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「新国立」の責任者は誰か(2)――「無責任体質」の復活(5)

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前回は少しフライング気味の記事を書いてしまったかと少し案じていましたが、やはり「新国立」の建設計画の裏には莫大な利権があったようです。

リンク→「新国立」の責任者は誰か――「無責任体質」の復活

『毎日新聞』8月7日付の記事や『週刊新潮』8月13日・20日号の特集記事に続いて『リテラ』が、森元首相の不正とかつての派閥の親分に尽くす安倍首相の問題に鋭く深く切り込んでいました。その記事へのリンク先lite-ra.comとリード文を以下に記しておきます(8月11日)。

 

新国立競技場の不正が次々判明! 森元首相に施工業者の …

13 時間前 – 親分子分でめちゃくちゃに(左・安倍晋三公式サイトより/右・森喜朗公式サイトより) ザハ案の白紙見直しが決まった新国立競技場だが、一方で、ここまでの混乱を生んだ裏に、政府と政治家の詐欺的とも言える不正工作があったことが、 …

 

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「戦前の無責任体系」の復活と小林秀雄氏の『罪と罰』の解釈

 

 

川内原発の再稼働と新聞『小日本』の巻頭文「悪(にく)き者」

Earthquake and Tsunami damage-Dai Ichi Power Plant, Japan(←画像をクリックで拡大できます)。

(2011年3月16日撮影:左から4号機、3号機、2号機、1号機、写真は「ウィキペディア」より)

 

川内原発の再稼働と新聞『小日本』の巻頭文「悪(にく)き者」

原子力規制委員会は「周辺に活火山群がある鹿児島県の九州電力川内原発について、新規制基準にかなうと判断」していましたが、この判断に従って九州電力は川内原発1号機の原子炉を明日、再稼働させると発表しました。

また、菅官房長官は10日の記者会見で「第一義的には責任は事業者にあるが、万が一事故が起きた場合、国が先頭に立って原子力災害への迅速な対応や被災者への支援を行っていく」と語ったとのことです。

しかし、福島第一原子力発電所の大事故がいまだに収束してはおらず、原子力災害の被災者への十分な対応もできていない現状を考慮するならば、菅氏の説明はほとんど説得力を持っていないように見えます。

川内原発の再稼働の危険性については、〈御嶽山の噴火と川内原発の再稼働――映画《夢》と「自然支配」の思想で詳しく考察しましたが、記者会見での安倍首相と菅官房長官の言葉から思い出したのは、「功労なくして顕地に立ち、器識なくして要路を占め、天を畏れず、人に省みず、政事家気取をなす者の面、悪(にく)むべし。」という新聞『小日本』に記された子規の言葉でした。

圧倒的な権力を有した当時の薩長藩閥政府の「新聞紙条例」や「讒謗律」にもかかわらず、敢然と権力の腐敗を厳しく批判した新聞記者としての子規の文章には、圧倒されるような気迫があります。俳句を改革した子規の業績もこのような新聞人として現実の直視から生まれているのではないかと思います。

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』の執筆を少し先送りしてでも、「戦争法案」の成立を阻止するためにブログの記事を私が書き続けていることも、子規の気迫に促されているところもあるようです。

今回は変体仮名を標準的な平仮名に直して、明治27年3月23日の新聞『小日本』の巻頭を飾っている「悪(にく)き者」という一連の文章の前半を紹介することにします。

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館)

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館)

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 悪(にく)き者

○権謀術数は兵事に於てこそ尚(たつと)ぶ可(べ)けれ、政事就中(なかんづく)内治(ないぢ)の上に用ふ可(べ)きものに非ず。然るに今の政事社会には内治の上に之を振回(ふりまわ)し、したり顔する政事家少なからず。悪(にく)むべし。

○制を矯め命(めい)を偽はりて一世に我物顔(わがものがほ)に振舞ふ者は、悪(にく)む可(べ)き者の骨頂なり。

○正常の手段もて正常の業(げふ)を営み、富(とみ)を致してこそ名誉はあれ、人間の恥といふものを忘れ、人を欺き他を困(くるし)め、不義の財を貪り積みて扨(さて)紳商と高ぶるしれ者多し、悪(にく)むべし。

