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堀田善衛の生誕100周年をむかえて

明けましておめでとうございます。

昨年も日本は「夜明け前」の暗さが続いた1年でしたが、

「立憲民主党」が創設されたことでなんとか

「立憲主義」の崩壊が避けられました。

また、世界でも「核兵器禁止条約」が結ばれ、

ICANにノーベル平和賞が与えられるなど

新しい流れも生まれました。

賀正、宇宙

安倍政権はいまだにアメリカ第一主義に追随した政策を行っていますが、

環境問題に関連して日本とアメリカを批判した司馬遼太郎の言葉を受けて、

堀田善衛は「これからは日本は自国一国ではなしに、

地球全体のことを考えていかないとやっていけなくなる」と発言していました。

(『時代の風音』、朝日文庫、1997年)。

堀田善衛の生誕100周年にあたる今年こそは、

なんとか未来への希望の持てる年になることを念願しています。

本年もよろしくお願いします。

「国民の安全と経済の活性化のために脱原発を」に追加した箇所を掲載

昨日、俳優・中村敦夫氏の朗読劇について記した短い劇評をアップしました。

  元・原発技術者と木枯し紋次郎――朗読劇「線量計が鳴る」を観る 

それに関連してトップページの「国民の安全と経済の活性化のために脱原発を」に、8,「終末時計の時刻とトランプ大統領の核政策」の項目を加筆し、9, 「北朝鮮情勢と安倍政権の核政策」、10,〔「核兵器禁止条約」と日本〕を追加しました。加筆および追加した箇所を以下に再掲します。

8,  終末時計の時刻とトランプ大統領の核政策

アメリカの科学誌『原子力科学者会報』は、日本国憲法が発布された1947年に世界終末時計を発表して、その時刻がすでに終末の7分前であることに注意を促していた。冷戦の終結によって「残り17分」までに回復したが、2015年にはその時刻がテロや原発事故の危険性から1949年と同じ「残り3分」に戻った。さらに、2017年1月にはトランプ大統領が「核廃絶」や地球の温暖化に対して消極的な発言を行なったことなどから「残り2分半」になったと発表された。

9, 北朝鮮情勢と安倍政権の核政策

7月7日には国連で「核兵器禁止条約」が国連加盟国の6割を超える122カ国の賛成で採択されたが参加すらしなかった日本の安倍政権は、水爆実験やミサイルの発射などを繰り返した北朝鮮に対してトランプ大統領が「北朝鮮を完全破壊」することもありうるとの恫喝的な発言を国連で行い国際社会からの強い顰蹙を買った際にもその危険性を指摘しなかった。

しかし、狭い国土に世界の7%に当たる110の活火山を有する火山大国であり、地震大国でもある日本に、現在、54基もの原発があり、安倍政権によってその稼働が進められていることを考慮するならば、日本をも巻き込んだ極東での戦争がレベル7の大事故だった福島第一原子力発電所事故以上の地球規模の大惨事となることは明白のように思われる。

10,「核兵器禁止条約」と日本

つまり、「核兵器禁止条約」は理想論ではなく、「化学兵器禁止条約」と同じように人道的な条約であり、さらに地球と人類を存続させるための現実的で切実な条約といえるだろう。

原水爆の危険性と非人道性をよく知る被爆国日本は、「核の傘」理論が机上の空論であり、キューバ危機の時のように憎悪や恐怖の感情に襲われた時には役に立たないことを明らかにして、非核運動の先頭に立つべきであろう。

元・原発技術者と木枯し紋次郎――朗読劇「線量計が鳴る」を観る(上演スケジュール) 

朗読劇「線量計が鳴る」上演スケジュール

線量計が鳴る2(←画像をクリックで拡大できます)

一世を風靡したテレビ時代劇《木枯し紋次郎》で主人公を演じた俳優・中村敦夫氏が3年余の苦闘の末に書き上げた朗読劇「線量計が鳴る」を笹塚ボウルで観たのは、初夏の7月16日のことであった。

その後の世界情勢は悪化の一途を辿っているが、そのような中でも原発技術者の視点から原発の危険性を訴えたこの朗読劇・上演の輪は広がり続けており、笹塚ボウルでも10月17日と18日の追加公演が決まった。

少し記憶が薄れている箇所もあるが、新聞記事などによって確認しながらその時の感想を記すとともに、現在の世界や日本の状況との関連にも簡単に触れておきたい(以下、敬称略)。    

*   *

小さな会場ではあったが開演の30分ほど前に着いた時にはすでにほぼ満席で、初老の主人公が線量計を片手に入ってくると劇は始まった。

背景にスクリーンがあるだけの簡素な舞台だったが、原発の町で生れ育った主人公が最初は希望を持って原発で働きながら次第に疑問を抱くようになり、ついに原発事故に遭遇したという自分の物語を、福島弁で語り始めると、観客はすぐにその語りに引きこまれた。

