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11月

安倍政権の核政策・関連記事一覧

先ほど「パグウォッシュ会議の閉幕と原子炉「もんじゅ」の杜撰さ」という記事をアップしました。

祖父である岸信介氏の核政策を受け継いで、福島第一原子力発電所の大事故の後も、「国策」として行われてきた安倍政権の核政策の問題についてはこれまで書いてきましたので、以下に、関連記事を掲載します。

 

安倍政権の核政策・関連記事一覧

「安全保障関連法案」の危険性(2)――岸・安倍政権の「核政策」

原子力規制委・田中委員長の発言と安倍政権――無責任体質の復活(6)

原発事故の「責任者」は誰か――「無責任体質」の復活(3)

安倍晋三首相の公約とトルーマン大統領の孫・ダニエル氏の活動――「長崎原爆の日」に(2)

原子雲を見た英国軍人の「良心の苦悩」と岸信介首相の核兵器観――「長崎原爆の日」に(1) 

真実を語ったのは誰か――「日本ペンクラブ脱原発の集い」に参加して

御嶽山の噴火と川内原発の再稼働――映画《夢》と「自然支配」の思想

「長崎原爆の日」と「集団的自衛権」 

原発事故の隠蔽と東京都知事選

終戦記念日と「ゴジラ」の哀しみ

原爆の危険性と原発の輸出

汚染水の危機と黒澤映画《夢》

汚染水の深刻さと劇《石棺》

 

パグウォッシュ会議の閉幕と原子炉「もんじゅ」の杜撰さ

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(広島と長崎に投下された原子爆弾のキノコ雲、1945年8月、図版は「ウィキペディア」より)

「パグウォッシュ会議」の世界大会が5日、「長崎を最後の被爆地に」とのメッセージで始まり、核兵器保有国に核廃絶を確約するよう求める「長崎宣言」を発表して閉幕しました。

この宣言では被爆国として運動の先頭に立つべきでありながら、いまだにアメリカの「核の傘」に入っている日本政府の核政策を強く意識して、安全保障政策の変革も要請されました。

原子力利用のあり方などが討議された3日の会議では、海外の科学者たちが「コストの高さや兵器転用の恐れ」を指摘して、「核燃料サイクルなどの日本の原子力政策を批判した」とのことです。

実際、11月5日の「東京新聞」朝刊は、「もんじゅ廃炉へ現実味 核燃料サイクル計画破綻」との見出しの一面記事で、次のように記しています。重要な記事なので少し長くなりますが、重要な箇所を引用しておきます。

*   *

原子力規制委員会は点検漏れ問題で文部科学省に対し、信頼できる運営主体を探すか、安全対策を抜本的に改善するかを勧告する。どちらかを実現しないと、廃炉は避けられない。もんじゅは国が推進してきた核燃料サイクル計画の中核的な存在。なくなれば、十兆円をつぎ込んできた計画は名実ともに破綻する。 (小倉貞俊、榊原智康)=関連<2>面

規制委は四日、現在の運営主体の日本原子力研究開発機構では、停止しているもんじゅの保全管理もできておらず、運転は任せられないとの判断を下した。 かつて「夢の原子炉」とうたわれたが、二十年以上も前に造られ、稼働期間はわずか二百五十日。冷却材に爆発的燃焼の危険性が高いナトリウムを使い、維持費もかさむ。機構は二十年前のナトリウム漏れ事故以降、甘い管理体制を改善する機会は何度もあったが一向に進まない。まだ待てというのか-。

規制委の委員五人は全員一致で、文科省への勧告という重い決断をした。/核燃サイクルは、一般的な原発系と高速炉系の二系統で、使用済み核燃料を再利用する計画。十兆円が投じられてきたが、どちらの循環も回るめどはない。原発で核燃料をMOX燃料として再利用するプルサーマルは、海外で製造した燃料を使って一部始まったが、使用済みMOXをどうするのかは白紙。もんじゅがなくなれば、高速炉系の「輪」は名実ともに消える。

   *   *   *

「国民」の生命をも脅かすばかりでなく、長い目で見れば「国家」を疲弊させる可能性が大きい安倍政権の核政策と安全保障政策はきわめて危険であると言わねばならないでしょう。

「パグウォッシュ会議」関連記事

リンク→小林秀雄の原子力エネルギー観と終末時計

リンク→年表8、核兵器・原発事故と終末時計

 

講演「黒澤明監督の倫理観と自然観」の感想が桝谷裕氏のブログに

《生きものの記録》に関する記事をネットで探していたところ、「黒澤明監督とドストエフスキー」と題するブログ記事で俳優の桝谷氏が講演の感想を書かれていたのを見つけました。

そのブログ記事では私の講演の要点が適確にまとめられているだけでなく、その後の質疑応答や岩崎雅典監督の映画の紹介も記されていました。だいぶ時間が経ってはいますが、人名などの誤植を一部改めた形で、お礼の意味も込めてこのブログに転載させて頂くことにします。(行替えなどを変更させて頂いた箇所は/で示しています)。

