高橋誠一郎 公式ホームページ

未分類

〈「学者の会」アピール賛同者の皆様へ緊急のお願い 〉を掲載

sho_f-1

佐藤学(「安全保障関連法案に反対する学者の会」発起人・事務局代表)氏より、〈緊迫した国会情勢のもと、「学生と学者の共同行動」を大成功させましょう〉との文言と共に、今後の行動日程を記したメールが届きましたので以下に転載します。

 リンク→http://anti-security-related-bill.jp

このブログの記事でもたびたび指摘してきましたが、「この国のかたち」を決めた「憲法」をないがしろにする安倍政権の独裁的な手法は、「日本」の民主主義を根底から覆して、戦前の軍国主義的な国家体制を「復古」させることにつながるでしょう。一人でも多くのかたが「反対」の声をあげられることを願っています。

*   *   *

(1)9月6日(日)は午後3時から午後5時半、新宿伊勢丹前の歩行者天国で、「学生と学者の共同街宣行動」を行います。歩行者天国を埋め尽くしましょう。

この街宣行動では、学生と学者のスピーチの他、蓮舫民主党代表代行、志位和夫日本共産党委員長、吉田忠智社会民主党党首、二見伸明公明党元副委員長が、スピーチを行います。(他の野党は返答まち)

重要な時期の重要な街宣になるので、ぜひ、ご参加ください。当日のフライヤーを添付します。なお、雨天の場合は、歩行者天国は行われないので、新宿駅東口で街宣行動を行います。

(2)9月11日(金)は学生と学者の共同行動第3弾として、午後7時半から国会前の抗議行動を行います。こちらも、こぞって参加してください。

(3)以下のように各地方でSEALDsの行動が展開されます。地方ごとにSEALDsを支援し共に闘いましょう。

*   *   *

【SEALDs】

9/4(金) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動

9/6(日) 15:00~17:30 安全保障関連法案に反対する学者と学生による街宣@新宿 9/10(木) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動

9/11(金) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動

9/12(土) S4LON vol.3[この国で生きる―経済 憲法 安保法制―]第1部 15:00~ 第2部 19:00~

9/14(月)~9/18(金) 戦争法案強行採決に反対する国会前緊急抗議行動

【TOHOKU】

9/4から 毎週金曜街宣 9/5(土) SALON(詳細未定)

(9/6(日) 弁護士大集会) 9/10 緊急アピール(詳細未定)

【KANSAI】

9/4 (金) 18:30~20:00 戦争法案に反対する金曜街宣アピール@大阪梅田ヨドバシカメラ前

9/11 (金) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動

9/13 (日) 16:00~18:30 戦争法案に反対する関西大行動@大阪 靭公園

【RYUKYU】 9/12(土) 10:00~12:00 サロンvol.2トポセシア(沖縄県宜野湾市我如古2-12-6)

9/19(土) 「沖縄のことは沖縄で決める緊急アピール」(場所未定)

アベノミクスと武藤貴也議員の詐欺疑惑――無責任体質の復活(7)

先ほど武藤議員が離党届を提出したとのニュースが飛び込んできました。

武藤貴也衆議院議員が知人に未公開株の購入を持ち掛け金銭トラブルになっているとの週刊誌報道に関して、自民党の谷垣禎一幹事長が「事実関係を把握した上で報告したい」と説明したとの共同通信の記事が「東京新聞」に載ったのは今朝の朝刊でした。

この件について、『週刊文春』の記事を紹介した「朝日新聞」のデジタル版は「武藤氏は昨年、ソフトウェア会社の未公開株について『国会議員枠で買える』と持ち掛け、23人から計約4100万円を集めた。しかし、実際には株は購入されず、6人分の約700万円分が返済されていないという」と報じています。

〈アベノミクス(経済至上主義)の問題点(1)――株価と年金〉と題する記事を書いたのは、去年の11月のことでしたが、今回の事件は目先の利益の追求に追われて、「国民の生命」を軽視する安倍政権の「金権政治」を象徴していると思われます。

さらに、安倍首相に近い自民党議員の勉強会「文化芸術懇話会」にも出席していた武藤議員の「核武装論」や復古的な「歴史観」と「道徳観」は、「違憲」の疑いが強い危険な「安全保障関連法案」をごり押ししている安倍政権の思想とも深く関わっていると思われます。