それは戦後に生まれた多くの日本人が程度の差こそあれ、多かれ少なかれ似たようなことを体験していたために、少し聞き取りにくい箇所はあっても、福島弁で語ることによって哀しみや怒りが生の声で観客の心に直接に届いたからだと思われる。

さらに、観客が元・原発技術者の気持ちに同感しやすかったのは、中村が1972年1月1日から放映された笹沢左保原作のテレビ時代劇《木枯し紋次郎》(市川昆監督)の主人公を演じていたことにもあると思える。

「あっしには、かかわりのねえこって」という決めぜりふが物語っているように、ニヒルな渡世人の紋次郎は、最初は他人との関わりを極力避けようとするのだが、結局はか弱い者が置かれた状況を見かねて助けに入り、大人数のやくざたちを相手に大立ち回りをすることになる。

しかも、所有しているのが何度も太刀を交わすと折れる心配もあるような安い刀なので、それまでの時代劇の舞うような華麗な殺陣ではなく、刀を振り回しながら走り回り、取っ組み合って地面を転がるという全身を使った殺陣で相手を倒すのである。

この朗読劇でも中村は希望を持って原発で働いていたが、次第に原発に疑問を抱くようになり、その問題点を指摘して経営者から嫌われできれば関わりたくはないと思いつつも原発の問題を真正面から体当たりで指摘する主人公を熱演している。

「原発は安全だ、安全だぁ」って、自分も他人もだまぐらかして飯食ってきたんだからな。  揚げ句の果て、取り返しのつかねえ原発事故が起ごっちまった。自爆テロみでえなもんだ、これは。この話すんのは、ほんとにつれえわ。んでもな、どうやっだって現実からは逃げられねえべ。

朗読劇「山頭火物語」では「鴉啼いてわたしも一人」などの代表的な句をスクリーンに映し出しながら物語を進めていくという手法をとることで、天才とも酒乱とも呼ばれた漂泊の俳人・種田山頭火をとおしてエコロジーの問題にも鋭く迫っていた中村は、そのような手法をこの朗読劇でさらに深めている。

山頭火物語

すなわち、主人公が「原発立地の浜通りの自治体は、どこも同じように繁栄した。予算をばらまくための法律、電源三法のおかげだね」(太字は引用者)と語った際には、「原発立地に見返りとしての交付金(税金)を与えるための三つの法律」との説明がスクリーンに表示され、さらに「事故隠し」では「2007年北陸電力の臨界事故隠蔽が発覚。その後、全国12電力会社で、事故隠し300件が判明」などとスクリーンに重要な用語の説明やグラフなどが映し出されることで、非常に多くの情報が整理されて観客に伝えられた。

さらに日本ペンクラブでは環境委員会委員長を務めた中村は、チェルノブイリ原発事故の視察にも参加していたが、それはこの劇でも元・原発技術者の主人公が事実を知るためにはチエルノブイリ視察へと行った体験として活かされており、ウクライナでは5ミリシーベルトで避難地域の対象となっているにもかかわらず、先進国と自称している日本ではその5倍の20ミリシーベルトに設定されていることなどが明らかにされる。

こんでも、原発推進派はやめられねえって言う。その根拠つうのは、長い間国民が信じ込まされできたうそ八百だ。日本の原発業界は、技術と知識は最低だけど、うそだけは一流だがんな。まず、原発がねえと電気が足りねえつう大うそだ。 こんだけ理屈に合わねえ危険いっぱいのポンゴツ原発を、事故起ごした責任も取らねえで、なんで再稼働させんのけ。

元・原発技術者の怒りと指摘はきわめて厳しいがそれは抽象的な言葉としてではなく、中村が少年時代を過ごした福島弁で木訥に語られることにより、説得力を持ち得ている。

さらに、それはスクリーンに映し出される「総括原価=必要な経費のすべて盛り込み、さらに利益分を上乗せして予算を作る。その合計が電気料金の総額に相当する」、「原子力損害賠償法=事故が起きたとき、自然災害であれば、電力会社の賠償は1200億円と定められる」などのきわめて具体的な情報によって、複雑な原子力発電の問題を感情的で主観的な思いとしてではなく、事実としての重みのある言葉として観客に伝わり、説得力のある舞台であった。  

*   *

アメリカの科学誌『原子力科学者会報』は、日本国憲法が発布された1947年に世界終末時計を発表して、その時刻がすでに終末の7分前であることに注意を促していた。

しかし、2015年にはその時刻がテロや原発事故の危険性から1949年と同じ「残り3分」に戻っていたが、2017年1月にはトランプ大統領が「核廃絶」や地球の温暖化に対して消極的な発言を行なったことなどから「残り2分半」になったと発表した。

