高橋誠一郎 公式ホームページ

06月

「緊急事態条項」の危険性(旧)

 戦前の価値観への復帰を目指す「日本会議」に支えられ、「自国第一主義」を掲げるアメリカ大統領の意向に忠実な安倍首相が目指す改憲の草案には、国会も通さずに政府が自由に法律を制定できるというヒトラーが悪用した #緊急事態条項 も含まれている。 

今回の参議院選挙では「年金問題」が焦点の一つとなっているが、ここでは「緊急事態条項」関連の連続ツイートを再掲することによって、問題点を整理しておきたい。

 

 

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改憲施行を「早期」とし、(1)自衛隊の明記(2)緊急事態対応(4)教育充実を掲げた自民党の「憲法改正」案は、いずれも戦前の日本への価値観への回帰を目指す「日本会議」の意向に沿っているように見える。/https://twitter.com/stakaha5/status/1080361123822501889

安倍首相の「改憲」方針と明治初期の「廃仏毀釈」運動――「祭政一致」の政治を目指した岩倉具視の賛美 → 公式ホームページ http://stakaha.com/?p=5320   ↓ https://twitter.com/stakaha5/status/1133569549326938114 … … …

安倍首相の「改憲」方針と日露戦争の勝利の賛美の危険性 →ホームページhttp://www.stakaha.com/?p=8226  写真は天皇と皇后の写真(御真影)と教育勅語を納めていた奉安殿 ↓ /https://twitter.com/stakaha5/status/1133207399379099648

安倍首相の「改憲」方針と「緊急事態」案 →今度の選挙で自民党が勝利すれば、神道政治連盟国会議員懇談会の会長・安倍首相は「国難」を理由に、キリスト教だけでなく仏教の弾圧も可能になる。→樋口陽一・小林節著『「憲法改正」の真実』(集英社新書)を読む(改訂版) ↓ /https://twitter.com/stakaha5/status/929583905488769025

 

安倍首相の「改憲」方針と「明治維新」の「廃仏毀釈」運動 神道政治連盟国会議員懇談会・会長の安倍首相と公明党・山口代表の不思議な関係。→http://www.stakaha.com/?p=5349   ↓ https://twitter.com/stakaha5/status/920152277477834753 …  (写真は破壊された石仏) /https://twitter.com/stakaha5/status/957178181341003776

麻生副総理は憲法改正論に関してナチス政権の「手口」を学んだらどうかと発言していたが、ヒトラーが手に入れた #緊急事態条項 は国会も通さずに政府が自由に法律を制定できる全権委任法だった。↓https://twitter.com/stakaha5/status/957178181341003776

短編「悪魔の開幕」(1973)で #手塚治虫 は、「国民のすべての反対をおしきって 憲法を改正して」、「核兵器の製造にふみ切った」丹波首相の「非常大権」のもとで、言論の自由が奪われた近未来の日本を描き出していた。 #緊急事態条項 ↓  /https://twitter.com/stakaha5/status/1034354084692680704

安倍政権は国連委から「ヘイト対策」の強化勧告を受けている。島崎藤村は日露戦争後に長編小説『破戒』で「教育勅語」の「忠孝」の理念を説く校長や議員たちが、一方で激しい用語で差別を広めていたことを具体的に描いていた。↓ /https://twitter.com/stakaha5/status/1031819433700777984

明治の文学者たちの視点で差別や法制度の問題、「弱肉強食の思想」と「超人思想」などの危険性を描いていた『罪と罰』の現代性に迫り、「立憲主義」が崩壊する一年前に小林秀雄が書いたドストエフスキー論と「日本会議」の思想とのつながりを示唆する。#緊急事態条項  /https://twitter.com/stakaha5/status/1096272955716190208

安倍首相は「明治維新」を賛美するが、司馬遼太郎は「王政復古」から敗戦までが約80年であることをふまえて、「明治国家の続いている八十年間、その体制側に立ってものを考えることをしない人間は、乱臣賊子とされた」と指摘していた(「竜馬像の変遷」)。#緊急事態条項 /https://twitter.com/stakaha5/status/907828420704395266

アメリカで再編集された映画《怪獣王ゴジラ》について、映画《ゴジラ》で主役を演じた宝田明氏は、「政治的な意味合い、反米、反核のメッセージ」は丸ごとカットされて」いたとし、「大幅にカットしなければアチラで上映できなかった」と語っていた。 /https://twitter.com/stakaha5/status/1140241338593472513