武藤議員の問題は国会でもきちんと議論されるべきでしょう。

なお、現在は書く暇がないのですが、いずれ「安倍談話の問題点」についても、きちんと論じたいと考えています。

 

武藤貴也議員関連の記事一覧

麻生財務相の箝口令と「秘められた核武装論者」の人数

武藤貴也議員の核武装論と安倍首相の核認識――「広島原爆の日」の前夜に

武藤貴也議員の発言と『永遠の0(ゼロ)』の歴史認識・「道徳」観

 

アベノミクス関連の記事一覧

アベノミクス(経済至上主義)の問題点(1)――株価と年金

「アベノミクス」と原発事故の「隠蔽」

アベノミクス(経済至上主義)の問題点(2)――原発の推進と兵器の輸出入

「アベノミクス」とルージンの経済理論(*ルージンは『罪と罰』に登場する利己的な中年の弁護士)

アニメ《火垂るの墓》が8月14日に日本テレビで放映

高畑勲監督のアニメ映画《かぐや姫の物語》などについては、このHPでも何回か取り上げてきましたが、野坂昭如氏の原作を元にしたアニメ《火垂るの墓》(1988年)が本日、日本テレビ「金曜ロードSHOW」で夜9時から放映されます。

戦後70年に当たって、もう一度あの戦争の無謀さと悲惨さを考えるためも必見のアニメでしょう。

なお、翌週の21日には《おもひでぽろぽろ》(1991年)が、28日には身近な地域の環境問題を狸の視点から描いた《平成狸合戦ぽんぽこ》(1994年)が放映されるとのことです。

 

高畑勲監督関連の記事一覧

映画人も「安全保障関連法案」反対のアピール

《かぐや姫の物語》が3月13日にテレビ初放送

《かぐや姫の物語》考Ⅱ――「殿上人」たちの「罪と罰」

《かぐや姫の物語》考Ⅰ――「かぐや姫」と 『竜馬がゆく』

「リレートーク 表現の自由が危ない!」を「新着情報」に掲載

 

「あかりちゃん」Part2と中東研究者の「安保法案」反対声明

「文明史」的な理解を欠いた形でこの法案を解説した自民党・広報の「教えて!ヒゲの隊長」の説明を分かりやすく論破した、YouTubeの【あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみたの視聴回数が、オリジナル版の2倍近い986、078回となりもうすぐ100万回に達しようとしています。

7月28日には自民党のムービー教えて!ヒゲの隊長 Part2」が公開されましたが、その10日後の8月8日に「あかりちゃん」のPart2も公開され、このムービーもすでにオリジナル版の視聴回数を超えています。

  リンク→【あかりちゃん#2】HIGE MAX あかりのデス・ロード

ヒゲの隊長をロボットにしているのは、少しやりすぎかとも思いましたが、自民党のオリジナル版自体が「一家に一台必要」と言われた佐藤氏が「それじゃあ、ヒゲロボだな」いう台詞でヒゲの隊長の説明の必要を強調していたのです。

ことに自衛隊が「駆けつけ警護」することの危険性をNGOで活動している方の言葉で説明している箇所は説得力を持っていますが、『日刊ゲンダイ』(8月11日デジタル版)も、中東研究者105人が安保法案に反対との声明を発表したことを報道しています。

「現代イスラム研究センター」理事長の宮田律氏は「安保法案を通してしまうと、中東の過激派組織まで刺激する可能性がある。中東社会は日本の平和主義を信頼しています。それをかなぐり捨て、米国に追随すれば、いずれ日本も泥沼の対テロ戦争にハマっていくことになるのではないか」と語っていたのです。

宮田律氏の言葉を紹介したこの記事は、次のように結んでいます。

呼びかけ人には、駐イラク大使や駐リビア大使などを経験した元外交官も名を連ねた。安倍政権の『中東政策』に警鐘が乱打されている。」

*   *   *

自衛隊のサマワ派遣に際しては「隊員が銃を撃つ判断を迫られるなどの事態が起きていた」ことを明らかにする記事が「朝日新聞」デジタル版に載りましたので。リンク先を記しておきます。 (2015年8月20日)

