「教育勅語」渙発後の北村透谷たちの『文学界』と徳富蘇峰の『国民の友』との激しい論争などをとおして「立憲主義」が崩壊する過程を再考察することにより、蘇峰の英雄観を受け継いだ小林秀雄の『罪と罰』論の危険性にも迫る 。
目次より
はじめに 危機の時代と文学──『罪と罰』の受容と解釈の変容
第一章 「古代復帰の夢想」と「維新」という幻想──『夜明け前』を読み直す
第二章 一九世紀のグローバリズムと日露の近代化──ドストエフスキーと徳富蘇峰
第三章 透谷の『罪と罰』観と明治の「史観」論争──徳富蘇峰の影
第四章 明治の『文学界』と『罪と罰』の受容の深化
第五章 『罪と罰』で『破戒』を読み解く──差別と「良心」の考察
第六章 『罪と罰』の新解釈とよみがえる「神国思想」──徳富蘇峰から小林秀雄へ
あとがきに代えて──「明治維新」一五〇年と「立憲主義」の危機