このような事態を受けて7月7日に国連で「核兵器禁止条約」が国連加盟国の6割を超える122カ国の賛成で採択されたが、原水爆の危険性をよく知り非核運動の先頭に立つべき被爆国の安倍政権は参加すらしなかった。

そして、北朝鮮が水爆実験やミサイルの発射などを繰り返すと、トランプ大統領は「北朝鮮を完全破壊」することもありうるとの恫喝的な発言を国連で行い国際社会からの強い顰蹙を買ったが、安倍首相はその危険性を指摘すらもしなかった。

しかし、狭い国土に世界の7%に当たる110の活火山を有する火山大国であり、地震大国でもある日本には54基もの原発があり、安倍政権によってその稼働が進められていることを考慮するならば、日本をも巻き込んだ極東での戦争がレベル7の大事故だった福島第一原子力発電所事故以上の地球規模の大惨事となることは明白のように思われる。

元・原発技術者は原発推進派の政治家、官僚、電力業界、原子力学会、産業界、マスコミなど既得権益に群がる六つの勢力を「六角マフィア」として断罪していた。木枯し紋次郎の刀を思わせるような主人公の鋭い言葉の切っ先は、「六角マフィア」の頂点にあって国民の生命や財産を危険にさらしながら日本を戦争に巻き込もうとしている安倍政権に突きつけられていると言えるだろう。

ソ連ではペレストロイカ(立て直し)の時期に演劇がグラスノスチ(情報公開)や改革の要求の先頭に立っていた。日本でもこの朗読劇がそのような役割を果たすことを期待したい。  

主な参考文献

商品の詳細(書影は「アマゾン」より)

中村敦夫『簡素なる国』(講談社、2011)
毎日新聞朝刊「インタビュー:朗読劇で原発廃止訴え 俳優・中村敦夫さん」2017年4月29日
日刊ゲンダイDIGITAL 、中村敦夫「避けられない問題」、6月11日
朝日新聞朝刊「人物欄」、8月31日
(2017年9月28日、一部訂正してリンク先と画像を追加。12月25日、書影を追加、2018年6月10日、題名に加筆)

ドストエーフスキイの会、第240回例会(合評会)のご案内

「第240回例会のご案内」を「ニュースレター」(No.141)より転載します。

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第240回例会のご案内

今回は『広場』26号の合評会となりますが、論評者の報告時間を10分程度とし、エッセイの論評も数分に制限して自由討議の時間を多くとりました。記載されている以外のエッセイや書評などに関しても、会場からのご発言は自由です。多くの皆様のご参加をお待ちしています。

 

日 時 2017年7月15日(土)午後2時~5時

 場 所神宮前穏田区民会館 第2会議室(2F)     ℡:03-3407-1807

 (会場が変更になりました。下記の案内図をご覧ください!)

 

掲載主要論文の論評者

 熊谷論文 ラスコーリニコフの深き欲望 ――太田香子氏

金沢論文  ドストエフスキーと「気球」 ――高橋誠一郎氏

チホミーロフ論文 「思想家達の形象による」思索の問題――熊谷のぶよし氏

杉里論文  《貶められ辱められた子ども》の絶望と救済――近藤靖宏氏

芦川論文  イワン・カラマーゾフのキリスト ―大木貞幸氏

エッセイ:冷牟田、清水、西野、石田、学会報告―フリートーク

司会 高橋誠一郎氏(+近藤靖宏氏)

 

*会員無料・一般参加者-500円

前回例会の「傍聴記」と「会計報告」は、「ドストエーフスキイの会」のHP(http://www.ne.jp/asahi/dost/jds)でご確認ください。

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会場(神宮前穏田区民会館)の案内図

ドストエーフスキイの会会場

(5)「閣議決定」と特別報告者による「特定秘密法の改正勧告」

リットン調査団ケイ

「リットン調査団」(出典は「ウィキペディア」)と特別報告者デビット・ケイ氏(出典は「共同通信」)

*   *   *

5月28日の記事で私は「国連の特別報告者デビット・ケイ氏やケナタッチ氏の指摘や報告の内容は、安倍政権の強圧的な対応によっていっそう説得力のあるものとなり、ベルリン・オリンピックの悲劇を体験している国際社会は「リットン報告書」の時と同じような対応を取らざるをえなくなるだろう」と記した。

実際に事態は満州事変後の「リットン調査団」の頃の状況と似てきた。

すなわち、共謀罪の構成要件を厳しくした「テロ等準備罪」について、国連人権理事会の特別報告者が安倍総理宛の書簡で懸念を表明していた問題に対して、安倍内閣は「書簡は国連または人権理事会の見解を述べたものではない」などとする答弁書を国内向けに閣議決定し、書簡についても答弁書で次のように厳しく批判した。「我が国政府から説明を受けることなく作成されたものであり、誤解に基づくと考えられる点も多い」。(以上、「TBSニュ-ス」13時57分)。