銃声、群衆が陸自包囲 撃てば戦闘…サマワ駐留隊員恐怖:朝日 …

www.asahi.com/articles/ASH8C4VLCH8CUTFK00F.html

「新国立」の責任者は誰か(2)――「無責任体質」の復活(5)

sho_f-1

前回は少しフライング気味の記事を書いてしまったかと少し案じていましたが、やはり「新国立」の建設計画の裏には莫大な利権があったようです。

リンク→「新国立」の責任者は誰か――「無責任体質」の復活

『毎日新聞』8月7日付の記事や『週刊新潮』8月13日・20日号の特集記事に続いて『リテラ』が、森元首相の不正とかつての派閥の親分に尽くす安倍首相の問題に鋭く深く切り込んでいました。その記事へのリンク先lite-ra.comとリード文を以下に記しておきます(8月11日)。

 

新国立競技場の不正が次々判明! 森元首相に施工業者の …

13 時間前 – 親分子分でめちゃくちゃに(左・安倍晋三公式サイトより/右・森喜朗公式サイトより) ザハ案の白紙見直しが決まった新国立競技場だが、一方で、ここまでの混乱を生んだ裏に、政府と政治家の詐欺的とも言える不正工作があったことが、 …

 

関連する記事一覧

デマと中傷を広めたのは誰か――「無責任体質」の復活(4)

原発事故の「責任者」は誰か――「無責任体質」の復活(3)

TPP交渉と安倍内閣――「無責任体質」の復活(2)

「戦前の無責任体系」の復活と小林秀雄氏の『罪と罰』の解釈

 

 

川内原発の再稼働と新聞『小日本』の巻頭文「悪(にく)き者」

Earthquake and Tsunami damage-Dai Ichi Power Plant, Japan(←画像をクリックで拡大できます)。

(2011年3月16日撮影:左から4号機、3号機、2号機、1号機、写真は「ウィキペディア」より)

 

川内原発の再稼働と新聞『小日本』の巻頭文「悪(にく)き者」

原子力規制委員会は「周辺に活火山群がある鹿児島県の九州電力川内原発について、新規制基準にかなうと判断」していましたが、この判断に従って九州電力は川内原発1号機の原子炉を明日、再稼働させると発表しました。

また、菅官房長官は10日の記者会見で「第一義的には責任は事業者にあるが、万が一事故が起きた場合、国が先頭に立って原子力災害への迅速な対応や被災者への支援を行っていく」と語ったとのことです。

しかし、福島第一原子力発電所の大事故がいまだに収束してはおらず、原子力災害の被災者への十分な対応もできていない現状を考慮するならば、菅氏の説明はほとんど説得力を持っていないように見えます。

川内原発の再稼働の危険性については、〈御嶽山の噴火と川内原発の再稼働――映画《夢》と「自然支配」の思想で詳しく考察しましたが、記者会見での安倍首相と菅官房長官の言葉から思い出したのは、「功労なくして顕地に立ち、器識なくして要路を占め、天を畏れず、人に省みず、政事家気取をなす者の面、悪(にく)むべし。」という新聞『小日本』に記された子規の言葉でした。

圧倒的な権力を有した当時の薩長藩閥政府の「新聞紙条例」や「讒謗律」にもかかわらず、敢然と権力の腐敗を厳しく批判した新聞記者としての子規の文章には、圧倒されるような気迫があります。俳句を改革した子規の業績もこのような新聞人として現実の直視から生まれているのではないかと思います。

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』の執筆を少し先送りしてでも、「戦争法案」の成立を阻止するためにブログの記事を私が書き続けていることも、子規の気迫に促されているところもあるようです。

今回は変体仮名を標準的な平仮名に直して、明治27年3月23日の新聞『小日本』の巻頭を飾っている「悪(にく)き者」という一連の文章の前半を紹介することにします。

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館)

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館)

*   *   *

 悪(にく)き者

○権謀術数は兵事に於てこそ尚(たつと)ぶ可(べ)けれ、政事就中(なかんづく)内治(ないぢ)の上に用ふ可(べ)きものに非ず。然るに今の政事社会には内治の上に之を振回(ふりまわ)し、したり顔する政事家少なからず。悪(にく)むべし。

