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近代化

『ロシアの近代化と若きドストエフスキー ――「祖国戦争」からクリミア戦争へ』(成文社、2007年)

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『白夜』第一部の題辞

「驚くべき夜であつた。親愛なる読者よ、それはわれわれが若いときにのみ在り得るやうな夜であつた。空は一面星に飾られ非常に輝かしかったので、それを見ると、こんな空の下に種々の不機嫌な、片意地な人間が果して生存し得られるものだらうかと、思はず自問せざるをえなかつたほどである」(米川正夫訳)

目次

はじめに――「祖国戦争」とドストエフスキーの父ミハイル

「ナポレオンのテーマ」/「謎」としての人間/「イソップの言葉」

 

序章  近代化の光と影――「祖国戦争」の勝利から「暗黒の三〇年」へ

一、ナポレオンのロシア侵攻とドストエフスキーの父ミハイル

医学生ミハイル/ピョートル一世の教育改革とミハイル/「文明」による「野蛮の征伐」/「聖戦」意識の芽生え――ロシアのナショナリズム

二、『知恵の悲しみ』――青年貴族たちの苦悩

「諸国民の解放戦争」と青年将校/喜劇『知恵の悲しみ』と世代の考察/新しい知識人の登場/改革の負の側面とその批判/プーシキンの政治詩「自由」/デカブリストの乱と「暗黒の三〇年」

三、「立身出世主義」の光と影――父ミハイルとロシアの知識人

父ミハイルの出世とロシア貴族の考察/検閲の問題/マサリクのドストエフスキー観

 

第一章 父ミハイルと若きドストエフスキー

一、領地の購入と農奴制の問題との直面――「小ツァーリ」としての地主

母マリア/領地の購入/村の大火と母の病気

二、ロシアの「教育改革」とドストエフスキー ――寄宿学校で

ポーランドと ウクライナの「教育改革」/ロシアの「教育勅語」/チェルマーク寄宿学校

三、文学との出会い――語学教師ビレーヴィッチとロシア文学への関心

語学教師ビレーヴィッチとゴーゴリ/自己の表現力と母国語

四、知識人の悲劇――『哲学書簡』の発禁とプーシキンの死

「西欧派」と「スラヴ派」の誕生/プーシキンの決闘と死/『青銅の騎士』と「発狂」のテーマ/哲学(愛・知)への関心

五、ドストエフスキーと『知恵の悲しみ』――ロシア知識人の考察

『知恵の悲しみ』とその上演/長編小説『未成年』と『知恵の悲しみ』/ 作品を解く鍵としての『知恵の悲しみ』/「官等と勲章」の問題

六、「方法」としての文学ーー父の横死と文学への志

工兵学校への入学/社会の不平等さとの直面/ラジーシチェフとプーシキン/文学作品の読書と習作の試み/バルザックの作品の翻訳と作家への道

 

第二章 自己と他者の認識と自立の模索――『貧しき人々』

一、方法としての対話――「文学」の二義性

書簡体という形式/「教訓を与える」文学/「いじめ」の問題/『駅長』/自己認識の深まり

二、『貧しき人々』の核――ワルワーラの「手記」

村と都市との対比/隠された「自由思想」/隠された「父と子」のテーマ/権力者としての教師/学校制度と「いじめ」の問題/外国語学習と「自己」の確立

三、「模倣」と「身分」

「誤読」の問題/上位者の「模倣」と「恩恵」/プライヴァシーの侵害/「公」と「個」の問題/官僚制度の腐敗と「沈黙」」/新しい女性/「罪の懺悔」と検閲/共感の能力/題名の意味

四、残された問い――終わり方の問題をめぐって

裁判の勝訴と突然の死/シベリアのテーマ/終わり方の問題/ドブロリューボフの指摘

 