しかし、その「閣議決定」に応えるかのように早速、「国連人権高等弁務官事務所は30日、言論と表現の自由に関するデービッド・ケイ特別報告者がまとめた対日調査報告書を公表した。その中でケイ氏は、日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性に言及、メディアの独立性に懸念を示し、特定秘密保護法の改正などを日本政府に勧告した」(「共同通信」21時30分)。

実際、前回の記事で記したように、すでに2013年に国連のピレイ・人権高等弁務官は安倍政権が強行採決した「特定秘密保護法案」について「成立を急ぐべきではない」と指摘していた。さらに、高市総務大臣の「電波停止」発言など、政権による報道への圧力の問題を調査しに来日しながら、度重なる会見の要求を高市氏に拒まれた国連の「報道の自由」特別報告者デビット・ケイ氏は、外国人記者クラブで記者会見を行い、秘密保護法やパスポート強制返納などについても安倍政権を強く批判していた。

「閣議決定」は国連特別報告者ケナタッチ氏が「共謀罪」法案に対し、18日付けの書簡で首相に対して「我が国政府から説明を受けることなく作成されたもの」と批判しているが、このような経緯から見るならば、「説明」を拒否し続けていたのは安倍内閣であることは明白であるだろう。

以前に書いたことの繰り返しになるが、五輪に向けたこれまでの努力を無駄にしないためには、「五輪憲章」に違反して開催権を取り上げられる危険性のある安倍政権に代わる次の政権を一刻も早くに打ち立てることが必要だと思える。

 

「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性関連記事

「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性(1)――1940年との類似性(加筆版)

「共謀罪」はテロの危険性を軽減せず、むしろ増大させる悪法――国連特別報告者の批判を踏まえて

(2)ベルリン・オリンピックとの「際立つ類似点」

(3)G7サミットでの安倍発言と政府の対応をめぐって 

4)安倍首相の「国連特別報道者」非難発言と日本の孤立化

「特定秘密保護法案の強行採決と日本の孤立化関連記事

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化

「特定秘密保護法案」の強行採決と日本の孤立化Ⅱ

(4)安倍首相の「国連特別報道者」非難発言と日本の孤立化

「日本政府が、その抗議において、繰り返し多用する主張は、2020年の東京オリンピックに向けて国連越境組織犯罪防止条約を批准するためにこの法案が必要だというものでした。」(国連特別報告者「官房長官の声明に対する反論」)

*   *   *

読売新聞(5月27日、電子版)は「(国連事務総長)グテレス氏は日本の国会で審議中の組織犯罪処罰法改正案(テロ準備罪法案)を巡り、国連人権理事会の特別報告者が懸念を伝える書簡を首相に送ったことについて、「必ずしも国連の総意を反映するものではない」との見解を明らかにした」とニュースのソースを明らかにせずに発表した。

このような報道を受けて安倍首相は29日の参院本会議で、国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏が「共謀罪」法案によるプライバシー権侵害への懸念を表明したことについて、「言動は著しくバランスを欠き、客観的であるべき専門家の振る舞いとは言い難い」と強く批判し、さらに公開書簡を発表したことを念頭に「信義則にも反する。一方的なものである以上、政府のこれまでの説明の妥当性を減ずるものでは全くない」と厳しく非難し、自身宛ての質問に対しては「わが国の取り組みを国際社会で正確に説明するためにも、しっかりと返したい」と語った。

しかし、「日刊ゲンダイ」などでもすでに詳しく報道されているように、人権理事会理事国選挙の際に日本政府は、「世界の人権保護促進への日本の参画」と題した文書を公表し、〈特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため、今後もしっかりと協力していく〉と明記していた。→国連人権理事会理事国選挙 外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_003868.html …

それにも関わらず「共謀罪」の問題点を指摘されると「客観的であるべき専門家の振る舞いとは言い難い」と特別報告者のケナタッチ氏を強く非難したことの方が、理事国選挙の際の公約を破り「信義則にも反する」と国際社会から批判されるだろう。

実際、本日(30日)国連の報道官は、「共謀罪の構成要件を厳しくしたテロ等準備罪を新設する法案に懸念を示した国連の特別報告者」の言動を非難した日本政府の見解に対しても、「事務総長は特別報告者について、国連人権理事会に直接、報告を行う独立した専門家」であり、「彼らは国連人権理事会の組織の一部でもある」と語ったとコメントして、日本政府の解釈を否定した。

さらに、金田法相の国会発言からは「共謀罪」が人権・環境団体をも対象としていることが新たに明らかになっただけでなく、「加計学園」問題について証言した前川前文科次官に対する政権と御用新聞による誹謗中傷などからも、オリンピックを名目にした「共謀罪」法案が、テロ対策よりも政権の関係者の利権を守り、批判者を取り締まる法案であることがいっそう明確になってきた。

