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憲法

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館)の目次を「著書・共著」に掲載

標記の拙著に関して昨年の10月に目次案を掲載しましたが、その後「秘密法・集団的自衛権」は「争点にならず」とした衆議院選挙が昨年末に行われ、その「公約」を裏切るような形で「安全保障関連法案」が提出されました。

「蟷螂の斧」とは知りつつもこの事態を「黙過」することはできずに、この法案の危険性を明らかにする記事を書き続けていました。そのため、6月27日に書いたブログ記事「新聞『日本』の報道姿勢と安倍政権の言論感覚脱稿に向けて全力を集中する」と宣言したにもかかわらず、拙著の進展が大幅に遅れてしまい、読者の方々や人文書館の方々にはご心配をおかけしました。

ただ、「国会」や「憲法」を軽視して「報道」にも圧力をかけるような安倍政権の「独裁政治」を目の当たりにしたことで、今回の事態が「新聞紙条例」や「讒謗律」を発行し自分たちの意向に沿わない新聞には厳しい「発行停止処分」を下していた薩長藩閥政権ときわめて似ていることを痛感したことで、東京帝国大学を中退して新聞「日本」の記者となった正岡子規の生きた時代を実感することができました。

それゆえ、新著では明治維新以降の歴史を振り返ることにより、「戦争」や「憲法」と「報道」の問題との関わりをより掘り下げて、「安倍政治」の危険性を明らかにするだけでなく、「新聞記者」としての子規の生き方や漱石との友情にも注意を払うことで、若い人たちにも生きることの意義を感じてもらえるような著作にしたいと願っています。

目次に関しては微調整がまだ必要かも知れませんが、題名だけでなく構成もだいぶ改訂しましたので、新しい題名と目次案を「著書・共著」に掲載します。

リンク『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館、2015年

『安全保障関連法案に反対する学者の会』の賛同者(学者・研究者)が10,857人に

『安全保障関連法案に反対する学者の会』のアピールへの賛同者(学者・研究者)の人数は、7月17日9時00分現在で一万人を超えて10,857人に、市民の賛同者が21.377人に達しました。

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

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「憲法」や「学問的な知」を侮辱し、「情念」的な言葉で「国民の恐怖」を煽り、戦争の必要性を強調するような安倍政権の手法が、真面目な研究者たちの怒りを駆り立てていると言えるでしょう。

未来の世代を担う世代のSEALDs(シールズ:Students Emergency Action for Liberal Democracy – s)自由と民主主義のための学生緊急行動)などの声も確実に広がっているようです。

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いよいよ審議は参議院に移ります。

YouTubeの「あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみた」は、「文明史」的な理解を欠いた形でこの法案を解説した自民党・広報の「教えて!ヒゲの隊長」の説明を分かりやすく論破していますので再掲します。

強行採決への抗議声明を出した主な団体(15日)

時間が少しさかのぼりますが、「朝日新聞」デジタル版の情報によれば(2015年7月16日00時23分)、原水爆被害者の団体を始め、法律、宗教、報道、作家、医療、環境に関わる下記の団体が早速、強行採決への抗議声明を出していたことが判明しました。

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)

公益社団法人自由人権協会

立憲デモクラシーの会

真宗大谷派(東本願寺)

日本カトリック正義と平和協議会

日本ジャーナリスト会議

日本マスコミ文化情報労組会議

日本民間放送労働組合連合会(民放労連)

日本ペンクラブ

日本医療労働組合連合会(医労連)

環境NGO「グリーンピース・ジャパン」

 

「日本ペンクラブ声明」を転載

日本ペンクラブが下記の声明を発表しましたので、転載します。

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日本ペンクラブは、本日、衆議院特別委員会で強行採決された、安全保障法案に強く抗議し、全ての廃案を求める。

集団的自衛権の行使が日本国憲法に違反することは自明である。私たちは、戦争にあくまでも反対する。

2015年7月15日

一般社団法人日本ペンクラブ

会長 浅田次郎

 