○勢家の意を迎へ、権門の心に投し、例を欧米に求めて虐政を幇(たす)け、言を英国に托して暴制を設けしめ、 才子を以て自ら居る者、学校出身の若手にまゝあり、悪(にく)む可し。

○功労なくして顕地に立ち、器識なくして要路を占め、天を畏れず、人に省みず、政事家気取をなす者の面、悪(にく)むべし。

(2015年12月22日、2017年6月5日。写真を追加)

安倍晋三首相の公約とトルーマン大統領の孫・ダニエル氏の活動――「長崎原爆の日」に(2) 

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(長崎市に投下されたプルトニウム型原爆「ファットマン」によるキノコ雲。画像は「ウィキペディア」)。

 

長崎も9日、米軍が原爆を投下してから70年を迎えました。ここでは「東京新聞」の記事によりながら、長崎市の平和公園で行われた平和祈念式典で語られた市長や被爆者の言葉をまず確認します。

その後で、原爆投下を命令したトルーマン大統領の孫ダニエル氏の場合と比較することにより岸信介首相の孫である安倍首相の公約の意味を考察することにします(太字は引用者)。

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田上富久市長は平和宣言で安全保障関連法案について「70年前に心に刻んだ誓いが、日本国憲法の平和の理念が、今揺らいでいるのではないかという不安と懸念が広がっている」と指摘しました。

注目したいのは、安倍晋三首相が今年から来年にかけて長崎や広島で主要7カ国(G7)外相会議など国際会議を開くことに触れて、「被爆地から我々の思いを国際社会に力強く発信」していくと述べつつも、被爆地の市長が求めた「安全保障関連法案」の「慎重で真摯(しんし)な審議」にはまったく触れなかったことです。

被爆者代表の谷口稜曄さん(86)は平和への誓いで「今政府が進めようとしている戦争につながる安保法案は、被爆者をはじめ平和を願う多くの人が積み上げてきた核兵器廃絶の運動、思いを根底から覆すもので、許すことはできない」と安倍首相と与党を厳しく批判していました。

実際、核兵器の使用も公言しているばかりでなく、「イラク戦争」に際しては多量の「劣化ウラン弾」を使用していたアメリカ軍の「後方支援」に当たることを可能とするこの法案を強引に成立させることは、「国際社会の核軍縮の取り組みを主導していく」という首相自身の言葉を裏切ることになるでしょう。

*   *   *

この意味で注目したいのは、「核兵器は残虐で人道に反する兵器です」と語った被爆者代表の谷口氏が、「廃絶すべきだということが、世界の圧倒的な声になっています」と続けていたことです。

実際、8月6日放送された「報道ステーション」によれば、トルーマン大統領の孫で幼い頃から「原爆は正義」と教わってきたダニエル氏も、原爆で白血病になり12歳でなくなった佐々木禎子さんの物語『禎子と千羽鶴』を読んだことから、トルーマン大統領の孫としてできることはこの悲惨な状況を多くのアメリカ人に伝えることだと気づいたのです(トルーマンの孫としていま-」、テレビ朝日「報道ステーション」)。

アメリカだけではなく、過去最多の75カ国から大使らが出席したこの「平和式典」で、岸信介首相の孫である安倍首相が「『核兵器のない世界』の実現に向けて、国際社会の核軍縮の取り組みを主導していく」と約束したことは非常に意義深いことです。

世界への「公約」を誠実に実行するためには、「核武装」を公言している武藤貴也議員を処分するとともに、「安全保障関連法案」の問題点の「慎重で真摯な審議」をすることが不可欠と思われます。

 

リンク→原子雲を見た英国軍人の「良心の苦悩」と岸信介首相の核兵器観――「長崎原爆の日」に(1) 

リンク→「安全保障関連法案」の危険性(2)――岸・安倍政権の「核政策」

 

 