これまで日本国内での事実の改竄や証拠の隠蔽に成功してきたために、安倍政権は国際社会でも訳語の改竄のような二枚舌が通用すると考えているのかもしれない。

しかし、すでに2013年に国連のピレイ・人権高等弁務官は安倍政権が強行採決した「特定秘密保護法案」についても、「成立を急ぐべきではない」と語っていた。

「特定秘密保護法案」の強行採決と日本の孤立化

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化

国連からの度重なる警告や質問を無視している安倍政権は、いずれ国際社会からの強い批判を招いて孤立化し、国際連盟から脱退してオリンピックを返上していた1940年と同じような事態になると思われる。

国連事務総長金田法相

(出典は「東京新聞政治部」のツイッター)

(3)G7サミットでの安倍発言と政府の対応をめぐって

「日本政府が、その抗議において、繰り返し多用する主張は、2020年の東京オリンピックに向けて国連越境組織犯罪防止条約を批准するためにこの法案が必要だというものでした。」(国連特別報告者「官房長官の声明に対する反論」)

*   *   *

昨日の報道によれば、安倍首相はG7サミットのテロに関する議論の中で、日本政府が「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案の今国会成立を目指していることに関連し「テロの資金源である組織犯罪対策の強化が必要であり、国際組織犯罪防止条約の締結のためのわが国の取り組みに対するこれまでの各国の支持に感謝したい」と語った(「東京新聞」)。

「共同通信」が〈首相、「共謀罪」支持に謝意〉との見出しでこのニュースを伝えたために、あたかも安倍政権が強行採決した「共謀罪」法案がサミットでも評価されたかのような印象が生まれた。

しかし、階猛氏がすでにツイッターで指摘しているように「見出しと記事の本文が不整合。本文を読むと『国際組織犯罪防止条約締結の取り組み』への各国の支持に首相が感謝したとあるが、『共謀罪』支持への感謝はどこにもない」のである。

問題はサミットの前に安倍首相と日本政府が「プライバシーに関する権利の国連特別報告者」ケナタッチ氏から受け取っていた「共謀罪」法案にたいする厳しい指摘については完全に無視していることであろう。

しかし、すでに多くの報道機関によって報じられているように、ケナタッチ氏は問題点を具体的に示したうえで、日本政府からの詳しい説明と情報の提供も下記のように明快に求めていた(青い字で記す)。

人権理事会から与えられた権限のもと、私は担当事件の全てについて事実を解明する職責を有しております。つきましては、以下の諸点につき回答いただけますと幸いです。

  1. 上記の各主張の正確性に関して、追加情報および/または見解をお聞かせください。
  2. 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の改正法案の審議状況について情報を提供して下さい。
  3. 国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください。
  4. 法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください。」

しかもケナタッチ氏は、最近の日本における状況を踏まえて次のように結んでいた。

最後に、法案に関して既に立法過程が相当進んでいることに照らして、これは即時の公衆の注意を必要とする事項だと考えます。したがって、閣下の政府に対し、この書簡が一般に公開され、プライバシーに関する権の特別報告者のマンデートのウェブサイトに掲載されること、また私の懸念を説明し、問題となっている点を明らかにするために閣下の政府と連絡を取ってきたことを明らかにするプレスリリースを準備していますことをお知らせいたします。

 閣下の政府の回答も、上記ウェブサイトに掲載され、人権理事会の検討のために提出される報告書に掲載いたします。/ 閣下に最大の敬意を表します。」

*   *   *

こうして、「共謀罪」法案をめぐる日本政府の見解が全世界に向けて公表されることを国連特別報告者・ケナタッチ氏があらかじめ断っていたにもかかわらず、安倍政権は最近の国会で野党からの質問に対するのと同じようなやり方で、特別報告者からの丁寧な要望に対して全く回答しなかったばかりか情報も提供せずに、内政干渉であるかのごとき抗議の書簡を送りつけた。

本稿の視点から注目したいのは、その抗議文に対して国連特別報告者が、冒頭に掲げたオリンピック開催問題にも言及しながら、次のように厳しい反論を安倍政権に突きつけたことである。

日本政府は、これまでの間、実質的な反論や訂正を含むものを何一つ送付して来ることが出来ませんでした。いずれかの事実について訂正を余儀なくされるまで、私は、安倍晋三内閣総理大臣に向けて書いた書簡における、すべての単語、ピリオド、コンマに至るまで維持し続けます。

日本政府がこのような手段で行動し、これだけ拙速に深刻な欠陥のある法案を押し通すことを正当化することは絶対に出来ません

戦前の価値観の復活を目指す「日本会議」に支えられている安倍政権の閣僚たちにとっては、国連特別報告者からのこのように厳しい反論も野党からの批判と同じように無視すればよく、官僚と報道機関を握っていれば国内の反対は押さえられると感じているように思える。

