(2011年3月16日撮影:左から4号機、3号機、2号機、1号機、写真は「ウィキペディア」より)
デマと中傷を広めたのは誰か――「無責任体質」の復活(4)
東電の勝俣恒久元会長(75)、武藤栄(さかえ)元副社長(65)と、武黒(たけくろ)一郎元副社長(69)の三人について業務上過失致死傷罪で起訴すべきとした東京第五検察審査会の議決が出たことを受けて、先ほど〈原発事故の「責任者」は誰か――「無責任体質」の復活(3)〉というブログ記事をアップしました。
そこではサイト「文芸ジャンキー・パラダイス」の2013年7月12日の記述を紹介していましたが、その記述が「首相がデマを流していいのか?」と題されていたのは、「そうならないよう万全の態勢を整えている」と国会答弁をしていただけでなく、事故当時の最高責任者・菅直人氏を安倍晋三氏がメルマガで激しく誹謗中傷していたことを次のように批判していたからです。少し長くなりますが引用します(太字は引用者)。
* *
福島原発事故で菅元首相が海水注入を止めたためメルトダウンを引き起こし、福島原発事故がひどくなったというデマが今も広く信じられている。
管元首相は事故時に放射性物質の予測拡散情報を公開せず、国民を無用な被曝に晒したことから、僕は菅氏に対して憤りを感じている。だが、安倍氏は無実の罪を菅氏になすりつけて、自分へ批判が向かないようにしており、その行為はあまりに姑息すぎる。
安倍氏は事故直後の2011年5月20日のメルマガで次のように記している。
「東電はマニュアル通り淡水が切れた後、海水を注入しようと考えており、実行した。しかし、 やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです」/「菅総理は間違った判断と嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです」
だがその後の調査で、実際は福島第一原発・吉田所長の判断で海水注入は中止されてなかったし、菅首相から中止指示があったという指摘についても、国会の原発事故調査委員会において「中止の指示を出したのは総理大臣の菅ではなく、官邸へ派遣された東京電力フェローの武黒一郎によるものだった」ことを武黒本人が認めている。 さらに、当時安倍氏は情報の出所として「(経産省の)柳瀬か(保安院の)寺坂に聞けば分かる」と記者達に吹聴し、多くの記者が柳瀬氏に問い合わせたところ「ありえません」「安倍さんの言っていることは嘘です」と返答したという。
100歩譲って、事故直後は情報の混乱があり、安倍氏が誤った知識を得たのもやむなしとしよう。だが、問題は参院選直前の現時点(2013年7月12日)においても、公式WEBでその文章が削除もされずお詫び訂正もされてないこと(引用者注――現在は削除されているようです)。
それゆえ安倍氏の支持者は今も「自民政権だったら事故は防げた。フクシマの事故はすべて管元首相のせい」とネットに書きまくっている。あまりに悪質すぎる。 菅氏のブログにその苦悩が綴られているので転載したい。
(http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/column15.html)
———————————————–
「ネットを利用した安倍晋三総理の巧妙な名誉毀損」2013年07月11日
ネットを利用し、嘘の情報を流すことで安倍晋三氏は私と民主党に対する重大な名誉毀損行為を行い、訂正の要求に応じないことで今も名誉毀損行為を続けている。
選挙戦を戦っていて、 多くの人の間でいったん定着した誤解を解く事がいかにむつかしいかを痛感している。福島原発事故で、当時の菅総理が海水注入を止めたためメルトダウンを引き起こし、福島原発事故がひどくなったという今も広く信じられている誤解。この嘘の情報を最初にネット上に発表したのが2011年5月20日付けの安倍晋三氏のメルマガ。この総理経験者のメルマガ情報を翌日の読売新聞と産經新聞が大々的に取り上げた。さらに何度も国会で同趣旨の質問を自民党議員が繰り返すことでマスコミに取り上げさせた。そして、6月2日に提出された菅内閣不信任案の理由の一つとされた。敵ながらあっぱれとでもいうべき見事な一連の情報操作だ。
その後海水注入は停止されていなかったことが故吉田所長自らの発言で明らかになったが、そのことは一般の人にまで伝わらず、菅総理が海水注入を止めて、メルトダウンが起きたという誤解だけが広く今日まで残っている。安倍氏と自民党のこうした一連の行為は私個人に対するだけでなく、民主党に対しても重大な名誉毀損に当たる。
誤解を解くためには安倍晋三氏に誤りを認めさせて、謝罪させる必要がある。安倍氏の発表がネット上のメルマガであったので、私もネット上でこれまで何度も誤りを認めて訂正と謝罪をするよう求めてきた。しかし、一切の反応はない。ネット選挙が解禁された中で、ネットを利用して嘘の情報を選挙開始前に流しておいて、それを訂正しないという事は選挙の公平性からも許されない行為だ。しかもそれを行ったのが当時でも総理経験者で今再び総理の座に在る安倍晋三氏本人となればなおさらのことだ。ネット選挙解禁を強力に進めた安倍総理の責任は重い。週明けまで安倍総理から何らかの反応がない場合には名誉毀損を正す他の手段を検討せざるを得ない。
* *
この菅氏のブログを紹介したサイトの管理者は「安倍氏はデマを流したことを、菅氏や民主党だけでなく、原発の耐震性問題(配管が地震に弱い)から目をそらさせたことで、国民に謝罪するべきだ」と記すとともに、次のような元通産(経産)省官僚・古賀茂明氏の言葉も紹介しています。
「福島第一原発の事故が収束せず、事故原因さえ解明されていない状況で、総理がトップセールスで原発を売り歩くことは倫理的に許されない。まだ新しい安全基準も完全には出来上がっていないのに各国に原発を売り歩く安倍総理は世界へ原発事故と核拡散の種をばら撒く『死の商人』である」(2013.6)
* *
かつて、このブログでは〈『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』における「憎悪表現」〉という記事で、他党を誹謗して「さらば! 売国民主党政権」と語った百田尚樹氏の「憎悪表現」の問題を指摘しました。
それとともにこの書では〈「愛国心」や「モラル」の必要性が強く唱えられる一方で、戦争を起こした者や原発事故を引き起こした者たちの責任には全く言及されていないこと〉にも注意を促していました。
第二次安倍政権が発足してから起きた一連の出来事や発言からは、権力を握れば何でも出来ると考えているような安倍政権の「傲慢さ」と「無責任さ」や、岸信介氏が閣僚として加わっていた「東條英機内閣」との類似性が強く感じられます。
今回の東京第五検察審査会の議決を受けて菅元首相は、昨日のブログ記事で「安倍内閣は福島原発事故の十分な検証もできていない中で、川内原発の再稼働を急ごうとしている。安倍内閣は日本を滅ぼしかねない『亡国政権』だ」と厳しい批判をしています。
この言葉は大げさではなく、「アベノミクス」を前面に出した「公約」によって選挙に勝利したあとでは権力を背景に、「法治国家」や「民主主義の国」とは思えないような「強権的な手法」で沖縄の基地建設や、原発の再稼働、さらに自衛隊の軍隊化などが進められています。
「原発事故」を一刻も早くに収束して「国民の生命」や「国土」を守るためには、今回の「戦争法案」の「白紙撤回」だけでなく安倍首相の辞任を要求することが必要でしょう。