麻生財務相の箝口令と「秘められた核武装論者」の人数

武藤貴也衆院議員(36才)がツイッターで記した戦前の日本を彷彿とさせるような記述は非常に問題ですが、より大きな問題を孕んでいると思われるのは、「朝日新聞」のデジタル版によれば、麻生太郎財務相が8月6日の自民党麻生派の会合で、ツイッターでの記述などを念頭に「自分の気持ちは法案が通ってから言ってくれ。それで十分間に合う」と語ったことです(太字は引用者)。

麻生氏のこの発言は、さまざまな問題が指摘され、実質的には「戦争法案」の疑いがますます濃くなってきている「安全保障関連法案」の実態を隠そうとしているばかりでなく、「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs=シールズ)」の言動を「極端な利己的考えに基づく。利己的個人主義がここまでまん延したのは戦後教育のせいだろう」と決めつけるような歴史認識と道徳観を、この法案が通った暁には党として積極的に国民に押しつけることを明言しているとも思われるからです。

*   *   *

それとともにとても奇異に感じられるのは、「日本は自力で国を守れるように自主核武装を急ぐべきなのです」と主張し、その理由を「核武装のコストについては様々な試算がありますが、私は安上がりな兵器だと考えています」と記していた麻生派所属の武藤議員に対する何らの批判も行われていないことです。

そのことからは安倍首相や麻生氏が勢力を持つ現在の自民党では、「日本の核武装反対論は、論理ではなく感情的なもの」と考えて、「日本の核武装」を当然視する議員が少なからずいるのではないかと感じられます。

各新聞社は「国民の生命」だけでなく、近隣諸国の国民の生命をも脅かすような「戦争法案」の審議が行われている現在、早急にアンケートを行って武藤貴也氏のように「日本の核武装」を当然視する自民党員が何人いるかを明らかにすべきでしょう。

さらに与党としてこの法案を積極的に進めている公明党にもこの問題を明らかにする責任があると思われます。

*   *   *

核兵器だけでなく劣化ウラン弾の危険性や人道的な問題点については明らかなので記しませんが、「報復の権利」の危険性が全く考慮されていないことをここで指摘するにとどめておきます。

つまり、武藤議員が「安上がりな兵器だ」と考えている核兵器による攻撃は、かつての広島や長崎へ投下された原爆と同じように、一瞬にして「敵の軍隊」だけでなく、その周囲の市民を抹殺することができ、敵の戦意をくじいて一時的には戦争を勝利にみちびくことはできるでしょう。

しかし、人間の心理をも考慮に入れるならば、「兵器(安倍政権の用語によれば「弾薬」)」の威力による勝利は一時的なもので、使用されたことで敗北した民族や国家には暗い憎しみが生まれ、生き残った者の子や孫による「報復の戦争」が起きる危険性はきわめて高いのです。

卑近な例としては、「報復の権利」の行使としてブッシュ政権によって行われた「イラク戦争」こそが、アメリカに対する「報復」を主張してテロ行為を繰り返すISという国家の生みの親だった可能性が高いのです。この危険性を「戦争と文学 ――自己と他者の認識に向けて」と題した論考で示唆していましたが、文学作品にも言及したことで難しい展開となっていました。

「戦争法案」が可決される危険性がある現在の事態に対処するために、稿を改めて現在の状況をふまえつつもう少し分かりやすく、「正義の戦争」と「報復の権利」の危険性を説明したいと思います。

安倍首相の「核兵器のない世界」の強調と安倍チルドレンの核武装論

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(広島と長崎に投下された原子爆弾のキノコ雲、1945年8月、図版は「ウィキペディア」より)

 

安倍首相が広島市で行われた平和記念式典のあいさつで、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則に言及しなかったことが波紋を呼んでいます。

以下、新聞などの記事によって簡単に紹介した後で、安倍首相が本気で「核兵器のない世界」を願うならば、「わが国は核武装するしかない」という論文を月刊『日本』(2014年4月22日号)に投稿していた武藤貴也議員を参院特別委員会に呼んでその見解を質し、今も同じ考えならば議員辞職を強く求めるべき理由を記したいと思います。

