6月22日(土)に世界文学会 第三回連続研究会 :『歴史と世界文学』が下記の要領で行われます。
開催日時:2019年6月22日(土)14:00~17:45
開催場所:中央大学駿河台記念館 (千代田区神田駿河台3-11-5 TEL 03-3292-3111)
発表者と発表要旨を「世界文学会」のホームページより転載します。
地図など詳しくはホームページをご参照下さい。
→ http://sekaibungaku.org/blog/2019no3youshi
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1) 及川淳子 「天安門事件と劉暁波」
1989年6月4日、学生や市民による民主化要求運動が中国共産党によって武力弾圧された。いわゆる六・四天安門事件の発生から、今年は30年という節目の年にあたる。事件は現代中国における最大の政治的タブーであり、中国国内では関連の報道や再評価を求める知識人たちの言論活動も厳しく規制されている。
本報告では、事件の際に脚光を浴び、2010年に獄中でノーベル平和賞を受賞し、2017年に獄死を遂げた作家の劉暁波(1955-2017)の思想と行動について考察する。1989年の事件直前に天安門広場で仲間たちと発表した「六・二ハンスト宣言」と、2009年に裁判の陳述書として獄中で執筆し、後にノーベル平和賞の授賞式で代読された「私には敵はいない」の核心部分を比較検討し、二つのテキストから劉暁波の徹底した平和主義について読み解きたい。
また、劉暁波に関する報告者の新著『11通の手紙』についても取り上げ、「自由」をめぐる文学的表現の可能性についても考えてみたい。
『11通の手紙』(天安門事件と劉暁波)、及川淳子、小学館、2019年。
2) 南田みどり「日本占領期とビルマ文学」
ここしばらく、日本占領期を研究テーマとして、苦労して作品を収集し、読んできました。まだまだわからないこともありますが、今回の発表は、現時点での到達状況を整理して今後に備える機会にできたらと思っています。第一に、日本占領期のビルマ文学ですが、見るべき作品のない「暗黒時代」だったというビルマ国内の通説に反して、いくつかの点が明らかにできました。しかし、それを現在のビルマで公表することは難しいようです。知人の研究者が私の英語の論文をビルマ語に翻訳して雑誌に掲載し始めましたが、早々と連載が打ち切られました。第二に、現代文学に描かれた日本占領期です。1960年代の作品を読み終えて70年代に入るところですが、60年代は「虚構による史実再編の時代」であったといえます。この二つと大きくかかわるのがビルマ軍の存在です。軍の実質的支配が続くミャンマー連邦内では、こうした研究はまだまだ危険をともなうようです。
『ビルマ1946 – 独立前夜の物語』、テインペーミン、南田みどり訳、段々社、2016年。
3) 大野一道 「ミシュレの「日記」を中心に…」
19世紀フランスの歴史家ジュール・ミシュレは、フランス語普通名詞ルネサンス(復活・再生の意)を、歴史上の一時代を指し示す名称として定着させた史上最初の人だった。彼は遺著『19世紀史』第2巻の序文で、「歴史は〔…〕死者たちに新たな生命を与え、甦らせる。〔…〕こうして〔…〕生きる者と死する者が出会う共通の国が出来上がる」と書いているが、これこそ彼の「歴史」の本質を示す言葉だ。生きているわれわれが、死者の中で今なお生き続けている命を(その心や魂を)見出し、甦らせ、復活させることこそ歴史の使命だというのだ。さらには民衆史家とも呼ばれる彼にとっては、名もなく生きた無数の人々の人生をもできうる限り甦らせて、初めて一つの時代全体の復活もあり得た。「死者を愛すること、それは一つの不死である」と書いているその「日記」を中心に、ミシュレの歴史観がいかに文学と通底するかを述べる。
『全体史の誕生:若き日の日記と書簡』、ジュール・ミシュレ、大野一道訳、藤原書店、2014年。
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世界文学会では、統一テーマのもと、12月から翌年の7月にかけて連続研究会を4回行っています。
ご関心のある方は、会員外の方でもどうぞご自由にご参加ください。会員外の方には資料代として500円を承ります。