たしかに、国会で3分の2以上の議席を持つ自民・公明・維新の3党が参議院でも一致すれば、この法案も強行採決すれことができるだろう。しかし、国連の特別報告者デビット・ケイ氏やケナタッチ氏の指摘や報告の内容は、安倍政権の強圧的な対応によっていっそう説得力のあるものとなり、ベルリン・オリンピックの悲劇を体験している国際社会は「リットン報告書」の時と同じような対応を取らざるをえなくなるだろう。

ヒトラー、オリンピック安倍マリオ、東京経済

(ベルリン・オリンピックの開会式でオリンピック旗に敬礼するアドルフ・ヒトラー。1936年8月1日。出典はサイト「ホロコースト百科事典」)(出典は「東洋経済.net」)

それゆえ、ジャーナリストの保坂展人・世田谷区長が提案しているように、「参議院審議の前に、ケナタッチ氏の指摘を直接聞くことは必須だろう」。

「共謀罪」法案を強行採決することは東京オリンピック開催の消滅につながると私は考えている。

 

参考資料:「東京新聞」「朝日新聞」「毎日新聞」及び「民進党広報局」作成の下記の文書

プライバシーに関する権利の国連特別報告者 ジョセフ・ケナタッチ書簡全訳

ジョセフケナタッチ書簡解説(海渡雄一弁護士)

官房長官の声明に対する反論(日本訳)

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「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性(1)――1940年との類似性(加筆版)

オリンピックを招致する時点では、「世界有数の安全な都市」と断言していた安倍首相が「共謀罪 成立なしで五輪開けない」と語ったことを報じた「東京新聞」の記事を読んだ際には、むしろ、安倍政権が「東京五輪のテロ対策」を名目に「共謀罪」を強行採決するような場合は、「オリンピック憲章」に反する法律として国際社会に訴えれば、「開催権」が剥奪されるのではないかとの感想をツイッターに記した。

なぜならば、高市総務大臣「電波停止」発言など、政権による報道への圧力の問題を調査した国連の「報道の自由」特別報告者デビット・ケイ氏は、度重なる会見の要求を高市氏に拒まれた後で外国人記者クラブで記者会見を行い、秘密保護法やパスポート強制返納などについても安倍政権を強く批判していたからである。

しかも、ヒトラーはベルリン・オリンピックの間に戦争への準備を行っていたが、麻生副総理は憲法改正論に関してナチス政権の「手口」を学んだらどうかと発言しており、「電波停止」発言をした高市氏も1994年には『ヒトラー選挙戦略現代選挙必勝のバイブル』に推薦文を寄せていた。

衆院法務委員会で自民・公明・維新の三党により強行採決された「共謀罪」法案についても、プライバシーの権利に関するケナタッチ国連特別報告者が18日付の安倍晋三首相宛て書簡で、〈法案にある「計画」や「準備行為」の定義があいまいで、恣意(しい)的に適用される可能性があると指摘。いかなる行為が処罰の対象となるかも明記されておらず問題がある〉との強い懸念を示していたことが明らかになった。

19日の「毎日新聞」デジタル版に載ったこの記事を受けて早速、「恥ずかしい首相だ」との感想がツイッターに載ったが、国連特別報告者が「共謀罪」法案について強い懸念を示す書簡を送っていたにもかかわらず、「共謀罪」を強行採決した安倍政権は、早晩、国際社会から「開催権」が剥奪される可能性がむしろ高くなったと思われる。

「東京新聞」も20日の一面で国連特別報告者ケナタッチ氏が「共謀罪」法案に対し、18日付けの書簡で首相に対して、「法案で対象となる犯罪が幅広くテロリズムや組織犯罪と無関係のものを含んでいると指摘」していたことを大きく取り上げている。

共謀罪、東京新聞共謀罪、東京新聞2

(図版は「東京新聞政治部」、5月20日と21日のツイッター記事より)

残念ながら、日本ではいまだに国際社会から批判されている「日本会議」に支持された安倍政権が強行採決した「共謀罪」法案を賛美している新聞や、いわゆるネトウヨの影響力が強い。

しかし、「東京新聞」は今日の「こちら特報部」で、トランプ氏から名指しで「口撃」されたNYタイムズやCNNなどが、軒並みに大幅に購読者数を伸ばしていることを指摘し、アメリカでは「偽ニュース」が増えたことから、その対策として事実を正しく伝えようとすることで「権力の暴走を防ぐ良質な報道の重要性が再認識された結果だと思う」というニューヨーク在住のジャーナリストの言葉を紹介している。

「これだけの重要法案の採決にもかかわらず、NHKの生中継」がなかったことを伝えた「日刊ゲンダイ」は、「首相出席による締めくくり質疑を行わないまま、異例の採決となった理由は明白である」として、「安倍は加計学園疑惑の追及から逃げたのだ」と記している。