「安全保障関連法案」の危険性(3)――「見切り発車」という手法

本日(7月10日)の「東京新聞」朝刊の一面は、「新国立契約、見切り発車 資材発注 大成建設と33億円」という題名で、「二千五百億円を超える巨額な工事費が問題となっている、二〇二〇年東京五輪・パラリンピック大会の主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設」が、巨額の税金を払うことになる「国民」や「都民」への詳しい説明もないままに、大成建設への「資材の発注」を行ったことを大きく報じています。

さらに、第27面の記事では「このままではモラルハザード」になるという危惧や、この巨額な予算は「福島避難者の住宅支援」などに生かすべきだとの意見とともに、「元の建物」いち早く壊したやり方に対する批判も紹介されています。

この記事から感じられたのは、ラグビーのW杯の日程にあわせた「新国立契約、見切り発車」と「アメリカの議会」への「約束」をたてにして「国民」への納得できる説明もなく、今月の中旬には危険な「安全保障関連法案」を強行採決して「見切り発車」させようとする安倍政権の手法の類似性です。

こうした三代目の「ボンボン」のような「放漫経営」的な手法を行っても、福島第一原子力発電所事故の場合でよく分かるように、政治家自身は責任を負うことはありません。その巨額のツケを後で払わされることになるのは、私たちや子や孫など「国民」なのです。

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記者会見で菅官房長官が「ただ、いつまでもだらだらと続けることでなく、やはり決めるところは決めるということも、一つの責任だと思う」と語ったのに続いて、麻生太郎・副総理が派閥の会合のあいさつで「平和安全法制、ほぼ審議が尽くされた。与野党で十分な時間をかけて審議をしていただいたんだと思う。そろそろ結論を出して、衆院としての結論を出さなければならん時期にきている。/少なくとも我々は、多くの信を得て昨年の12月に当選した。信認を得て、多くの議席を得たという確信を持って、間違いなく我々はやってきた」と語ったことも伝えられています。

しかし、昨年の総選挙の際の安倍首相の横顔が印刷された自民党のポスターに記されていたのは、「景気回復、この道しかない。」というスローガンで、「安全保障関連法案」の問題はまだ提起されてもいなかったはずです。

リンク→「欲しがりません勝つまでは」と「景気回復、この道しかない。」12月5日)

「安全保障関連法案」の問題については、今月4日に衆議院憲法審査会で行われた参考人質疑では、野党推薦の2人の憲法学者だけでなく、与党が推薦した学者も含めて3人の参考人全員によって、安倍政権による「新たな安全保障関連法案」は「憲法違反」との見解が示されたことで明らかになりました。

リンク→衆議院憲法審査会の見解と安倍政権の「無法性」

この危険な法案に反対する『安全保障関連法案に反対する学者の会』のアピールへの賛同者(学者・研究者)の人数は、7月10日9時00分現在で9175人に達しました。

本日(7月10日)の15時からは中野晃一・上智大学教授、大沢真理・東京大学教授、佐藤学・学習院大学教授の記者会見が日本外国特派員協会で行われるとのことです

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

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  YouTubeの【あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみたは、この法案を「情念」的な言葉で「分かりやすく解説」した自民党の「教えて!ヒゲの隊長」の説明を分かりやすく批判しています。

この二つを比較してみると「安全保障関連法案」の問題点がよく分かるでしょう。

百田直樹氏の小説『永遠の0(ゼロ)』関連の記事一覧

先ほど、〈「平和安全法制整備法案」と小説『永遠の0(ゼロ)』の構造〉という記事をアップしました。

それゆえ、ここでは百田直樹氏の小説『永遠の0(ゼロ)』および、安倍首相との共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』に関連する記事の一覧を掲載します。

(下線部をクリックすると記事にリンクします)。

 

『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』における「憎悪表現」

百田尚樹氏の『殉愛』と安倍首相の「愛国」の手法

宮崎監督の映画《風立ちぬ》と百田尚樹氏の『永遠のO(ゼロ)』(1)

宮崎監督の映画《風立ちぬ》と百田尚樹氏の『永遠の0(ゼロ)』(2)

宮崎監督の映画《風立ちぬ》と百田尚樹氏の『永遠の0(ゼロ)』(3)

「特定秘密保護法」と「オレオレ詐欺

「集団的自衛権」と「カミカゼ」

「集団的自衛権」と『永遠の0(ゼロ)』

「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(1)