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平和記念式典の後で行われた被爆者団体代表との面会では、安倍首相は「唯一の戦争被爆国として非核三原則を堅持しつつ、世界恒久平和の実現に向けた努力をリードすることを誓う」と述べ、これに関し菅官房長官も同日午前の記者会見で「非核三原則は当然のことで、考えにまったく揺るぎはない」と説明したとのことです。

しかし、これらの「誓い」や「説明」の誠実さに疑問が残るのは、すでに多くの新聞や報道機関が指摘しているように、その前日に行われた参院特別委員会で中谷元・防衛相が、戦争中の他国軍への後方支援をめぐり、核兵器を搭載した戦闘機や原子力潜水艦などへの補給は「法律上除外する規定はない」として、法律上は可能との認識を示す一方で、「非核三原則があり提供はありえない」とも述べていたからです。

枝野幸男・民主党幹事長が批判をしているように、武器輸出三原則などの大幅な緩和をしたばかりでなく、「弾薬は武器ではない、その武器ではないもののなかに、ミサイルも入る(と言う)。それに核弾頭が載っていてもそれが(輸送可能な弾薬の範囲に)入る」と説明した安倍内閣の閣僚が、「非核三原則があります、(だから輸送しない)と言っても、ほとんど説得力をもたない」でしょう。

さらに、被爆者団体代表との面会で安全保障関連法案が、「憲法違反であることは明白。被爆者の願いに背く法案だ」として撤回を強く求められた安倍首相は、「平和国家としての歩みは決して変わることはない。戦争を未然に防ぐもので、必要不可欠だ」と答えたようですが、すでに武器輸出三原則などの大幅な緩和をしている安倍首相が、「平和国家としての歩みは決して変わることはない」と主張することは事実に反しているでしょう。

*   *   *

今回の安倍氏の「あいさつ」で最も重要と思われるのは、秋の国連総会で新たな核兵器廃絶決議案を提出する方針の安倍首相が、「核兵器のない世界の実現に向けて、一層の努力を積み重ねていく決意」を表明し、来年のG7(主要七カ国)外相会合が広島で開かれることを踏まえて「被爆地からわれわれの思いを国際社会に力強く発信する」とも述べていたことです。

このこと自体はすばらしいと思いますが、国際社会に向けたパフォーマンスをする前に安倍首相にはまずすべきことがあると思われます。

それは安倍氏が本気で「核兵器のない世界」を願うならば、「わが国は核武装するしかない」という論文を月刊『日本』(2014年4月22日号)に投稿していた武藤議員を参院特別委員会に呼んでその見解を質し、今も同じ考えならば議員辞職を強く求めるべきことです。

参院特別委員会でも「安全保障関連法案」には多くの深刻な問題があることが次々と明らかになっているにも関わらず、「強制採決」に向けて粛々と審議が行われているように見えます。

しかし、国際社会にむけて未来志向の「美しい言葉」をいくら語っても、武藤議員の発言を厳しく問いただすことをしなければ、「日本を、取り戻す。」を選挙公約にした安倍政権の本当の狙いは、戦前の「日本人的価値観」と軍事大国の復活にあるのではないかという疑いを晴らすことはできないでしょう。

 

関連の記事一覧

武藤貴也議員の核武装論と安倍首相の核認識――「広島原爆の日」の前夜に

武藤貴也議員の発言と『永遠の0(ゼロ)』の歴史認識・「道徳」観

「広島原爆の日」と映画《モスラ》の「反核」の理念 

TPP交渉と安倍内閣――「無責任体質」の復活(2)

前回のブログ記事で、「安倍首相は吉田松陰とではなく、国民の意思に逆らってアメリカと日米修好通商条約に調印した大老・井伊直弼と同じような感覚の独裁者に近いと言わねばならない」と記しました。

リンク→安倍首相の吉田松陰観と井伊直弼の手法

安倍内閣がその具体的な内容を国民には伏せたままで行っているTPPの交渉が大詰めに来ているようです。

詳しく分析する時間的な余裕がありませんので、ここでは過去に書いたTPP関連の記事のリンク先を掲示しておきます。

*   *

リンク→TPPと幕末・明治初期の不平等条約

リンク→菅原文太氏の遺志を未来へ

 