○制を矯め命(めい)を偽はりて一世に我物顔(わがものがほ)に振舞ふ者は、悪(にく)む可(べ)き者の骨頂なり。

○正常の手段もて正常の業(げふ)を営み、富(とみ)を致してこそ名誉はあれ、人間の恥といふものを忘れ、人を欺き他を困(くるし)め、不義の財を貪り積みて扨(さて)紳商と高ぶるしれ者多し、悪(にく)むべし。

○勢家の意を迎へ、権門の心に投し、例を欧米に求めて虐政を幇(たす)け、言を英国に托して暴制を設けしめ、 才子を以て自ら居る者、学校出身の若手にまゝあり、悪(にく)む可し。

○功労なくして顕地に立ち、器識なくして要路を占め、天を畏れず、人に省みず、政事家気取をなす者の面、悪(にく)むべし。

(2015年12月22日、2017年6月5日。写真を追加)

安倍晋三首相の公約とトルーマン大統領の孫・ダニエル氏の活動――「長崎原爆の日」に(2) 

220px-Nagasakibomb

(長崎市に投下されたプルトニウム型原爆「ファットマン」によるキノコ雲。画像は「ウィキペディア」)。

 

長崎も9日、米軍が原爆を投下してから70年を迎えました。ここでは「東京新聞」の記事によりながら、長崎市の平和公園で行われた平和祈念式典で語られた市長や被爆者の言葉をまず確認します。

その後で、原爆投下を命令したトルーマン大統領の孫ダニエル氏の場合と比較することにより岸信介首相の孫である安倍首相の公約の意味を考察することにします(太字は引用者)。

*   *   *

田上富久市長は平和宣言で安全保障関連法案について「70年前に心に刻んだ誓いが、日本国憲法の平和の理念が、今揺らいでいるのではないかという不安と懸念が広がっている」と指摘しました。

注目したいのは、安倍晋三首相が今年から来年にかけて長崎や広島で主要7カ国(G7)外相会議など国際会議を開くことに触れて、「被爆地から我々の思いを国際社会に力強く発信」していくと述べつつも、被爆地の市長が求めた「安全保障関連法案」の「慎重で真摯(しんし)な審議」にはまったく触れなかったことです。

被爆者代表の谷口稜曄さん(86)は平和への誓いで「今政府が進めようとしている戦争につながる安保法案は、被爆者をはじめ平和を願う多くの人が積み上げてきた核兵器廃絶の運動、思いを根底から覆すもので、許すことはできない」と安倍首相と与党を厳しく批判していました。

実際、核兵器の使用も公言しているばかりでなく、「イラク戦争」に際しては多量の「劣化ウラン弾」を使用していたアメリカ軍の「後方支援」に当たることを可能とするこの法案を強引に成立させることは、「国際社会の核軍縮の取り組みを主導していく」という首相自身の言葉を裏切ることになるでしょう。

*   *   *

この意味で注目したいのは、「核兵器は残虐で人道に反する兵器です」と語った被爆者代表の谷口氏が、「廃絶すべきだということが、世界の圧倒的な声になっています」と続けていたことです。

実際、8月6日放送された「報道ステーション」によれば、トルーマン大統領の孫で幼い頃から「原爆は正義」と教わってきたダニエル氏も、原爆で白血病になり12歳でなくなった佐々木禎子さんの物語『禎子と千羽鶴』を読んだことから、トルーマン大統領の孫としてできることはこの悲惨な状況を多くのアメリカ人に伝えることだと気づいたのです(トルーマンの孫としていま-」、テレビ朝日「報道ステーション」)。

アメリカだけではなく、過去最多の75カ国から大使らが出席したこの「平和式典」で、岸信介首相の孫である安倍首相が「『核兵器のない世界』の実現に向けて、国際社会の核軍縮の取り組みを主導していく」と約束したことは非常に意義深いことです。

世界への「公約」を誠実に実行するためには、「核武装」を公言している武藤貴也議員を処分するとともに、「安全保障関連法案」の問題点の「慎重で真摯な審議」をすることが不可欠と思われます。

 

リンク→原子雲を見た英国軍人の「良心の苦悩」と岸信介首相の核兵器観――「長崎原爆の日」に(1) 

リンク→「安全保障関連法案」の危険性(2)――岸・安倍政権の「核政策」

 