『永遠の0(ゼロ)』と「尊皇攘夷思想」

「ぼく」とは誰か ――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(2)

沈黙する女性・慶子――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(3)

隠された「一億玉砕」の思想――――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(4)

小林秀雄と「一億玉砕」の思想

「戦争の批判」というたてまえ――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(5

「作品」に込められた「作者」の思想――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(6)

「作者」の強い悪意――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(7)

「議論」を拒否する小説の構造――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(8)

黒幕は誰か――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(9)

モデルとしてのアニメ映画《紅の豚》――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(10)

歪められた「司馬史観」――――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(11)

侮辱された主人公――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(12)

主人公の「思い」の実現へ――『永遠の0(ゼロ)』を超えて(1)

「ワイマール憲法」から「日本の平和憲法」へ――『永遠の0(ゼロ)』を超えて(2)

「終末時計」の時刻と「自衛隊」の役割――『永遠の0(ゼロ)』を超えて(3)

 

「安全保障関連法案」の危険性――「国民の生命」の軽視と歴史認識の欠如

〈「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピールを「新着情報」に掲載〉と題した短い記事を、先ほどブログに書きましたので、ここでは「呼びかけ人」のコメントを紹介します。

小林 節(慶應義塾大学名誉教授・  憲法学)氏は、次のようなコメントを添えています。

「この法案は憲法に違反して、自衛隊を米軍の二軍にするものです。これを許せばわが国は立憲国家でなくなり、専制が始まり、世界中に敵が出来、かえって安全でなくなり、戦費で経済的に疲弊し、要するに希代の愚策です。」

*   *   *

非常に厳しい意見ですが、私も以下のような理由からほぼ同感です。

1,今回の法案は日本の国会で議論される前にアメリカの議会で報告された、国民と国会を軽視した法案であること。

2,自衛隊を海外に派兵するには、テロリストと呼ばれるイスラムの過激派がなぜ生まれたのかという歴史的な背景をきちんと自衛隊員に教える必要があること。そのような歴史の理解を欠いた形で派兵されて戦うことになる自衛隊員や日本は、アメリカ軍の単なる傭兵や従属国のようにみなされて、より強い憎しみの対象になると思われる。

3,安倍政権の政策は兵器輸出をめざす企業などの利益を一時的にはもたらすが、長い目で見ると、戦費や次に挙げるテロ対策費などで国家財政が疲弊することになる。

4,日本でもかなり以前から不審物に対する注意が交通機関などで行われるようになってきている。しかし、6月30日に起きた新幹線放火自殺事件が、明らかにしたように、新幹線やその過密な運行システムは基本的には平和な日本だから成立している。

一方、自国や自民族が侮辱されていると考え、圧倒的な兵力の差から自らの命を犠牲にして行われる自殺テロを防ぐためには、新幹線の乗客の身体や荷物に対する徹底した検査が必要である。「安全保障関連法案」は、活発な商業活動や外国からの観光客などを増やそうとする政策を否定するものである。

*   *   *

政治や経済には素人の私の考えなので、むろん反論や批判もありうると思います。しかし、今回の法案は日本の70年の歴史を覆すだけでなく、国民の生命や経済にも深くかかわっています。その法案を「国会の議席数」をたてに「国民」の考えを尊重せずに、現在のような形で強引に通すことは、将来に深い禍根をもたらすものと思われます。

なお、原水爆の危険性を軽視した岸信介政権と同じように、原水爆だけでなく原発の問題も軽視している安倍晋三政権の危険性については、別の機会に改めて論じたいと思います。

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

(2015年7月5日、〈新幹線放火自殺事件と「安全保障関連法案」の危険性〉より改題)

「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピールを「新着情報」に掲載

先日、「安全保障関連法案に反対する学者の会」に賛同の署名を送りました。

チラシを取り込むことができなかったために遅くなりましたが、この会のHP・トップページの背景画像と〈「戦争する国」へすすむ安全保障関連法案に反対します〉と題されたアピールの文章、および呼びかけ人の名簿を「新着情報」に掲載します。