「新国立」の責任者は誰か――「無責任体質」の復活

「新国立」の建設計画が白紙撤回されたことを受けて、文部科学省のスポーツ・青少年局長の辞職が28日に決まり、下村博文文科相は28日の会見で「定例の人事」と発表して更迭との見方を否定したとのとの記事が各紙に一斉に載りました。

それらの記事によれば、菅義偉官房長官は文科相が「総合的に検討し、判断された」と説明したとのことですが、野党から「トカゲのしっぽ切りだ」と責任回避の姿勢を批判する声が出たばかりでなく、与党内からも文科相の責任に言及する声が出始めているようです(太字は引用者)。

*   *

先のブログ記事では森元首相が22日の記者会見で「(責任の所在が)どこにあるのかというのは難しく、犯人を出してもプラスはない」と語ったことを受けた元法大教授五十嵐仁氏(政治学)の次のような批判を紹介していました。

政治思想史の丸山真男氏は、日本が無謀な戦争に突き進んだ理由として『無責任の体系』を挙げました。…中略…戦後70年の今も、同じく、無責任の体系が脈々と息づいているとしか思えません」。

*   *

一方、「新国立競技場」建設計画の白紙撤回の問題は国内のみならず、海外でも大きく取り上げられているようです。

「東京新聞」朝刊は、〈「無責任体質 大きく報道〉との大きな見出しで、英紙・「テレグラフ」は、「政権支持率下落する中でガス抜き」と指摘し、米紙・「ウォールストリートジャーナル」も「下村文科相の驚くべき変わり身」を指摘したことなど、「白紙撤回」の問題を世界の新聞が大きく取り上げていることを紹介していました。

このことを想起するならば、「新国立」白紙撤回の「責任」は、下村大臣や森元首相だけに留まるものでなく、彼らを重用した安倍首相にも及ぶと思われます。

しかも、安倍首相は実質的には原発事故による放射能「汚染水」問題が収束していないにもかかわらず、「アンダーコントロール」と世界に宣言していたのです。

勇ましい言葉で「国民」を煽る一方で、自分の発言に対しては責任を取ろうとしない下村文科相や菅官房長官、さらに安倍首相の「戦前と同じような思想」と「無責任体質」こそが問われるべき時期にきていると思えます。

リンク→「戦前の無責任体系」の復活と小林秀雄氏の『罪と罰』の解釈

リンク→安倍政権の経済感覚――三代目の「ボンボン」に金庫を任せて大丈夫か

 

「戦争法案」に反対する学生のアピールを転載――自分の声で語ること

最近、知人のS氏から下記の文面とともにアピール映像と音声が届きました。

「15日に大阪・梅田駅前で開かれた「戦争法制反対」するSEALDs関西の集会での女子学生のアピールを見つけました。

フェイスブックにアップされてまだ5日目ですが、再生はすでに10万回を超えて、ものすごい勢いで広まっているようです。 この間の多くの集会。デモで聴いた、どの政治家や学者・文化人の反対アピールより心を打ちます。一度ぜひ見てみてください。

*引用者注――リンク先が有効期限切れとなったようですので、リンク先を削除し「文字起こし」されている文章を転載しました

東京のSEALDsの学生たちのスピーチについても言えることですが、彼らは状況を的確に分析・把握して、しっかりものごとの本質を理解し、紋切型の言葉ではない自分の言葉で、聴衆に向かって物怖じすることなくアピールできるのですね。」
*   *   *

この映像を見て私が思い出したのは、かつてペレストロイカの時期にソ連で見たフォーキンの《語れ》という劇のことでした。これは党の在り方を批判した劇でしたが、終わり近くで上からの指導を批判して下からの意見がなければだめだと主人公に語らせ、相変わらず十年一日のごとくに決まりきった報告書を読みあげる女性からノートを取り上げて「(自分の声で)語れ」という台詞(せりふ)が最期に響いた時には、観客の熱い共感が湧き起こりました。