リンク→「黒澤明監督の倫理観と自然観」

*   *   *

「黒澤明監督の倫理観と自然観――《生きものの記録》から映画《夢》へ」/という講演会に行きました。(「地球システム・倫理学会」研究例会)/高橋誠一郎氏(元東海大学教授、現桜美林大学非常勤講師)。

黒澤明監督がドストエフスキーの影響を強く受けていたことを中心に、黒澤明監督の自然観、倫理観について話されました。

1ドストエフスキーの「罪と罰」の人類滅亡の悪夢と、映画「夢」の「赤富士」と「鬼哭」

2原爆を描いた映画「生きものの記録」とその時代

3映画「デルス・ウザーラ」における環境倫理

4映画「夢」における黒澤明監督の倫理観と自然観

おわりに ラスコーリニコフの復活と映画「夢」の第八話「水車のある村」

「地下室の手記」で主人公は、弱肉強食の思想や統計学、さらには功利主義など、近代西欧の主要な流れの哲学と対決している、というイギリスの研究者(ピース)の指摘を紹介されました。殺害を正当化する(近代西欧の思想に影響されている)ラスコーリニコフに、流刑地のシベリアで人類滅亡の悪夢を見せることで、弱肉強食の思想や、自己を絶対化して自然を支配し他者を抹殺する非凡人の理論の危険性を示唆していると話されました。

黒澤明監督がドストエフスキーについて「生きていく上でつっかえ棒になることを書いてくれてる人です」と話していたこと。

第五福竜丸事件を受けて製作され、1955年に公開された「生きものの記録」を撮った黒澤明監督が、核の利用を鋭く批判していたこと。

「核っていうのはね、だいたい人間が制御できないんだよ。そういうものを作ること自体がね、人間が思い上がっていると思うの、ぼくは」 「人間は全てのものをコントロールできると考えているのがいけない。傲慢だ。」/と語り、まるで福島の出来事を予感していたかのよう。

1953年にアメリカatoms for the peaceということが言われ、それに呼応するかのように日本は原子力利用に向かって動き出し、/「生きものの記録」が公開された1955年は、日本で「原子力基本法」が成立した年(原子力元年といえる年)でした。「生きものの記録」は興行的には振るわなかったそうです。 「直視しない日本人」ということも黒澤明監督が言っていたとも紹介されました。

主に「夢」を中心に、シーンごとに、ドストエフスキーの思想、自然観、「罪と罰」、ラスコーリニコフとの対応を話されました。 正直言って「夢」は私にとってとらえどころのない作品ですが、新たな視点で見直してみたいです。

会場は主に研究者の方々。質疑応答で、核の問題からチェルノブイリ、福島へ。また映画「デルス・ウザーラ」から自然観、少数民族の問題、アイヌの話。宗教観まで話は広がりました。

福島のその後を映画に撮られている岩崎雅典監督も会場にいらして、撮影の中で見えてきた福島の様子問題をお話してくださいました。「福島 生きものの記録 シリーズ3~拡散~」が6月日比谷図書館で上映されるそうです。(6/25、26、29)

観念的な話ではなく、人間の本質と、今目の前で起きている具体的出来事が常に結びついた話でした。

*   *   *

筆者の桝谷裕氏のブログには、11月28日(土)に行われる「父と暮せば」(作井上ひさし)の一人語りなどの《公演予定》も記されていますので、以下にブログのアドレスも記載しておきます。

黒澤明監督とドストエフスキー 桝谷 裕 -yutaka masutani …

yutakamasutani.blog13.fc2.com/blog-entry-628.html

長崎でのパグウォッシュ会議と「核使用禁止」決議への日本の棄権

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(東宝製作・配給、1955年、図版は「ウィキペディア」より)。

米国のビキニ水爆実験によって「第五福竜丸」や周辺の島々の人々が被爆した悲劇の反省から湯川秀樹博士ら著名な科学者10人が署名した1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」を実現するために始まったパグウォッシュ会議が、原爆投下から七十年を迎える今年、約40カ国から200人近くが参加して、被爆地の長崎で開かれています。

しかし、このような中、核兵器の使用禁止や廃絶のための法的枠組みづくりの努力を呼び掛ける決議案が、国連総会第1委員会(軍縮)で2日、を賛成多数で採択されたにもかかわらず、原爆の容認と原発の推進政策をとり続けてきた日本政府はまたも、被爆国でありながら、棄権に回ったとの報道がなされました。

岸信介首相と同じように未だに原子力エネルギーの危険性を認識していない安倍政権は、そればかりでなく武器輸出などの軍拡政策をとることにより、目先の経済的利益を追求し始めています。安倍政権の危険性をこれからもきちんと指摘していかねばならないでしょう。

リンク→第五福竜丸」事件と映画《生きものの記録》

リンク→映画 《福島 生きものの記録》(岩崎雅典監督作品 )と黒澤映画《生きものの記録》