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ドストエーフスキイの会「第228回例会のご案内」

「第228回例会のご案内」を「ニュースレター」(No.129)より転載します。

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今回は『広場』 24号の合評会となりますが、論評者の報告時間を10分程度とし、エッセイの論評も数分に制限して自由討議の時間を多くとりました。

記載されている以外のエッセイや書評などに関しても、会場からのご発言は自由です。

多くの皆様のご参加をお待ちしています。

日 時: 2015年7月25日(土)午後2時~5時

場 所:千駄ヶ谷区民会館第一会議室(JR原宿駅下車徒歩7分)

℡:03―3402―7854

 

掲載主要論文とエッセイの論評者

福井論文:小林秀雄、戦後批評の結節点としてのドストエフスキー

― ムイシュキンから「物のあはれ」へ ――冨田陽一郎氏 

堀論文:ドストエフスキーへの執念が育んだ〈絆〉

― 黒澤明とアンドレイ・タルコフスキー ―― 船山博之氏

きむ論文:スヴィドリガイロフのラヴ・アフェアー  ――小山

木下論文:小林秀雄とその同時代人のドストエフスキー観 ――大木昭男氏

エッセイ:原口美早紀、松本賢信、森和朗、西野常夫、山本和道、長瀬隆の

各氏のエッセイ――熊谷のぶよし、木下豊房、福井勝也、高橋誠一郎氏その他

司会:近藤靖宏氏

*会員無料・一般参加者-500円

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例会の「傍聴記」や「事務局便り」などは、「ドストエーフスキイの会」のHP(http://www.ne.jp/asahi/dost/jds)でご確認ください。

IAEA報告書による国と東電の批判と政治家の責任

ここのところ、「新たな安全保障関連法案」をめぐる国会での議論に注目していたために記述が遅れましたが、国際原子力機関(IAEA)が東京電力福島第1原発事故を総括した最終報告書で、東電や日本政府が大津波に対する実効的な対策を怠っていただけでなく、「国際的な慣行」にも十分従っていなかったことも厳しく批判していたことが先月の24日に判明しました。

Earthquake and Tsunami damage-Dai Ichi Power Plant, Japan

(2011年3月16日撮影:左から4号機、3号機、2号機、1号機、写真は「ウィキペディア」より)

このことを記した「東京新聞」の記事は、福島の事故後に中東のヨルダンでは「原発の建設予定地を地震が少ない場所に変更」したことも伝えていましたが、地震国である日本ではどのような措置が取られているのでしょうか。

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今日の「東京新聞」は日本年金機構から個人情報が流出した問題について、11日の参院内閣委員会で安倍晋三首相と自身の閣僚としての給与返上の意向を問われた菅義偉官房長官が「政府として責任を感じているので、当然検討したい」と答えたことを伝えています。

これは政治家として「当然」のことと思われますが、実効的な対策を怠り、「国際的な慣行」に十分従っていなかったために起きたと国際機関から指摘された福島第一原子力発電所事故の問題は、「年金機構から個人情報が流出」したことよりもはるかに大きいと思えます。

政府・与党の幹部はこの問題については、すでに時間が経ったので「蓋をしたい」と考えているようですが、日本の自然地理的環境を無視して原発を推進し、今も進めている安倍首相をはじめとする政府与党の幹部や官僚には、「給与の返上」では済まない、「重大な責任」があるでしょう。

 

菅官房長官の詭弁と「道義心」の低下

昨日のブログでは、「衆議院憲法審査会で行われた参考人質疑では、民主党推薦や維新の党推薦の2人の憲法学者だけでなく、自民党、公明党、次世代の党が推薦した学者も含めて3人の参考人全員」が、安倍政権による「新たな安全保障関連法案」を「憲法違反」との見解を示したことを受けて、少しきつい表現ですが、〈衆議院憲法審査会の見解と安倍政権の「無法性」〉と題した記事を書きました。

しかし、その後の国会討論ではさらに驚くべき発言が政府高官によりなされたようです。

すなわち、今日の「東京新聞」朝刊によれば、4日の記者会見の際には合憲派の憲法学者は「たくさんいる」と発言していた菅義偉(すがよしひで)官房長官が、10日に行われた衆院特別委員会では、前言を翻して「私自身が知っているのは十人程度」とし、具体的には3人の名前しか示さなかったのです。

一方、自ら実名を出してこの法案が「憲法違反」との考えを示した憲法学者の数は、昨日現在で200名を超えています。「たくさんいる」と明言したにもかかわらず3人の実名しか出せず、意見とする研究者の主張は「一方の見解だ」と切り捨てることは、子供が考えても通じるはずのない「詭弁」であり、「お仲間」の間でのみ通じるにすぎません。