それゆえ、この劇を見終わった時にはソ連は変わるだろうという確信を持ったのですが、「自分の言葉」で語られた「戦争法案」に反対する彼女の短いスピーチからは、その劇と同じような迫力と説得力を感じました。

ソ連の「ペレストロイカ」の流れはチェルノブイリ原発事故の後で急速に加速し、ついには「一党独裁」という統治形態をも打ち倒したのですが、福島第一原子力発電所事故を経験していた若者たちは、安倍首相やその「お仲間」たちの言動から同じような問題を鋭く認識したのだと思われます。

衆議院での採決に際しては自民党と公明党の議員たちは「独裁者」に逆らえない「羊」のように黙々と賛成票を投じましたが、無名の学生の方が「本当の勇気」を示していたのです。

車がひっきりなしに通過する場所でのスピーチですので、ことに前半には聞き取りにくい箇所もありますが、すでに文字起こしがされていることが分かりましたので、以下にその文章を掲載します。

*   *   *

こんばんは。今日、私、本当に腹が立ってここに来ました。 国民の過半数が反対してるなかでこれを無理矢理通したという事実はまぎれもなく独裁です。

だけど私今この景色に本当に希望を感じています。大阪駅がこんな人で埋め尽くされてるのを見るの私初めてです。 この国が独裁を許すのか、民主主義を守りぬくのかは、今私たちの声にかかっています。

先日安倍首相はインターネット番組のなかでこういう例を挙げていました。 「ケンカが強くていつも自分を守ってくれている友達の麻生君がいきなり不良に殴り掛かられた時には一緒に反撃するのはあたりまえですよね」って。

ぞっとしました。 この例えをもちいるのであれば、この話の続きはこうなるでしょう。友達が殴りかかられたからと一緒に不良に反撃をすれば不良はもっと多くの仲間をつれて攻撃してくるでしょう。そして暴力の連鎖が生まれ不必要に周りを巻き込み関係のない人まで命を落とすことになります。

この例えをもちいるのであれば、正解はこうではないでしょうか。なぜ彼らが不良にならなければならなかったのか。そしてなぜ友達の麻生君に殴りかかるようなまねをしたのか。 その背景を知りたいと公表し暴力の連鎖を防ぐために不良がうまれる社会の構造を変えること、それがこの国が果たすべき役割です。

この法案を支持する人たち、あなたたちの言う通りテロの脅威が高まっているのは本当です。 テロリストたちは子どもが教育を受ける権利も、女性が気高く生きる自由も、そして命さえも奪い続けています。

しかし彼らは生まれつきテロリストだったわけではありません。なぜ彼らがテロリストになってしまったのか。その原因と責任は国際社会にもあります。 9・11で3000人の命が奪われたからといってアメリカはその後正義の名のもとに130万人もの人の命を奪いました。残酷なのはテロリストだけではありません。

わけの分からない例えで国民を騙し、本質をごまかそうとしても 私たちは騙されないし、自分の頭でちゃんと考えて行動します。 「日本も守ってもらってばっかりではいけないんだ」と「戦う勇気を持たなければならないんだ」と安倍さんは言っていました。

だけど私は海外で人を殺すことを肯定する勇気なんてありません。 かけがえのない自衛隊員の命を国防にすらならないことのために消費できるほど私は心臓が強くありません。 私は戦争で奪った命をもとに戻すことができない。 空爆で破壊された街を建て直す力もない。 日本の企業がつくった武器で子どもたちが傷ついてもその子たちの未来に私は責任を追えない。 大切な家族を奪われた悲しみを私はこれっぽっちも癒せない。

自分が責任のとれないことをあの首相のように「私が責任をもって」とか「絶対に」とか「必ずや」とか威勢のいい言葉でごまかすことなんて出来ません。

安倍首相、二度と戦争をしないと誓ったこの国の憲法はあなたの独裁を認めはしない。 国民主権も基本的人権の尊重も平和主義も守れないようであれば、あなたはもはやこの国の総理大臣ではありません。

民主主義がここにこうやって生きている限り私たちはあなたを権力の座からきひずり下ろす権利があります。力があります。 あなたはこの夏でやめることになるし私たちは来年また戦後71年目を無事に迎えることになるでしょう。