戦前の価値観への復帰を目指す「日本会議」に支えられ、「自国第一主義」を掲げるアメリカ大統領の意向に忠実な安倍首相が目指す改憲の草案には、国会も通さずに政府が自由に法律を制定できるというヒトラーが悪用した #緊急事態条項 も含まれている。 / https://twitter.com/stakaha5/status/1142248031640645634

 

防衛関連株を大量保有する稲田・元防衛大臣を総裁特別補佐に任命した安倍首相と稲田氏の戦争観の危険性。http://www.stakaha.com/?p=6190  #緊急事態条項 以下のユーチューブは小畑幸三郎氏のツイッターより引用。↓  / https://twitter.com/batayanF3/status/1142287405703057408

戦前の価値観を戦後も堅持していた岸元首相を尊敬する安倍首相たちが目指す「改憲」と「緊急事態条項」の危険性。 以下のユーチューブはDr.ナイフ 氏のツイートより引用。↓ https://twitter.com/knife9000/status/1074591539651764226 …

憲法学者の樋口陽一氏:「敗戦で憲法を『押しつけられた』と信じている人たちは、明治の先人たちが『立憲政治』目指し、大正の先輩たちが『憲政の常道』を求めて闘った歴史から眼をそらしているのです」(『「憲法改正」の真実』集英社新書)。 https://twitter.com/stakaha5/status/916070530695946241

安倍政権主要メンバーの憲法観。 稲田朋美・元防衛大臣「国民の生活が大事なんていう政治は間違っている」、長勢甚遠・元法務大臣「基本的人権、国民主権、平和主義を無くしてこそ自主憲法」。 以下のユーチューブは小畑幸三郎氏のツイートより引用。↓ https://twitter.com/batayanF3/status/1053648606538788864

東條英機内閣の重要閣僚であった岸信介・元首相を尊敬する「日本会議」系の代議士たちが閣僚のほとんどを占める安倍自民党は、これまでの「自由民主党」とはまったく異なる反自由と反民主の政党となっている。https://twitter.com/stakaha5/status/925278688236658690

「八紘一宇は大切にしてきた価値観」と語っていた三原じゅん子氏の反対t討論を聞くと、彼女に発言させた安倍首相をはじめとする「日本会議」系の議員は、国会を自分たちのイデオロギーの宣伝の場としている印象さえ受ける。 →https://twitter.com/stakaha5/status/1143144525566599168 …

(昭和19年発行の十銭紙幣の表側。八紘一宇塔が描かれている。)

堀田善衞の長編小説『若き日の詩人たちの肖像』」は大学受験のために上京した翌日に「昭和維新」を唱える将校たちが起こした2.26事件に遭遇した主人公が「赤紙」によって召集されるまでの重苦しい日々を若き詩人たちとの交友をとおして描き出している。https://twitter.com/stakaha5/status/946242366490341376

『若き日の詩人たちの肖像』上、アマゾン『若き日の詩人たちの肖像』下、アマゾン

堀田善衛は「昭和維新」を唱えた青年将校たちによる二・二六事件の前日に上京した若者と詩人たちとの交友を通して治安維持法が強化された暗い昭和初期を自伝的な長編小説『若き日の詩人たちの肖像』で描いた。#緊急事態条項  /https://twitter.com/stakaha5/status/930086230250831872

(2023/06/21、改訂、改題)

『若き日の詩人たちの肖像』におけるナチズムの考察Ⅰ

『若き日の詩人たちの肖像』上、アマゾン『若き日の詩人たちの肖像』下、アマゾン(書影は「アマゾン」より)

はじめに――堀田善衞と小林秀雄のヒトラー観と堀田善衞

小林秀雄の短い書評「ヒットラアの『我が闘争』」が朝日新聞に掲載されたのは1940年9月12日のことであったが、それから間もない9月27日には日独伊三国同盟が締結された。

小林秀雄は後に雑誌『文藝春秋』(1960年5月号)に掲載した「ヒットラーと悪魔」でこの記事についてこう書いている。

「ヒットラーの『マイン・カンプ』が紹介されたのはもう二十年も前だ。私は強い印象を受けて、早速短評を書いた事がある。今でも、その時言いたかった言葉は覚えている。」

しかし、掲載された書評と小林秀雄の記憶とを比較すると、かなり大きな違いがあることがわかる。それについてはすでに別稿で記した。

小林秀雄のヒトラー観(1)――書評『我が闘争』と「ヒットラーと悪魔」をめぐって

 この問題について堀田善衛はなにも記していないようだが、重苦しい昭和初期の日々を若き詩人たちとの交友をとおして克明に描き出している『若き日の詩人たちの肖像』(1968年)では、何度もナチスの宣伝相ゲッベルスの演説などについて何度も言及されている。