 

麻生財務相の箝口令と「秘められた核武装論者」の人数

武藤貴也衆院議員(36才)がツイッターで記した戦前の日本を彷彿とさせるような記述は非常に問題ですが、より大きな問題を孕んでいると思われるのは、「朝日新聞」のデジタル版によれば、麻生太郎財務相が8月6日の自民党麻生派の会合で、ツイッターでの記述などを念頭に「自分の気持ちは法案が通ってから言ってくれ。それで十分間に合う」と語ったことです(太字は引用者)。

麻生氏のこの発言は、さまざまな問題が指摘され、実質的には「戦争法案」の疑いがますます濃くなってきている「安全保障関連法案」の実態を隠そうとしているばかりでなく、「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs=シールズ)」の言動を「極端な利己的考えに基づく。利己的個人主義がここまでまん延したのは戦後教育のせいだろう」と決めつけるような歴史認識と道徳観を、この法案が通った暁には党として積極的に国民に押しつけることを明言しているとも思われるからです。

*   *   *

それとともにとても奇異に感じられるのは、「日本は自力で国を守れるように自主核武装を急ぐべきなのです」と主張し、その理由を「核武装のコストについては様々な試算がありますが、私は安上がりな兵器だと考えています」と記していた麻生派所属の武藤議員に対する何らの批判も行われていないことです。

そのことからは安倍首相や麻生氏が勢力を持つ現在の自民党では、「日本の核武装反対論は、論理ではなく感情的なもの」と考えて、「日本の核武装」を当然視する議員が少なからずいるのではないかと感じられます。

各新聞社は「国民の生命」だけでなく、近隣諸国の国民の生命をも脅かすような「戦争法案」の審議が行われている現在、早急にアンケートを行って武藤貴也氏のように「日本の核武装」を当然視する自民党員が何人いるかを明らかにすべきでしょう。

さらに与党としてこの法案を積極的に進めている公明党にもこの問題を明らかにする責任があると思われます。

*   *   *

核兵器だけでなく劣化ウラン弾の危険性や人道的な問題点については明らかなので記しませんが、「報復の権利」の危険性が全く考慮されていないことをここで指摘するにとどめておきます。

つまり、武藤議員が「安上がりな兵器だ」と考えている核兵器による攻撃は、かつての広島や長崎へ投下された原爆と同じように、一瞬にして「敵の軍隊」だけでなく、その周囲の市民を抹殺することができ、敵の戦意をくじいて一時的には戦争を勝利にみちびくことはできるでしょう。

しかし、人間の心理をも考慮に入れるならば、「兵器(安倍政権の用語によれば「弾薬」)」の威力による勝利は一時的なもので、使用されたことで敗北した民族や国家には暗い憎しみが生まれ、生き残った者の子や孫による「報復の戦争」が起きる危険性はきわめて高いのです。

卑近な例としては、「報復の権利」の行使としてブッシュ政権によって行われた「イラク戦争」こそが、アメリカに対する「報復」を主張してテロ行為を繰り返すISという国家の生みの親だった可能性が高いのです。この危険性を「戦争と文学 ――自己と他者の認識に向けて」と題した論考で示唆していましたが、文学作品にも言及したことで難しい展開となっていました。

「戦争法案」が可決される危険性がある現在の事態に対処するために、稿を改めて現在の状況をふまえつつもう少し分かりやすく、「正義の戦争」と「報復の権利」の危険性を説明したいと思います。

安倍首相の「核兵器のない世界」の強調と安倍チルドレンの核武装論

800px-Atomic_cloud_over_Hiroshima220px-Nagasakibomb

(広島と長崎に投下された原子爆弾のキノコ雲、1945年8月、図版は「ウィキペディア」より)

 

安倍首相が広島市で行われた平和記念式典のあいさつで、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則に言及しなかったことが波紋を呼んでいます。

以下、新聞などの記事によって簡単に紹介した後で、安倍首相が本気で「核兵器のない世界」を願うならば、「わが国は核武装するしかない」という論文を月刊『日本』(2014年4月22日号)に投稿していた武藤貴也議員を参院特別委員会に呼んでその見解を質し、今も同じ考えならば議員辞職を強く求めるべき理由を記したいと思います。