安倍首相の「加計学園」問題にも目をつぶって批判もできないように見える自民党と「古代復帰」を目指す維新ばかりでなく、かつては「平和の党」を自称していた公明党も、「安倍政権」が委員会で強行採決した「共謀罪」に対する国際社会の強い懸念から目を背けているように見える。

*   *   *

一方、「ウィキペディア」の記述によれば、1940年に日本の首都・東京でオリンピックを開催することは、1936年(昭和11年)の国際オリンピック委員会(IOC)で決定し、それ以降は開催に向けた準備が進められていた。しかし、翌年の7月に勃発した盧溝橋事件から「日中戦争」に拡大すると陸軍が選手選出に異論を唱えるようになった。

さらに、1938年(昭和13年)3月にエジプトのカイロで開催されたIOC総会前には、イギリスやオーストラリアだけでなく、フィンランドからも中止を求める声が上がっており、中華民国からの開催都市変更の要望も出ていたばかりでなく、アメリカ人のIOC委員は東京大会のボイコットを示唆して委員を辞任した。

このような状況を踏まえて日本政府はその年の7月に実施の中止を決定したのだが、国際社会からの厳しい批判の背景には1931年の満州事変の翌年に国際連盟が派遣したリットン調査団の報告書(対日勧告案)が提出され、ジュネーブで開かれた1933年の国際連盟特別総会で、満州における日本の利権が認められなかったとして日本首席全権の松岡洋右が会議場から立ち去り、その年に日本は脱退を表明していたことがあると思われる。

しかも、国際連盟の会議場から決然と立ち去ったことにより日本を国際社会から孤立化させた松岡洋右は、国内では称賛を浴びて「国民精神作興、昭和維新」を唱え、近衛内閣で外相に任命されるとナチスドイツとの同盟を結んで日本を悲劇に追い込むことになるのである。

東京オリンピック1940松岡洋右

(幻に終わった1940年の東京オリンピックのポスター、ドイツ総統官邸でヒトラーとの会談に臨む松岡。図版は「ウィキペディア」より)

「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性関連記事

「共謀罪」はテロの危険性を軽減せず、むしろ増大させる悪法――国連特別報告者の批判を踏まえて

(2)ベルリン・オリンピックとの「際立つ類似点」

(3)G7サミットでの安倍発言と政府の対応をめぐって 

4)安倍首相の「国連特別報道者」非難発言と日本の孤立化

「特定秘密保護法」案の強行採決と日本の孤立化関連記事

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化

「特定秘密保護法案」の強行採決と日本の孤立化Ⅱ

(2017年5月22日、23日、26日、一部訂正加筆し副題を追加。6月15日、リンク先を追加)

俳優・中村敦夫氏のライフワーク、朗読劇「線量計が鳴る」全国上演のお知らせ

元・原発技術者と木枯し紋次郎――朗読劇「線量計が鳴る」を観る 

俳優・中村敦夫氏のライフワーク、朗読劇「線量計が鳴る」の全国上演が始動しています。「公式サイト・中村敦夫」より、朗読劇の内容と上演スケジュールを以下に転載します。

中村敦夫 公式サイト(上演スケジュール)

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原発の町で生れ育ち、原発で働き、原発事故ですべてを奪われた。

これは天命か、それとも陰謀か?老人は、謎解きの旅に出る。

中村敦夫、公演2

(←画像をクリックで拡大できます)

ー内容についてー

形式  一幕四場の出演者一人による朗読劇。

元・原発技師だった老人の独白が展開されます。

二場と三場の間に十分間の休憩。

それを入れて、計二時間弱の公演です。

背景にスクリーンがあり、劇中の重要なワードなどが、 映写されます。

他の舞台装置は不要。

物語

一場 原発の町で生れ育ち、原発で働き、そして原発事故で すべてを失った主人公のパーソナル・ヒストリー(個人史)

二場 原発が作られ、日本に入ってきた事情。 原発の仕組み。福島事故の実態。

三場 主人公のチエルノブイリ視察体験。 被曝による医学上の諸問題と現実。 放射線医学界の謎。

四場 原発を動かしている本当の理由。 利権に群がる原子力村の相関図。

継承者歓迎  当初は中村敦夫が朗読しますが、多くの朗読者が、 全国各地で名乗りを上げ、自主公演が増加するこ とを期待します。   

 

朗読劇「線量計が鳴る」の主な紹介記事(2017年6月11日現在)