7月3日9時00分現在のアピール賛同者人数(学者・研究者)は、8336人とのことです。

 

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

リンク→「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピール

新聞『日本』の報道姿勢と安倍政権の言論感覚

昨日、「日本新聞博物館」で行われている「孤高の新聞『日本』――羯南、子規らの格闘」展に行ってきました。

チラシには企画展の主旨が格調高い文章で次のように記されています。

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1889(明治22)年に陸羯南(くが・かつなん)は新聞「日本」を創刊し、政府や政党など特定の勢力の宣伝機関紙ではない「独立新聞」の理念を掲げ、頻繁な発行停止処分にも屈することなく、政府を厳しく批判し、日本の針路を示し続けました。また、初めて新聞記者の「職分」を明確に提示し、新聞発行禁止・停止処分の廃止を求める記者連盟の先頭にも立ちました。

また、羯南の高い理想、人徳にひかれて日本新聞社には正岡子規ら大勢の俊英が集い、羯南亡き後、内外の主要新聞に散り、こんにちの新聞の基礎づくりに貢献しました。本企画展では、新聞「日本」の人々の、理想の新聞を追求した軌跡を200点を超す資料やパネルで紹介します。

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実際、1,新世代の記者たち、2,「日本」登場、3,新聞というベンチャー、4,子規と羯南、5,羯南を支えた人々、6,理念と経営のはざまで、7、再評価 の7つのコーナーから成る企画展はとても充実しており、「理想の新聞を追求した」新聞「日本」の軌跡を具体的に知ることができました。

ことに司馬作品の研究者である私にとっては、新聞『日本』の記者となる子規を主人公の一人とした長編小説『坂の上の雲』や『ひとびとの跫音』を書いただけでなく、産経新聞社の後輩で筑波大学の教授になった青木彰氏への手紙などで、「陸羯南と新聞『日本』の研究」の重要性を記していた司馬遼太郎氏の熱い思いを知ることが出来、たいへん有意義でした(なお、企画展は8月9日まで開催)。

また、常設展も幕末からの新聞の歴史が忠実に展示されており、「特定秘密保護法」の閣議決定以降、強い関心をもっていましたので、ことに治安維持法の成立から戦時統制下を経て敗戦に至る時期の新聞の状況が示されたコーナーからは現代の新聞の置かれている状況の厳しさも感じられました。

リンク→

「特定秘密保護法」と子規の『小日本』

「東京新聞」の「平和の俳句」と子規の『小日本』

ピケティ氏の『21世紀の資本』と正岡子規の貧富論

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それだけに帰宅してから見た下記のような内容のニュースには非常に驚かされました(引用は「東京新聞」デジタル版による)。

「安倍晋三首相に近い自民党若手議員の勉強会で、安全保障関連法案をめぐり報道機関に圧力をかけ、言論を封じようとする動きが出た」ばかりでなく、勉強会の講師を務めた作家の百田尚樹氏は「『沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない』などと述べた」。

この後でこのことを聞かれた百田氏は、ツイッターに「沖縄の二つの新聞社はつぶれたらいいのに、という発言は講演で言ったものではない。講演の後の質疑応答の雑談の中で、冗談として言ったものだ」などと弁解したようです。

このような無責任な記述は言論人としての氏の資質を正直に現しており、百田尚樹氏と共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』を発行していた安倍首相の責任も問われなければならないでしょう。

今回の事態は「国会」や「憲法」を軽視する安倍政権が、「新聞紙条例」を発行して自分たちの意向に沿わない新聞には厳しい「発行停止処分」を下していた薩長藩閥政権ときわめて似ていることを物語っていると思えます。

この問題についてはより詳しく分析しなければならないとも感じていますが、今は新聞と憲法や戦争の問題を検閲の問題などの問題をとおしてきちんと検証するためにも、執筆中の拙著『新聞への思い 正岡子規と「坂の上の雲」』の脱稿に向けて全力を集中することにします。

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リンク→『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』における「憎悪表現」

リンク→百田尚樹氏の『殉愛』と安倍首相の「愛国」の手法

 