一国の政治を司る政治家たちによるこのような発言が続けば、国際社会において「日本人」の発言は説得力を失う危険性さえ孕んでいると思えます。

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「東京新聞」のデジタル版は、自民党衆院議員の村上誠一郎元行政改革担当相が10日、共同通信の取材に応じて、「法案は違憲」との憲法学者の指摘を受け入れない政府と自民党を「あまりにも傲慢。自分たちが法律だとでもいうような姿勢は民主主義ではなく、立憲主義も危うくなる」と批判したことを伝えています。

「国民」の「道義心」や「教育」にかかわる政府高官の「詭弁」的な発言はきびしく問われねばなわないでしょう。

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(1)

800px-Atomic_cloud_over_Hiroshima

(広島に投下された原爆による巨大なキノコ雲(米軍機撮影)。キノコ雲の下に見えるのは広島市街、その左奥は広島湾。画像は「ウィキペディア」による)

 

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(1)――「沈黙」という方法と「道義心」

『ヒロシマわが罪と罰――原爆パイロットの苦悩の手紙』(G・アンデルス、C・イーザリー著、篠原正瑛訳、筑摩書房)と題された翻訳書が発行されたのは、世界が核戦争による破滅に瀕したキューバ危機が起こる2ヶ月前の1962年8月のことでした。

「人間の進歩について」と題して1948年に行われた物理学者の湯川秀樹博士との対談で、文芸評論家の小林秀雄氏は「原子力エネルギー」を産み出した「高度に発達した技術」の問題を「道義心」の視点から厳しく批判していました。

私はそのことから強い感銘を受けていたので、小林氏が原爆パイロットの「良心の苦悩」が描かれているこの著作にも当然、強い関心を払い、言及しているだろうと考えていました。しかし、私の探し方が不十分なのかも知れませんが、まだこの著書に言及した書評や評論を見つけていません。

知っている方がおられたらお教え頂ければありがたいのですが、この問題に対しても小林氏は前回も指摘した「沈黙」という方法で素通りしてしまったように見えます。

この著作と小林氏の「良心観」との考察は、ある程度まとまってから「主な研究」の頁に一挙に掲載することも考えました。

しかし、福島第一原子力発電所の事故の後で原発の格納機の中の核燃料がどうなっているかが、わからないにもかかわらず原子力規制委員会によって原発の再稼働が認められた現在、この問題は切実さを増しているように思えます。

「道徳」の視点からも重要なので、暇を見つけて、このブログに少しずつ発表することにします。

リンク→小林秀雄の『罪と罰』観と「良心」観

 リンク→小林秀雄の原子力エネルギー観と終末時計

関連記事一覧

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(2)

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(3)

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(4)

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(5)

アインシュタインのドストエフスキー観と『カラマーゾフの兄弟』

(2015年6月18日、写真と副題を追加。2016年1月1日、関連記事を追加)

 

 

「アベノミクス」と「年金情報流出」の隠蔽

2015年6月3日の「東京新聞」は、「個人情報約百二十五万件が外部流出した」にもかかわらず、情報の隠蔽がなされていたことを次のように伝えていました。

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「年金情報流出で国会集中審議 対応遅れ、厚労省を追及」

日本年金機構がウイルスメールによる不正アクセスを受け、個人情報約百二十五万件が外部流出した問題で、衆院厚生労働委員会は三日、集中審議を開き、野党側は「最初に不正アクセスを確認した五月八日に抜本的な対策をとっていれば、空前絶後の情報流出はなかった」などと、監督官庁の厚生労働省の責任を追及した。また塩崎恭久厚労相の責任問題について、民主党の枝野幸男幹事長は「近い将来、そういう話になる」などと言及した。国会内で記者団に述べた。

与党は当初、この日の厚労委で、労働者派遣法改正案の質疑を求めたが、情報流出の実態解明を優先すべきだとの野党の主張を受け入れた。質問した民主党の大西健介氏は「この問題で一定の対策がとられない限り、ほかの法案審議はできない」と強調。その上で最初に不正アクセスがあった五月八日から今月一日に公表されるまで三週間以上要したことについて「もっと早く公表し、注意喚起できたのではないか」とただした(後略)。

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この記事は2013年の参議院議員選挙の前に、放射能汚染水の流出の「事実」を東電社長が「3日前に把握」していたにもかかわらず、そのことが発表されたのが選挙後であったことを思い起こさせます。