*   *   *

平和記念式典の後で行われた被爆者団体代表との面会では、安倍首相は「唯一の戦争被爆国として非核三原則を堅持しつつ、世界恒久平和の実現に向けた努力をリードすることを誓う」と述べ、これに関し菅官房長官も同日午前の記者会見で「非核三原則は当然のことで、考えにまったく揺るぎはない」と説明したとのことです。

しかし、これらの「誓い」や「説明」の誠実さに疑問が残るのは、すでに多くの新聞や報道機関が指摘しているように、その前日に行われた参院特別委員会で中谷元・防衛相が、戦争中の他国軍への後方支援をめぐり、核兵器を搭載した戦闘機や原子力潜水艦などへの補給は「法律上除外する規定はない」として、法律上は可能との認識を示す一方で、「非核三原則があり提供はありえない」とも述べていたからです。

枝野幸男・民主党幹事長が批判をしているように、武器輸出三原則などの大幅な緩和をしたばかりでなく、「弾薬は武器ではない、その武器ではないもののなかに、ミサイルも入る(と言う)。それに核弾頭が載っていてもそれが(輸送可能な弾薬の範囲に)入る」と説明した安倍内閣の閣僚が、「非核三原則があります、(だから輸送しない)と言っても、ほとんど説得力をもたない」でしょう。

さらに、被爆者団体代表との面会で安全保障関連法案が、「憲法違反であることは明白。被爆者の願いに背く法案だ」として撤回を強く求められた安倍首相は、「平和国家としての歩みは決して変わることはない。戦争を未然に防ぐもので、必要不可欠だ」と答えたようですが、すでに武器輸出三原則などの大幅な緩和をしている安倍首相が、「平和国家としての歩みは決して変わることはない」と主張することは事実に反しているでしょう。

*   *   *

今回の安倍氏の「あいさつ」で最も重要と思われるのは、秋の国連総会で新たな核兵器廃絶決議案を提出する方針の安倍首相が、「核兵器のない世界の実現に向けて、一層の努力を積み重ねていく決意」を表明し、来年のG7(主要七カ国)外相会合が広島で開かれることを踏まえて「被爆地からわれわれの思いを国際社会に力強く発信する」とも述べていたことです。

このこと自体はすばらしいと思いますが、国際社会に向けたパフォーマンスをする前に安倍首相にはまずすべきことがあると思われます。

それは安倍氏が本気で「核兵器のない世界」を願うならば、「わが国は核武装するしかない」という論文を月刊『日本』(2014年4月22日号)に投稿していた武藤議員を参院特別委員会に呼んでその見解を質し、今も同じ考えならば議員辞職を強く求めるべきことです。

参院特別委員会でも「安全保障関連法案」には多くの深刻な問題があることが次々と明らかになっているにも関わらず、「強制採決」に向けて粛々と審議が行われているように見えます。

しかし、国際社会にむけて未来志向の「美しい言葉」をいくら語っても、武藤議員の発言を厳しく問いただすことをしなければ、「日本を、取り戻す。」を選挙公約にした安倍政権の本当の狙いは、戦前の「日本人的価値観」と軍事大国の復活にあるのではないかという疑いを晴らすことはできないでしょう。

 

関連の記事一覧

武藤貴也議員の核武装論と安倍首相の核認識――「広島原爆の日」の前夜に

武藤貴也議員の発言と『永遠の0(ゼロ)』の歴史認識・「道徳」観

「広島原爆の日」と映画《モスラ》の「反核」の理念 

TPP交渉と安倍内閣――「無責任体質」の復活(2)

前回のブログ記事で、「安倍首相は吉田松陰とではなく、国民の意思に逆らってアメリカと日米修好通商条約に調印した大老・井伊直弼と同じような感覚の独裁者に近いと言わねばならない」と記しました。

リンク→安倍首相の吉田松陰観と井伊直弼の手法

安倍内閣がその具体的な内容を国民には伏せたままで行っているTPPの交渉が大詰めに来ているようです。

詳しく分析する時間的な余裕がありませんので、ここでは過去に書いたTPP関連の記事のリンク先を掲示しておきます。

*   *

リンク→TPPと幕末・明治初期の不平等条約

リンク→菅原文太氏の遺志を未来へ