安倍首相、今日あなたは偉大なことを成し遂げたという誇らしい気持ちでいっぱいかもしれません。けれどそんなつかの間の喜びはこの夜国民の声によって吹き飛ばされることになります。 きのうテレビのニュースで東京の日比谷音楽堂が戦争法案に反対する人でいっぱいになったのを見ました。

足腰が弱くなったおじいさんやおばあさんが暑い中わざわざ外に出て震える声でこぶしを突き上げて戦争反対を叫んでいる姿を見ました。この70年間日本が戦争をせずにすんだのはこういう大人たちがいたからです。ずっとこうやって闘ってきてくれた人たちがいたからです。 そして戦争の悲惨さを知っているあの人たちがずっとそうあり続けてきたのはまぎれもなく私の、私たちのためでした。

ここで終わらせるわけにはいかないんです。私たちは戦後を続けていくんです。武力では平和を保つ事ができなかったという歴史の反省の上にたち憲法9条という新しくてもっとも賢明な安全保障のあり方を続けていくんです。 私はこの国が武力を持たずに平和を保つ新しい国家としてのモデルを国際社会に示し続けることを信じます。

いつわりの政治は長くは続きません。 そろそろここで終わりにしましょう。 新しい時代を始めましょう。

2015年7月15日、私は戦争法案の閣議決定に反対します。

ありがとうございました。

*2015年9月15日。表題と内容を一部変更)

【あかりちゃん】のリンク先を掲示

いよいよ審議は参議院に移りました。

YouTubeの【あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみたは、「文明史」的な理解を欠いた形でこの法案を解説した自民党・広報の「教えて!ヒゲの隊長」の説明を分かりやすく論破しています。

これまでも二回ほど【あかりちゃん】については紹介しましたが、先ほど確認したところ視聴回数が635、000回を超えていました。より多くの方に知って頂くためにこのブログでも独立させて、題名を示すことにしました。

自民党版の「教えて!ヒゲの隊長」と比較すると「安全保障関連法案」と名付けられたこの法案の危険性が明瞭になるでしょう。

『安全保障関連法案に反対する学者の会』が廃案を求めて150名で記者会見

幅広い専門分野の研究者でつくる「安全保障関連法案に反対する学者の会」が20日に東京都千代田区の学士会館で記者会見し、安倍政権により「違憲性がある法案が衆院で強行採決されたことは、立憲主義と民主主義の破壊であり、国民世論を無視した独裁政治であることを示した。学問と理性、知的な思考そのものを無視している」と指摘し、廃案を求める抗議声明を発表しました。

この会見については、各新聞が大きく取り上げた他、NHKも報道していますので、その一部のリンク先を記しておきます。

 

関連記事のリンク先

朝日新聞→ 安保法案に抗議声明 益川氏ら学者150人が会見

毎日新聞→<安保法案>採決強行に学者150人抗議

東京新聞→益川氏ら学者150人 安保法案「廃案」を:社会 (TOKYO …

産経新聞→益川名誉教授ら「首相判断で戦争可能」 学者150人、安保法案廃案求め声明

NHK→安保法案に反対 学者など150人が訴え http://nhk.jp/N4KK4GJE

*  *   *

 『安全保障関連法案に反対する学者の会』のアピールへの賛同者(学者・研究者)は、7月21日9時00分現在で11,604人に、市民の賛同者が24.053人に達しました。

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

一方、この問題の深刻さをいまだに理解しない安倍晋三首相は、20日のフジテレビ番組では衆院で「強行採決」した安全保障関連法案について「戦争法案と言われるが、戦争を未然に防ぐための法案だ」との弁解をしたとのことです。

このような発言や今後の動きも気になりますが、安倍首相の「憲法」理解や歴史認識の問題点を明らかにするためにも、これからしばらくは拙著『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館)の発行に向けて集中することにします。

 

「安全保障関連法案に反対する学者の会」関連記事

『安全保障関連法案に反対する学者の会』の賛同者(学者・研究者)が10,857人に7月17日

「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピールを「新着情報」に掲載7月3日