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「アベノミクス」の詐欺性(3)――公的年金運用の「ハイリスク」の隠蔽

「アベノミクス」の詐欺性(3)――公的年金運用の「ハイリスク」の隠蔽

2014年11月25日に書いた「株価と年金」というブログ記事では、安倍内閣が価対策として、「127兆円規模の公的年金を運用する世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」に、「年金の運用額を引き上げるという改革案」を打ち出させたことに対しては、当初から厳しい批判があったことを紹介していました。

すなわち、松井克明氏は「GPIF改革が年金を破壊? 巨額損失の危険も 株価対策に年金を利用という愚策」という題名の記事(『Business Journal』7月2日)を、前GPIF運用委員の小幡績慶氏は「寄稿 GPIF改革四つの誤り 政治介入で運用は崩壊する」という記事(「週刊ダイヤモンド」ダイヤモンド社/6月21日号)を書いていたのです。

こうして、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、年金の運用額を引き上げるという改革案を打ち出したこと」に対しては、当初から経済学者から強い批判が出ていました。

しかし、これに対して安倍政権は何らの対策もとらず、国民への説明もしていなかったのですが、2016年1月19日付け「日刊ゲンダイ」(デジタル版)は、6日連続で下落した日経平均株価の異常事態を受けて、16日のTBS「報道特集」でGPIFの損失リスクに対する感想を問われた「アベノミクスの“生みの親”とされる浜田宏一・米エール大名誉教授」が、〈損をするんですよと(国民に)言っておけと、僕はいろんな人に言いました〉が、〈でも(政府側は)それはとてもおっかなくて、そういうことは言えないと〉と語っていたと報じて、次のように結んでいます(朱色は引用者)

〈浜田教授が「ハイリスク・ハイリターン」について国民に説明しろ、と指摘していたにもかかわらず、安倍政権は頬かむりしたワケだ。…中略…国民を愚弄するにもホドがある。〉

*   *   *

「株価と年金」というブログ記事では、〈昔から「素人は相場には手を出すな」という格言がありますが、株の素人の私から見ると現政権全体が「相場師」化している〉ように感じますと批判しました。

それから一年以上が過ぎた現在、状況は一層厳しくなっているように見えます。

安倍首相はこのような事態をむかえても「改憲」に前のめりのようですが、道義的に最初にしなければならないのは、自民党が抱え込んでいる疑惑のある議員の問題や、「ハイリスク」についての説明を果たしてこなかった自分の責任を明らかにすることでしょう。

ことに、「国民の生命や財産」にも深く関わるマイナンバー制度やTPP交渉の責任者である甘利明・内閣府特命担当大臣(経済財政政策)に、金銭授受の疑惑が浮かんできたことは経済界との癒着が目立つ安倍内閣の体質を物語っており、安倍首相は任命責任を取って一刻も早くに退陣すべきだと思われます。

(2016年1月22日。青字の箇所を訂正、追加。副題を変更)

 

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