4月29日 「毎日新聞」 インタビュー:朗読劇で原発廃止訴え 俳優・中村敦夫さん – 毎日新聞

5月8日 「山梨日日新聞」 中村敦夫さん、原発テーマに朗読劇 via 山梨日日新聞 –

5月12日 「朝日新聞」デジタル 熊本)原発を考える 25日中村敦夫さん朗読劇:朝日新聞デジタル

6月11日「日刊ゲンダイ」 中村敦夫「避けられない問題」 – 日刊ゲンダイDIGITAL

2018年6月10日 「毎日新聞」ストーリー:俳優・中村敦夫78歳の挑戦(その1) 舞台から「原発」問う 

(2018年6月10日、改訂)

 

「森友学園」問題と「教育勅語」そして中学での「銃剣道」――安倍政権の「戦前の価値観」への明確な回帰

「森友学園」問題は幼稚園児に「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」と記された「教育勅語」を暗唱させている映像がテレビでも放映されたことが視聴者の関心を引いたこともあり、世論を動かすような事態となった。

しかし、安倍政権(ほとんどの閣僚が「日本会議」や「神道政治連盟」の「国会議員懇談会」に所属している)は、このような状況を政治利用する形で、憲法や教育基本法に反しない形での教育勅語の教材活用を否定しないとした政府答弁書を作成した。

そして、菅官房長官は 「教育勅語」について「親を大切にとか、兄弟姉妹仲良くとか、教育上支障のないことを取り扱うことまでは否定しない。適切な配慮の下、教材使用自体に問題はない」と説明した(なお、育鵬社の歴史教科書が政府見解を先取りするように「教育勅語」を肯定的に論じていることがツイッターに記されている)。

これに対しては朝日新聞が「この内閣の言動や思想をあわせ考えれば、今回の閣議決定は、戦前の価値観に回帰しようとする動きの一環とみなければならない」と厳しく批判し、毎日新聞も4日付朝刊で「戦前回帰 疑念招き」「安倍政権 保守層に配慮」との見出しを掲げた。

東京新聞も「戦前回帰の動きとすれば、封じ込めねばならない。安倍政権は、教育勅語を道徳教育の教材として認める姿勢を鮮明にした。個人より国家を優先させる思想である。復権を許せば、末路は危うい」との社説を5日に掲載した。

一方、「教育勅語を全否定する野党と一部メディアの大騒ぎ それこそ言論統制ではないか」と題する署名入りの記事でこれらの批判記事を紹介した産経新聞は、ことに朝日新聞が「おどろおどろしく断じていた。まさに『妄想』全開である」と小説『永遠の0(ゼロ)』の文章を連想させるような激しい言葉で批判した。さらに「教育勅語の排除と失効確認の決議はGHQ(連合国軍総司令部)の統治下に行われた」と「日本会議」と同じような主張を記して記事を結んでいる。

しかし、宗教学者の島薗進氏が『国家神道と日本人』で明らかにしていたように、「国家神道は教育勅語煥発以後、公的精神秩序の規範として次第に国民生活を蔽っていくようになり、諸宗教・思想はそれを受け入れた上で限定的な『信教の自由』を享受するという宗教・思想の二重構造が成立」していた。

そのような状況で「教育勅語」は絶対化されて、職員室や校長室に設けられた奉安所は、社や神殿のような荘厳な奉安殿となり、配属将校のもとで軍事教練を繰り返させられた若者たちは、「徹底した人命軽視の思想」(『永遠の0(ゼロ)』)によって行われていた悲惨な戦争へと駆り出されることになったのである。

たとえば、ツイッターで下記の写真を紹介した津川ともひさ氏(@TsugawaTomohisa)は、「かの人たちのイメージする『人づくり』はまさに下の写真の通り。1942年5月、東京中目黒国民学校の軍事教練。御真影と教育勅語を収めた軍事教練の前で銃剣をかついだ子どもたちに「かしらーツ、みぎツ」の号令が。」と書いている。

奉安殿2(←画像をクリックで拡大できます)

(写真は『別冊一億人の昭和史 学童疎開』(1977年9月15日 毎日新聞社、56~57頁より)

私はこのような方向性を教育界だけでなく文学界でも決定づけたのが、「教育勅語」の渙発の翌年の1月に起きた内村鑑三の「不敬事件」であり、その後に起きた「教育ト宗教ノ衝突」論争や「人生相渉論争」だっただろうと考えている。

それについてはこのホームページでもすでに言及しているので、ここでは先に公開された陸上自衛隊の新たなエンブレムと、公立中学校の「森友学園」化の危険性を示唆している図版を2点挙げるにとどめる。

陸上自衛隊、エンブレム銃剣道2

集団銃剣道を演ずる私学校の生徒(1942年、写真は「ウィキペディア」より)

これらの図版は「積極的平和主義」を掲げつつ、広島・長崎だけでなく福島の悲惨な経験を反省することなく、原発産業や軍需産業に肩入れして戦争に突き進んでいる安倍自公政権の「戦前復帰的な」価値観を雄弁に物語っていると思えるからである。