ことにこの長編小説の終わり近くで作者はは登場人物に、「神仏習合って言うけど、古神道がキリスト教と習合し、いまどきの論文書きどもは、国学とナチズムの習合なんかをやってんだから話しにもなんにもなりゃせんよ」と厳しく「国学とナチズムの習合」を批判させているのである。

以下、本稿では『若き日の詩人たちの肖像』の記述をとおして、小林秀雄のヒトラー観に対する堀田善衛の批判を検証する。

 

1、『若き日の詩人たちの肖像』の構造とナチズムの考察

この長編小説の主人公は、大学受験のために上京した翌日に日本文化を重んじて物質より精神を重視する皇道派の影響を受けた陸軍青年将校たちが「昭和維新、尊皇斬奸」をスローガンにしたに遭遇する。

この長編小説で注目したいのは、2.26事件だけでなく幕末から明治初期と同じように「昭和維新、尊皇斬奸」が叫ばれるようになっていたこの時期の雰囲気が詳しく描かれていることである。

たとえば、この事件の前年に起きた統制派の中心人物・永田鉄山陸軍省軍務局長が殺害された相沢事件や、1934(昭和9)年に『ファッシズム批判』を出版していた河合栄治郎・東京帝国大学教授の「二・二六事件の批判」(帝国大学新聞)や軍国主義と「国体明徴」運動を批判して伏字ばかりの文章となっていた『中央公論』の巻頭論文も詳しく紹介されている。

こうして、第一部の終わり近くでは主人公の「生涯にとってある区分けとなる影響を及ぼす筈の、一つの事件」が起きる。ラジオから流れてきたナチスの宣伝相ゲッベルスの演説から「明らかにある種の脅迫」を感じた主人公は、続いて流れてきた「フランスのただの流行歌(シャンソン)」に「異様な感銘」を受け、「異様なことに、いますぐ何かをしなければならぬ」と思って背広を着て外に出るのである。

その後で作者は、「空には秋の星々がガンガンガラガラに輝いていた」のを見た若者が、「星を見上げて、つい近頃に読んだある小説の書き出しのところを思い出しながら、坂を下りて行った」と書き、題辞でも引用していた『白夜』の冒頭の文章「驚くべき夜であつた。親愛なる読者よ、それはわれわれが若いときにのみ在り得るやうな夜であつた(後略)」を引用して、「小説は、二十七歳のときのドストエフスキーが書いたものの、その書き出しのところであった」と説明している。

『白夜』を発表したドストエフスキーがこの後でペトラシェフスキー事件で逮捕され、偽りの死刑宣告を受けた後でシベリアに送られていたことや、それまで主人公を「少年」と記していた作者がここで「若者」と呼び変えている。こうして、ゲッベルスの演説から「異様な衝撃」を受けた若者は、それまで学んでいたドイツ語を捨てて新たにフランス語の勉強を始めて、昭和15年秋に法学部政治学科から仏文科に転科することになる。

しかも、そこでは仏文科の先輩である白柳君との会話をとおして、日本では「商工省の通達があって、洋書の輸入は禁止された」ことをが、「一九三五年にパリで行われた国際作家会議の記録によると、ドイツの作家代表は匿名は無論のこと、顔に覆面までをかぶって出て来るというひどい政治の有様」になっていたことも記されている。

実は1933年1月にナチスが政権を握った後では「非ドイツ的な魂」に対する抗議運動が行われ、『人権宣言論』などを書いていたユダヤ人の公法学者イェリネックの本も焚書の対象とされた。「天皇機関説」事件でやり玉に挙げられた美濃部達吉は、その『人権宣言論』を1906年に訳出しており、一方、ゲッベルスは焚書に際して扇動的な演説をしていた。

(ナチス・ドイツの焚書)

 一方、日本は2・26事件が起きた1936年の11月に日独防共協定が結び、主人公が「赤紙」で召集された1940年の9月には日独伊三国同盟を結ぶことになるのである。