を刻む島
その時を信じて
あるがままにある
沖縄(ウチナー)の
島影
* * *
ブログの記事にも書いたが、「特定秘密保護法」が国内外の法律家やジャーナリストなどから示された深い危惧の念にもかかわらず、強行採決されたことで沖縄の問題を日本中が共有することになる。
これらの著作が日本に投げかけている「問い」はきわめて重い。