第三章 欲望と権力の考察――『分身』と初期作品をめぐって

一、『貧しき人々』から『分身』へ――ベリンスキーの評価をめぐって

評論家ベリンスキーとの出会い/「笑い」という手法/ドストエフスキーの現実認識

二、「立身出世の望み」と「欲望の模倣」――『分身』

二重人格の心理/脱落の恐怖/「三角形の欲望」/「仮面」のテーマ/「賭け」の失敗/「噂」の効能/同じ人間の大量生産

三、権力と法の考察――「雪解け」の可能性の時代

『プロハルチン氏』/「自由思想家」という噂/ペトラシェフスキーの会/『ロシア人作家についての歴史辞典の試み』

四、権力と「父親殺し」のテーマ――『プロハルチン氏』、『家主の妻』

『けちな騎士』/「父親殺し」のテーマ

五、ゴーゴリとベリンスキーの論争――「臣民の道徳」をめぐって

『友人達との往復書簡選』/「キリル・メトディ団」の逮捕/ベリンスキーの手紙/『ステパンチコヴォ村とその住民』

 

第四章 『白夜』とペトラシェフスキー事件

一、『ペテルブルグ年代記』から『白夜』へ――「夢想家のテーマ」の深まり

二月革命後とロシア/『ペテルブルグ年代記』/「夢想家」の考察/詩人プレシチェーエフへの献辞

二、「道化」に秘められた意志――『ポルズンコフ』

『知恵の悲しみ』からの引用/ポルズンコフとレペチーロフ

三、「良心」の痛みと改革への決意――『弱い心』

『青銅の騎士』と『弱い心』/「心の裁判官」としての「良心」/削除された「自由思想家」

四、『白夜』に隠された「農奴解放」のテーマ

ロシアの二重性/虐げられた農奴の娘/「謎の下宿人」とオネーギン/『コロムナの小家』の秘密/「夢想家」と「行動的な改革者」/評論集『打ちひしがれた人々』/『その前夜』の構造と『白夜』/『白夜』から『地下室の手記』へ

五、ペトラシェフスキー事件――ロシアの「大逆事件」

独房への収監と訊問/検閲制度の批判/『小さな英雄』/「不在化」するための言葉/死刑の宣告と恩赦/ハンガリー出兵とクリミア戦争

 

終章  日本の近代化とドストエフスキーの受容

一、クリミア戦争と日本の「開国」

ロシアからの黒船/ピョートル大帝の改革と日本/方法としての「発狂」

二、日露戦争後の日本と「大逆事件」

『アンナ・カレーニナ』と非戦論/徳冨蘆花と「勝利の悲哀」/夏目漱石と「大逆事件」/『沈黙の塔』と「謀叛論」

三、日本の帝国化と「教育改革」

『復活』の上演と『虐げられた人々』/徳富蘇峰の「教育改革」論/「芥川龍之介の『河童』と狂気の問題

四、「大東亜戦争」と後期ドストエフスキー

『若き日の詩人たちの肖像』と『白夜』/『罪と罰』の解釈と「大東亜共栄圏」/ダニレフスキーの文明観とドストエフスキー/マサリクの『作家の日記』批判/『罪と罰』の現代的意義

注/ 人名索引/事項索引/ 関連年表/ あとがき

リンク→「暗黒の三〇年」と若きドストエフスキー(「はじめに」より)

 リンク→「新しい戦争」の時代と「憲法」改悪の危険性(「あとがき」より)

 

書評と紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

‘12.03.08 書評 『異文化交流』(三宅正樹氏)

‘09.03.10 書評 『比較文明』(黒川知文氏)

‘08.05.31 書評 『異文化交流』(杉里直人氏

‘08.04.19 書評 『ドストエーフスキイ広場』(大木昭男氏)

‘08.03.31 書評 『比較文学』(西野常夫氏)

‘08.03.31 書評 『比較思想研究』(寺田ひろ子氏)

‘07.11.04 書評 『しんぶん赤旗』(木下豊房氏)

‘07.10.27 書評 『図書新聞』(「O」氏)

‘07.09.26 書評 『聖教新聞』(「哨」氏)

‘07.09.11 紹介 『出版ニュース』9月中旬号

‘07.09.01 紹介 『望星』10月号

(成文社のHPより)