こうした一連の事態は安倍政権の「隠蔽」体質を物語っていると思われ、今回の安倍政権が明治維新後に成立した「薩長独裁政権」と同様に、日本「国民」の生命や健康や生活にほとんど関心がなく、大企業と一部のお仲間の利益のみを重視しているように感じられます。

大規模な地殻変動によって国土が誕生した日本で、再び火山活動が活発化していることが指摘されているにもかかわらず、原発の推進や日本の軍国化を進めている安倍政権はきわめて危険だと思えます。

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以前に書いたように、経済学の専門家でない私が「アベノミクス」の問題点を論じても説得力は少ないだろうとの思いは強いのですが、この問題は「国民」の生活や生命にも重大な影響を及ぼすと思えます。

次の世代に対する責任を果たす上でも、これからもこのブログで指摘していきたいと考えていますので、以下にこれまでの記事のリンク先を示しておきます。

アベノミクス(経済至上主義)の問題点(1)――株価と年金2014年11月25日

「アベノミクス」と原発事故の「隠蔽」12月1日

アベノミクス(経済至上主義)の問題点(2)――原発の推進と兵器の輸出入12月3日

「アベノミクス」とルージンの経済理論12月7日(*ルージンは『罪と罰』に登場する利己的な中年の弁護士)

「ロシア史関連年表」Ⅰを「年表」のページに掲載

「年表」のページに「年表1」として、「ロシア史関連年表」を掲載しました。

「キエフ・ロシアとギリシャ正教の受容」と題したⅠでは、ロ-マ帝国がキリスト教を公認した313年から、1240年のモンゴル軍によるキエフの破壊までをまとめました。

 

「劇団俳優座の《野火》を見る」を「映画・演劇評」に掲載

山城むつみ氏の『小林秀雄とその戦争の時――「ドストエフスキイの文学」の空白』について論じた書評の注で、大岡昇平の『野火』を舞台化した劇団俳優座の《野火》を論じた劇評に言及しました。

『ドストエーフスキイ広場』第16号に掲載された短い劇評を「映画・演劇評」のページに掲載します。

メルケル首相の苦言と安倍政権

福島第一原子力発電所での大事故の後では、この事故の大きさに衝撃を受けたドイツやイタリアなどでは脱原発という大きな決断がなされました。

しかし、火山の噴火が続いているだけでなく、近い将来に大地震が起こることが予測されている日本で、安倍政権は国民レベルでの議論や国会での討議もないままに、原発の再稼働を強引に進めて、原発の輸出さえも決めました。

しかも、安倍首相は「汚染水はアンダーコントロール」と国際社会に公言しましたが、先月の24日には「東京電力が、福島第一原発の排水溝から高濃度の放射性物質を含む水が外洋に漏れ続けるのを放置していたこと」が判明しました。東京電力は「外洋への継続的な漏出を昨年四月に把握しながら公表せず、排水溝を専用港内に付け替えるなどの対策も取っていなかった」のです(「東京新聞」2月25日)。

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福島第一原子力発電所の大事故から4年目を迎えた3.11の直前に来日したドイツのメルケル首相は、国際社会を困惑させていると思われる安倍政権の二つの政策について、オブラートにつつんだ形ではありましたが明確に指摘していました。

第一点はドイツが第二次大戦後「過去ときちんと向き合った」ことで、国際社会に受け入れられたとの考えを示して、安倍政権の「歴史認識」の問題点を指摘したことです。

さらに、目先の利益に囚われて「国民の生命」だけでなく世界の安全を危険にさらしているとも思われる安倍政権の原発政策についても、「日本という高い技術水準の国でも予期しない事故が起こりうると分かったからこそ、自国での『脱原発』を決めた」と発言して、政策の転換を暗に求めていたのです(「東京新聞」、3月9日)。

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籾井会長のもとで安倍政権の「御用放送」と化した観のあるNHKのニュースからでは伝わらなくなっていますが、私は日本の孤立化が深まっているのではないかという危惧の念を強めています。

外国の要人からの指摘や「国民」の考えを無視して強引に自分の考えを推し進める安倍政権の政策については、戦前の日本と同じような悲劇の再現とならないようにこれからも注視していかなければならないでしょう。

〈「不思議の国」ロシア〉のページを開設

 

現在、ホームページの改訂作業を行っています。

今回の大きな目的は講義の予習や復習にも役立つように、〈「不思議の国」ロシア〉のページを開設したことです。

 〈「不思議の国」ロシア〉へのリンク先→ 0、このページの題名と構成

それに関連していくつかのページの合併などを行いました。改訂作業が終わるのは3月末になるものと思われます。