「国会」と「憲法」軽視の安倍内閣と国会前の「命懸け」スピーチ

自民党の高村正彦副総裁は11日の衆院憲法審査会で「自衛の措置が何であるかを考え抜くのは憲法学者ではなく政治家だ」と主張していましたが、18日の党首討論で安倍首相は「感情論、感情的な価値判断で答え」、「具体的説明を拒否」しました。

これにたいして民主党の岡田代表は、「時の内閣に武力行使や憲法判断を白紙委任しているのと一緒だ。立憲国家ではない」と厳しく批判したことを新聞各紙は伝えています(引用は「東京新聞」朝刊より)。

実際、国会での論戦を拒否して「政権与党の命令に従え」と語っているかのような安倍内閣の姿勢は、安倍首相の祖父の岸信介氏も閣僚として参加していた日米開戦前の「東条内閣」にきわめて近いようにさえ感じられます。

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18日の衆院予算委員会で安倍首相は野党からの質問に対しては具体的説明を拒否する一方で、昨年7月の閣議決定については「国際情勢に目をつぶり、従来の解釈に固執するのは政治家としての責任放棄だ」と持論を繰り返しました。

しかし、「国際情勢に目をつぶり」たがっているのは、安倍首相の方でしょう。国家の安全のためにきちんとした「外交」を行うべき政治家が、交渉をするのではなく、相手国の非を一方的に述べ立てて挑発することは「戦争」へと国家を誘導していることになります。

「報復の権利」を主張して「戦争の大義」がないにもかかわらず強引にイラク戦争をはじめたブッシュ政権の負の遺産として、「復讐」を声高に唱える現在の「イスラム国」が生まれたことはすでによく知られています。

日本の自衛隊が「イスラム国」などとの戦争に「後方支援」として参加することは、攻撃の対象が広がることで自国民の被害が軽減される欧米各国からは歓迎されると思われます。しかし、それは日本の「国民」や「国土」を戦争の惨禍に再びさらすことになる危険性を伴っているのです。安倍氏は武器の輸出など一時的な利益に目がくらんで、若い「国民」の生命を犠牲にしようとしているのです。

さらに、テロとの戦いを名目としてこれらの戦争に「後方支援」として参加することは、「国際政治」の分野で、日本が独自の平和外交の機会を投げ捨てることに等しいと思われます。

長期的な視野で考えるならば、被爆国の日本が「憲法九条」を保持することが、「国際平和」を積極的に打ち立てることにつながるでしょう。これらの論点から目を逸らし相手からの鋭い追求に答えずに、持論を繰り返すことは、もはや国会の論争ではなく、むしろ独りよがりの独裁者の演説に近い性質のものでしょう。

このような安倍氏の主張には、満州では棄民政策を行い、米国の原爆投下の「道義的な責任」を問わなかった岸・元首相と同じように、自分の政策の誤りで起きた原発事故の責任問題などから国民の視線を逸らそうとする意図さえも感じられるようです。

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18日夜、東京・永田町の国会議事堂近くで繰り広げられた安全保障関連法案に反対する抗議行動に参加した作家で僧侶の瀬戸内寂聴氏(93)は、「このまま安倍晋三首相の思想で政治が続けば、戦争になる。それを防がなければならないし、私も最後の力を出して反対行動を起こしたい」との決意を語りました(「東京新聞」19日朝刊)。。

そして、太平洋戦争に際しては「この戦争は天皇陛下のため、日本の将来のため、東洋平和のため」と教えられていたが、「戦争に良い戦争は絶対にない。すべて人殺しです」と続けた瀬戸内氏は、次のように結んでいました。

「最近の日本の状況を見ていると、なんだか怖い戦争にどんどん近づいていくような気がいたします。せめて死ぬ前にここへきてそういう気持ちを訴えたいと思った。どうか、ここに集まった方は私と同じような気持ちだと思うが、その気持ちを他の人たちにも伝えて、特に若い人たちに伝えて、若い人の将来が幸せになるような方向に進んでほしいと思います。」

仏陀だけでなく、イエスも「殺すなかれ」と語っていたことを思い起こすならば、憲法学者や歴史学者だけでなく、すべての宗教者が瀬戸内氏の呼びかけに答えてほしいと願っています。